英医薬品庁(MHRA)は26日公表の Drug Safety Update とプレスリリースで、英国内で広く使われている保湿剤について、乳化剤として配合されているラウリル硫酸ナトリウムに皮膚刺激性(skin irritation)があるとして、アトピーなど子どもの湿疹に使用する場合は皮膚反応がないかどうか確認するよう注意を呼びかけています。
Aqueous cream: may cause skin irritation, particularly in children with eczema
(MHRA 2013.03.26)
http://www.mhra.gov.uk/Safetyinformation/Safetywarningsalertsandrecalls/
Safetywarningsandmessagesformedicines/CON254827
Aqueous cream: may cause skin irritation, particularly in children with eczema
(MHRA 2013.03.26)
http://www.mhra.gov.uk/home/groups/pl-p/documents/websiteresources/con254828.pdf
Aqueous cream: may cause skin irritation, particularly in children with eczema, possibly due to sodium lauryl sulfate content
(Drug Safety Update Volume 6, Issue 8 March 2013)
http://www.mhra.gov.uk/Safetyinformation/DrugSafetyUpdate/CON254804
この保湿剤は英国の局方にも収載されている“Aqueous cream”というもので、医師からも推奨されいる、GSL(一般販売医薬品)としてどこの商店でも買える製品です。
Aqueous cream(wikipedia)
http://en.wikipedia.org/wiki/Aqueous_cream
ところが、2010年にBritish Journal of Dermatology 誌に発表された研究で、ボランティアに4週間にわたって使用したところ、皮膚の角質層が10%減ってしまうという報告があり、配合されているラウリル硫酸ナトリウムが影響を与えたのではないかという報告がされ、以降多くの報告が行われています。
Effect of Aqueous Cream BP on human stratum corneum in vivo.
(Br J Dermatol. 2010 Nov;163(5):954-8.)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20649794
Aqueous cream ‘aggravates eczema’
(BBC NEWS 2010.10.18)
http://www.bbc.co.uk/news/health-11564662
Influence of Aqueous Cream BP on corneocyte size, maturity, skin protease activity, protein content and transepidermal water loss.
(Br J Dermatol. 2011 Jun;164(6):1304-10.)
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1365-2133.2011.10338.x/full
(上記論文の論評。ラウリル硫酸ナトリウム原因説を指摘)
Aqueous cream damages the skin barrier
(Br J Dermatol. 2011 Jun;164(6):1179-80.)
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1365-2133.2011.10390.x/full
The effect of aqueous cream BP on the skin barrier in volunteers with a previous history of atopic dermatitis.
(Br J Dermatol. 2011 Aug;165(2):329-34.)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21564067
研究等をまとめたMHRAのレビューはこちら。(日本でも安全性情報を出すときは、こういったものを必ず出して欲しいな)
Aqueous cream: contains sodium lauryl sulfate which may cause skin reactions, particularly in children with eczema
(MHRA UK PUBLIC ASSESSMENT REPORT 2013.3)
http://www.mhra.gov.uk/home/groups/s-par/documents/websiteresources/con251957.pdf
今回のレビューを受けMHRAでは、医療専門職に対して次のような注意を呼びかけています。
- 子どもの湿疹に使用した場合、20分以内に皮膚刺激反応が起こる可能性がある
- ただこれらの反応は通常は重篤なものではない
- 使用後に皮膚刺激反応が起きた場合は、使用をやめ、ラウリル硫酸ナトリウムを含有しない代替品で対応すべきである
となると、気になるのは日本でラウリル硫酸ナトリウムの配合状況ですが、ググったところ、シャンプーなどの日用品に、乳化剤、発泡剤、成城剤として含まれているものも結構あるとのことで、有害成分としてシャンプーを購入するときには、ラウリル硫酸ナトリウムが含まれないものを購入することを呼びかけるサイトも少なくありません。
医薬品はどうかというと、PMDAで調べたところ、「オイラックスクリーム」「クロロマイセチン軟膏」「ジフェンヒドラミンクリーム1%「タイヨー」」と一部の一般用医薬品で添加物としての配合が確認できました。
これらのくすりを湿疹などで用いて赤くなったりした場合には、処方の変更を検討をする必要があるかもしれません。
2013年03月28日 11:10 投稿
関連記事です。(日本語訳概要)
Aqueous cream(保湿用クリーム)(英国薬局方):湿疹の小児での皮膚刺激のリスク―含有するラウリル硫酸ナトリウムが原因である可能性
(医薬品安全性情報Vol.11 No.09(2013/04/25))
http://www.nihs.go.jp/dig/sireport/weekly11/09130425.pdf#page=16