豪TGAは2日公表のMedicines Safety Update で、モンテルカスト(シングレア、キプレス)使用中の患者で精神神経系の有害事象の可能性があるとして、注意を呼びかけています。
Montelukast – neuropsychiatric risks
(Medicines Safety Update, Volume 4, Number 2, April 2013)
http://www.tga.gov.au/hp/msu-2013-02.htm#montelukast
モンテルカストの精神神経系の有害事象については、これまでも各国で報告がみられるものの、関連性についてのはっきりとした結論は確かまだ得られていなかったと思いますが、今回豪州当局のTGAでは、2000年1月1日から2013年1月1日までに寄せられた、子ども(ティーンを含む)についての報告事例をまとめています。
この間に寄せられた有害事象の報告は58例。内訳は、興奮8例、抑うつ5例、自殺の考え5例の他、不眠、気分の変化、不眠などで、多くの場合で複数の症状を訴えたそうです。
TGAではこれら症状が発現した場合、子どもの場合には精神医学的な診断の確認が難しく、見落とされている可能性もあるとして、注意を呼び掛けています。
なお日本では、2010年の改訂で、[重要な基本的注意]の項に
「本剤との因果関係は明らかではないが、うつ病、自殺念慮、自殺及び攻撃的行動を含む精神症状が報告されているので、患者の状態を十分に観察すること。」
が追記されていますが、こういった精神神経系の有害事象について、どのようにどの程度患者さんに伝えるかはやはり難しい問題です。(日本でもどの程度の報告があるのか、一度きちんとした調査をした方がいいと思う)
関連論文:
Association between leukotriene-modifying agents and suicide: what is the evidence?
(Drug Saf. 2011 Jul 1;34(7):533-44.)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21663330
Psychiatric adverse drug reactions reported during a 10-year period in the Swedish pediatric population.
(Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2012 Jan;21(1):79-86.)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22076661
(スウェーデンの子どもに関する精神神経系副作用報告の解析。ワクチンを除外して被偽薬として多かったのがモンテルカスト、中枢の交感神経を興奮させる薬、吸入ステロイドだった)
Montelukast and psychiatric disorders in children.
(Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2009 Sep;18(9):858-64.)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19551697
(スウェーデンのモンテルカストを使用中の子どもの有害事象の解析。10年間で48例の精神神経系の障害が報告された)
Neuropsychiatric reactions to montelukast.
(J Investig Allergol Clin Immunol. 2012;22(6):452-3.)
http://www.jiaci.org/issues/vol22issue6/8-19.pdf#page=16
(子ども4例の症例報告)
関連情報:TOPICS
2011.03.24 ロイコトリエン受容体拮抗薬に精神神経系症状の注意が追記
2009.07.09 モンテルカストと精神神経系有害事象(カナダ)
2009.06.13 ロイコトリエン受容体拮抗薬と精神神経系症状(米FDA)
2013年04月02日 10:47 投稿