オランダ薬剤監視センター(Lareb:Netherlands Pharmacovigilance Centre Lareb)ではシグナル検出をまとめたレポートを四半期ごとに発出してますが、6日、最新のレポートがLarebのウェブサイト(http://www.lareb.nl/)に掲載されています。
Kwartaalbericht 1e kwartaal 2013
(Lareb Quarterly report 2013-1 )(英語です)
http://www.lareb.nl/getmedia/96068332-412d-49cf-aaca-61fb4fb41523/2013-1-LQR.pdf
今回掲載されたのは次の5件です。(簡約です。原文でご確認ください。)
シグナル |
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概要 |
Clarithromycin and angioedema
(クラリスロマイシンと血管浮腫) |
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Larebには、11例のクラリスロマイシンとの関連性が疑われる血管浮腫の報告があった。(3例は他剤との関連も疑われた。またアジスロマイシンなど他のマクロライドでも報告がある) 一方、WHOのデータベースでもクラリスロマイシンとの関連性が疑われる260の報告が確認された。またEudravigilanceデータベースでも129の報告が確認された。発現のメカニズムは分かっていないが、マクロライド系抗生剤による血管浮腫の可能性について成書への記載があり、クラリスロマイシンでも考慮されるべきである。(本邦では記載なし) |
Ceftriaxone and hepatitis
(セフトリアキソンと肝炎) |
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Larebには、3例のセフトリアキソン(ロセフィン)との関連性が疑われる肝炎の報告があり、文献でも2つの報告例が確認された。また、WHOのデータベースでは118例、Eudravigilanceデータベースでも163例の(胆汁うっ滞性)肝炎報告が確認された。 セフトリアキソンを成分とする胆石、胆嚢内沈殿物が原因として考えられている(本邦でも、重篤な副作用の項に記載あり) |
Esketamine and hepatotoxicity
(Esketamine(=本邦未発売、全身麻酔薬)と肝毒性) |
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Larebには、4例のEsketamine(off-label use)との関連性が疑われる肝機能障害の報告があった。また、 WHOのデータベースでは肝機能異常2例、胆管炎1例、肝酵素上昇1例の報告、Eudravigilanceデータベースでも肝機能異常2例、胆管炎1例の報告、文献でも報告が確認されたが、メカニズムは不明。 |
Terbinafine and smell alterations
(テルビナフィンと嗅覚障害) |
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Larebには、15例のテルビナフィンとの関連性が疑われる嗅覚障害の報告があり、うち7例では味覚障害も伴った。一方、イタリアのファーマコジランスセンターへの自発報告では、味覚障害が14例、嗅覚障害が2例、両方の障害が1例あった。また、英国での大規模市販後調査では64例の味覚障害の報告が確認された。さらに、WHOのデータベースでもテルビナフィンとの関連性が疑われる嗅覚脱出128、嗅覚錯誤100、嗅覚減退5の報告が確認された。またEudravigilanceデータベースでも嗅覚脱出78、嗅覚錯誤30、味覚減退7の報告が確認された。発現のメカニズムは分かっていないが、亜鉛代謝や活動電位などの関与などを示唆した(本邦ではその他の副作用の項で記載あり) |
Tamsulosin and dry mouth
(タムスロシンと口腔乾燥症) |
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Larebには、6例のタムスロシンとの関連性が疑われる口腔乾燥症の報告があった。(いくつかの事例では中止で回復) 一方、WHOのデータベースでもタムスロシンとの関連性が疑われる77の報告が確認された他、他のα1遮断薬でも報告が確認された。またEudravigilanceデータベースでも12の報告が確認された他、他のα1遮断薬でも報告が確認された。α1受容体は唾液腺でも存在することが知られており、この受容体が遮断されることで、水分とカリウムの排出が低下し口腔乾燥が発現するのではないかとしている。(本邦では、その他の副作用の項で“口渇”の記載がある)
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また、今回のレポートでは欧州で話題になっているDiane35 のオランダにおける有害事象の報告の概要がまとめられています。
Overview of reports of thromboembolic adverse drug reactions associated with cyproterone/ethinylestradiol
http://www.lareb.nl/getmedia/96068332-412d-49cf-aaca-61fb4fb41523/2013-1-LQR.pdf#page=30
上記によれば、Laerb には109例の関連性が疑われる血栓塞栓症の報告があり、死亡例も8例あったそうです。(症例の紹介あり)
シグナルはLarebからは定期的に発出されており、まとめたものが下記ページに掲載されています。
Signals(Lareb)
http://www.lareb.nl/Informatie-bijwerkingen/Signalen
関連情報:
2013.02.25 シグナル(オランダLareb Quarterly Reports)
2012.11.02 シグナル(オランダLareb Quarterly Reports)
2013.03.12 医薬品の使用と口腔乾燥症(NZ)
2013.01.30 血栓リスクでDiane-35 (ダイアン35)の販売を中止(仏)
2013.01.06 第3、4世代ピルの使用制限(フランス)
2012.07.09 テルビナフィンと聴覚障害
2013年05月09日 01:01 投稿