OTC薬の大量・頻回購入の対象はブロンだけではない

 TOPICS 2012.07.30 で、OTC薬の乱用や依存の実態について調べた厚生労働科学研究を紹介しましたが、10日、国立精神・神経医療研究センター・薬物依存研究部のサイト(http://www.ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/)に、この続報(2012年度の研究)が掲載されています。

薬剤師を情報源とする医薬品乱用の実態把握に関する研究
(平成24年度厚生労働科学研究)
http://www.ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/drug-top/data/researchSHIMANE2012_1.pdf

 研究者らは、前年度の研究(TOPICS 2012.07.30)から、OTC 薬の大量・頻回購入者を医薬品乱用・依存のハイリスク層と位置づけ、その実態をドラッグストアに勤務する薬剤師に調査して調べています。

 調査はある大手チェーンドラッグストアに勤務する薬剤師1641 名に対し、社内イントラネット上で行われ、1108名の薬剤師より回答が得られたそうです。

 詳しくは、研究報告書を読んで頂きたいのですが、目に留まったところを書き出してみます。

  • 大量・頻回購入者が求めたOTCで 薬種別で最も多かったのが咳止め薬78.9%で、風邪薬44.5%、解熱鎮痛薬25.3%、睡眠改善薬14.5%と続いた
  • OTC 薬の大量・頻回購入者への応対経験を有する薬剤師に具体的なブランド名を自由記述で求めたところ、大量・頻回購入者が買い求めたものとして最も多かったのが、新小児用ジキニンシロップ71 件で、ブロン(錠、液)70 件、ネオシーダー40 件、ロキソニンS37 件、トニン(トニン咳どめ液D、新トニン咳止め液)34 件、ガスター10 23 件、アネトン(せき止めZ 液、せき止めZ 錠)15 件と続いた。(報告書17ページ。新小児用ジキニンシロップやロキソニン、パブロンコールドなどの山積み陳列は今でも結構行われているからなあ)
  • OTC 薬の大量・頻回購入者へは、「声かけ」88.0%、「使用目的の確認」81.4%、「店内での情報共有」85.4%、「上司への相談」76.3%、などの対応が行われた。
  • 薬物依存が疑われる患者との接客に対する自信と知識が高い薬剤師ほど、また、薬物乱用・依存に関する社外研修を受けている薬剤師ほど、「使用目的の確認」を行う傾向にあった

 研究者らは、精神科臨床では報告されていないOTC 薬が大量・頻回購入の対象となっている実態の一端が明らかになったとした他、薬物乱用・依存に関する卒後研修や、薬学部おける薬物乱用・依存教育を今後充実させることが必要だとしています。、

 なお、この研究報告書では、薬学部教育における薬物、医薬品乱用・依存に関する調査の結果や、京都ダルクの協力のもとで今年1月に作成・配布された、OTC 薬の乱用・依存者向けの啓発資材の取り組みも紹介されています。(啓発資料は全国規模での導入の検討が必要だと思う)

関連情報:TOPICS
 2012.07.30 OTC薬の乱用・依存の実態(厚生労働科学研究)
 2012.09.14 日本人はOTCの副作用や依存性はあまり気にかけない?
 2013.02.10 OTC鎮痛薬・風邪薬の包装(販売)制限は必要か


2013年04月16日 00:06 投稿

コメントが4つあります

  1. アポネット 小嶋

    慶応大の岸本桂子助教が今年3月に行われた日本薬学会年会で、関連の調査報告の結果を発表しています。

    OTC薬の乱用、依存について考える
    -店舗とネットにおける医薬品購買行動-
    (日本薬学会第133年会・要旨)
    http://nenkai.pharm.or.jp/133abst/30amE-168.pdf

    岸本氏は、「店舗における対面での薬剤師等による聞き取りは、大量、頻回購入に対する抑制要因となりうると考えられる」とした他、乱用に用いられるほとんどのOTC薬は第1類医薬品ではないとして、「薬に関する教育の充実と共に、リスク区分の引き上げなど制度面からの支援がOTC薬乱用の抑制に有効である」としています。(私も同意)

    おそらく、この調査関連だと思うのですが、読売新聞がこの調査結果と思われる記事を配信しています。(読売はうるさいので、ツイッターでしかタイトルは書けないけど、WEB上では結構話題になっている)

    読売新聞4月15日
     http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130415-OYT1T00452.htm

    論文を楽しみにしています。

  2. アポネット 小嶋

    薬局新聞で取り上げられています。(1週間くらいでリンク切れになります)

    薬局新聞 今週のニュース
     http://www.yakkyoku-shimbun.co.jp/news.html

    m3.com (要会員登録)
     http://www.m3.com/news/GENERAL/2013/4/18/170417/
     http://www.m3.com/news/GENERAL/2013/4/18/170418/

  3. アポネット 小嶋

    関連記事です

    「医薬品のネット販売」 岡嶋裕史氏、岸本桂子氏
    (産経新聞 2013.04.19)
    http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130419/plc13041907330007-n1.htm
    http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1304/19/news046.html

  4. アポネット 小嶋

    元記事で紹介した、京都ダルクの協力のもと作成・配布された、OTC 薬の乱用・依存者向けの啓発資材の取り組み(→該当ページにリンク)について、2014年5月発行の 木津川ダルクニュースで詳しい紹介があります。(こちらの方がわかりやすい)

    OTC薬の乱用・依存を防止する啓発キャンペーンプロジェクトの取り組み
    ~薬物依存者・乱用者に薬剤師の想いを届けるために~
    (アジア太平洋地域アディクション研究所 木津川ダルクニュース 2014.05)
    http://www.apari-west.org/images/hope_2.pdf#page=8

    最後の部分

    >OTC 薬は薬局やドラッグストアのみならず、規制緩和により
    >コンビニエンスストア、家電量販店など、さまざまな場所で
    >販売されている。薬剤師は、薬物依存・乱用のゲートキーパー
    >となるべく OTC 薬販売の責任者として、OTC 薬による依存の
    >リスクから地域住民を守れるよう、努めなければならないと
    >考える。

    は同感です。

    処方薬(安定剤)依存などもこれと同じようなものが作れないかなあ?

    こういった取り組みは薬剤師会などを巻き込んで全国規模で行うべきですね。