インクレチン関連薬、種類により有害事象リスクが異なる(ISMP)

 本サイトで時々紹介する、医薬品の安全使用を目指す米国の非営利団体の薬物安全使用協会 (ISMP:Institute for Safe Medication Practices(http://www.ismp.org/))がまとめる“Quarter Watch”の最新号が18日に公表されています。(詳細は原文で必ずご確認下さい)

 “QuarterWatch”(http://www.ismp.org/QuarterWatch/default.aspx)は、米FDA有害事象報告システム(AERS:adverse event reports)で公表された有害事象を分析し、およそ年に4回発表されるもので、今号ではインクレチン関連薬の膵炎や膵臓がんリスクなどの検討を行っています。

QuarterWatch 2012 Quarter 3
Monitoring FDA MedWatch Reports
Perspectives ON GLP-1 AGENTS FOR DIABETES
(ISMP April 18, 2013)
http://www.ismp.org/QuarterWatch/pdfs/2012Q3.pdf

 ISMPでは、インクレチン関連薬のうち、エキセナチド(バイエッタ)、リラクルチド(ビクトーザ)の注射薬2剤と、シタグリブチン(ジャヌビア、グラクティブ)、サキサグリプチン(オングリザ)、リナグリプチン(トラゼンタ)の経口薬3剤の計5剤について、2011年7月から2012年6月までに寄せられた1723の重篤な有害事象の報告を検討しています。(第2世代のSU剤3剤、メトホルミンと比較)

 有害事象の内訳は、膵炎831、腎不全/腎障害152、膵臓がん105、甲状腺がん32、過敏性反応101などで、薬剤別では、エキセナチドが612で多く占めたそうです。

 膵炎のシグナルについてのオッズ比は全体では25.8(95% CI 15.9-41.8)でしたが、注射薬で28.5(95% CI 17.4-46.4)、経口薬で20.8(95% CI 12.6-34.5)と注射薬の方がリスクが高く、

 膵臓がんのオッズ比は25.6(95% CI 15.9-47.8)で、エキセナチドが71例と5剤中最も多く占めました。

 甲状腺がんの報告は、ほとんどが注射薬(リラグリチド17、エキセナチド14)で、この2剤のオッズ比は15.2(95% CI 2.0-111.7)だったそうです。

 また過敏性反応はリナグリプチンで有意にリスクが高かったそうです。(オッズ比7.7(95% CI 4.2-13.8))

 これら5剤はの処方頻度というのは同じではないので、これを10万処方ごとの有害事象の報告数で比較すると、注射剤2剤と、リナグリプチンが、シタグリプチンとサキサグリプチンが大きく上回ったそうです。

関連レポート
QuarterWatch 2010 Quarter 3
Monitoring FDA MedWatch Reports
New Signals for Liraglutide, Quetiapine and Varenicline
(ISMP May 19,2011)
http://www.ismp.org/QuarterWatch/pdfs/2010Q3.pdf

関連情報:TOPCIS
 2013.03.27 EMAもインクレチン関連薬の安全性についてレビューを開始
 2013.03.15 米FDA、インクレチン関連薬と膵管上皮化生についてレビュー開始
 2012.04.20 ビクトーザの回収を求める請願書が提出(米国)

関連記事:
Safety watchdog flags GLP-1 drugs for pancreatitis reports to FDA
(FiecePharma 2013.04.18)
http://www.fiercepharma.com/story/safety-watchdog-flags-glp-1-drugs-pancreatitis-reports-fda/2013-04-18


2013年04月19日 16:23 投稿

コメントが1つあります

  1. アポネット 小嶋

    関連記事です。ツイートでも書きましたが、今回の報告は自発報告を基にした解析であり、そのあたりを考慮することは必要です。

    Troubling New Signals? Diabetes Drugs & Adverse Event Reports
    (Pharmalot 2013.04.18)
    http://www.pharmalive.com/troubling-new-signals-diabetes-drugs-and-adverse-event-reports

    上記紹介ブログ

    GLP-1製剤は膵炎のリスクを上昇するのか
    (くすりなひと 2013.04.19)
    http://kusurinahito.futsuo-holiday.com/?day=20130419