第8回一般用医薬品のインターネット販売に関するルールの検討会

 10日、注目の一般用医薬品のインターネット販売等のルール作りを行う8回目の検討会が開催されています。(今後記事更新する場合があります。詳しい状況は、下記実況ツイートまとめと今後の報道でご確認下さい。)

第8回一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会 資料
(厚労省 2013.05.10 開催)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000031khv.html

 前回は実況がされませんでしたが、今回はいつもの傍聴されたと思われる方がやりとりの一部をツイート(https://twitter.com/hideharus)しています。

厚生労働省:一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会
(第8回・2013/05/10)実況ツイ―ト
http://togetter.com/li/500607

 今回の検討会は、やはり昨日9日の各紙報道(→TOPICS 2013.05.09)の真偽について事務局に問いただすことから始まっています。

 報道で取り上げられたのは、下記事務局たたき台(案)18ページにある、「一般用医薬品のインターネット販売等のルールについて~安全性確保のための方策について」の基本的な考え方の部分かと思われます.

 一応、10ページに「各コミュニケーション手段で収集することが必要な使用者に関する情報」でテレビ電話についてふれられてる他、20ページで、「コミュニケーション手段については、メール以外に、店頭での対面、テレビ゙電話及び電話を併せて確保する」との記載がありますが、この資料をもって、この条件を満たすテレビ電話であれば「第一類も可能」というようには読み取れません。(やっぱり日経記事は、勝手に都合よく解釈した自社の希望的方向性だった? と思ったけど、その後の報道をみると解禁の方針が示された? みたいです

資料1 議論を進めるための事務局たたき台(案)(PDF)

(1)基本的な考え方
○ 一般用医薬品の安全性確保のためには、

  1. 販売に当たって専門家が使用者の状態を的確に把握すること
  2. 販売に当たって購入者側と専門家との円滑な意思疎通(コミュニケーション)を確保すること
  3. 保管や搬送に当たり、適正に品質管理等を行う

ことが重要ではないか。

 検討会ではこの他に下記のような資料が提出され、説明ののち質疑応答が行われています。

資料2 一般用医薬品に係る責任について(第7回資料5修正版)(PDF)

  前回資料に、インターネットショッピングモール運営者の責任についても明確化すべきではないかとした論点が追加。

資料3 一般用医薬品の適正なインターネット販売等の確保について(第7回資料4修正版)(PDF)

 前回資料に、インターネット監視の強化や個人輸入対策などの「不正な医薬品の販売に対する監視のための方策について」が追加、また「インターネットオークション」として「出店」する形態の取り締まりについても言及。

 資料4 一般用医薬品販売における安全性確保のための方策について(國重構成員提出資料)(第7回資料7)(PDF)

  一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する論点に対して、ネット・店頭・電話・配置ごとにどのような安全性確保対策が可能かを列挙。

資料5 一般用医薬販売の安全性確保のためのJODAの取組みについて(後藤構成員提出当日配布資料)(PDF)

 資料4と同様、一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する論点に対して、JADAのガイドライン、会員企業による具体的な安全性確保対策を列挙。

 資料6-1 薬の購入に関する意識と実態調査報告書(抜粋)(平成24年度厚生労働科学研究)(第7回資料6-1)(PDF) (前回紹介→リンク

資料6-2 一般用医薬品における専門家の意識と実態に関する調査報告書(抜粋)(平成24年度厚生労働科学研究)(第7回資料6-2)(PDF) (前回紹介→リンク

資料7 一般用医薬品(第1類、第2類)の主な種類について(PDF)

 第一類医薬品の商品名の一覧がある。(後で、本サイトの情報と突合せをしよう)

 参考資料1 一般用医薬品の安全性確保のための方策とその具体的な条件(案)(第7回資料3)(PDF) 

参考資料2 一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する主な論点(第6回資料1)(PDF) 

参考資料3 対面により行われなければならない等とされている主な事例(第6回資料4)(PDF)

参考資料4 対面による販売の利点(生出構成員提出資料)(第6回資料7事例追加)(PDF) 

参考資料5 安全性確保のための具体的方策に関する法令規定(第5回資料4)(PDF) 

参考資料6 河野構成員提出資料(PDF)

 横浜国際社会科学研究 第17 巻第4-5 号に掲載された論文「医薬品販売規制制度の問題点─医薬品ネット販売問題を起点として─」。

 本サイトでも紹介した厚生労働科学研究(TOPICS 2012.03.22)などで海外事情をわかりやすく紹介したうえで、国民の保健衛生の向上のために適合させるための新たな規制のあり方について提言している。

参考資料7 後藤構成員提出資料(PDF)

  5月1日に、日本オンラインドラッグ協会がリリースした、「『教訓』としての薬事法違憲判決(慶應義塾大学山本龍彦准教授による意見書)」

 「郵便等販売禁止も、かつての適正配置規制と同じ業界保護立法ではないか、との批判を克服するには、立法者は、かかる「根拠」を示す必要がある」と指摘したうえで、「それができない限り、仮に郵便等販売禁止を法律レベルで定めたとしても、いずれS50 判決と同様のアプローチによって、最高裁で違憲と判断されることになろう。」とした。

参考資料8 野口構成員提出資料(PDF)

 一般用医薬品のネット販売における行政監視上の懸念事項について問題提起。

 オンラインオークション販売、 劇薬の販売や零売の取扱いをどうするのかを指摘。

参考資料9 國重構成員提出資料(PDF)

 オークション事業者の出品規約および監視業務について紹介

 インターネットオークションの問題が指摘されていますが、IHADAなどで行われていることは以前指摘しました。(→TOPICS 2012.08.13 コメント)

 ひと通りの質疑応答後、資料1のたたき台について、各構成委員からさまざまな意見が出されていますが、新聞報道にあった「テレビ電話」についての議論には入らなかったようです。

 ツイートをされている江口氏(https://twitter.com/hideharus)のメモで目に留まった発言を拾うと

  • 消費者教育の視点も入れてほしい。
  • 使用者と購入者は分けてほしい、そのうえでそれぞれがどこまで「自己責任」でよいとするのか
  • 薬害は制度の不備により生じることが多い。今回新たな制度を設けた場合にその不備で薬害が生じた場合には、制度を作った国が責任を取るのか
  • 特に制約条件のない購入者、常備薬のようなものであっても自身の判断で自由に購入先を選択できることも視点として入れるべき
  • 現状の1類、2類、3類の区分け、2類と指定2類の区分け、はインターネット販売を想定して作ったものではない。今回ルールの見直しをしているのであるから区分自体の再考も視野に入れるべき。
  • 最大限の情報収集は必須、目視やにおい等は重要な役割を果たす、ネットでできないから難しいと言って見送るべきものではない。
  • 伝えるべきことを伝えるコミュニケーションの点は、対面でもネットでも長所、短所がそれぞれあるわけで短所を改善していけばいい。

 やりとりを見ていて、構成員の間で、“セルフメディケーション”とは何かの共通認識がないことを感じました。

 論点たたき台の冒頭には次のように記載されています。

 一般用医薬品の意義

  • 一般用医薬品の重要性は、専門家の適切なアドバイスの下、身体の軽微な不調や軽度な症状を自ら手当てするという、いわゆる「セルフメディケーション」の観点からも、引き続き重要なものではないか。
  • 他方、一般用医薬品によるものと疑われる副作用報告の状況から見て分かるように、一般用医薬品は、他の商品やサービスとは異なり、程度の差こそあれ、リスクを併せ持つものであり、必要な情報が適切に提供され、購入者側に十分理解された上で、適正に使用されることが重要ではないか。

 特に、「なぜ、専門家の適切なアドバイスが必要なのか」「くすりとどう関わるか」という認識の相違が、議論を難しくしているのではないかと感じました。 (指摘のあった消費者教育=くすり教育がまだ十分行われていないことや、セルフ販売というスタイルが社会的に認知されていることも大きい)

 それと、常備薬は自身の判断で(ネットでも自由に)買えるべきだといった趣旨の意見も示されたそうですが、一部の総合感冒剤など、常備薬として果たして適したものであるかどうかは、薬剤師的には再考の必要があるのではないかと考えました。

 以前指摘(TOPICS 2013.02.10)しましたが、乱用される潜在的なリスクがある一部の総合感冒薬や鎮痛薬の販売のあり方(特に大包装品)は見直すべきであり、制限ができないのであれば、新たなリスク区分の設定も必要かと思います。

 海外では非処方せん薬について、同じ成分(例えば、アセトアミノフェン など)であっても、一定の包装数までなら、一般商店でも買える(GSL :General Sale List)一方、大包装品については、オーバーザカウンターや処方薬の取扱いになることもあります。

 ちなみに、英国では現在、MHRA(医薬品庁)が、GSLを列車や航空機内でも買えるようにするパブリックコメントが行われています。(利便性や必要性からだと思うが、包装数は1~2回分といった最少のものに限られるのだと思う)

Public consultation (MLX 381):
proposals for amendments to medicines legislation to allow sale of medicines on trains and planes
(MHRA 2013.05.07)
http://www.mhra.gov.uk/Publications/Consultations/Medicinesconsultations/MLXs/CON270727 

 さらに広告についても検討すべきだと思います。

 業界団体では広告に関する自主的なガイドラインもあるようですが、IHADA(TOPICS 2012.08.13)やペレウス(TOPICS 2012.06.14)のように、一般用医薬品であるのにもかかわらず化粧品(の感覚で使われる)とのイメージを持たせるような広告(や陳列)が展開されているのは、やはり問題があるのではないかと思います。

OTC医薬品等の適正広告ガイドライン(2011年版)
(日本OTC医薬品協会)
http://www.jsmi.jp/advertisement/guideline.html
http://www.jsmi.jp/advertisement/pdf/guideline2.pdf

 ネットの情報をうのみにして、過度に期待する人もいないとは限らないので、一般の販売と準じるとは思いますが、ネット販売における広告のガイドラインを作成すべきではないかと思います。(特に「これを購入した人は、他にもこういったものを買っています」といった情報は本当に必要な情報かと思う)

関連情報:TOPICS
 2013.04.26 第7回一般用医薬品のインターネット販売に関するルールの検討会
 2013.04.19 第6回一般用医薬品のインターネット販売に関するルールの検討会
 2013.04.05 第5回一般用医薬品のインターネット販売に関するルールの検討会
 2013.03.22 第4回一般用医薬品のインターネット販売に関するルールの検討会
 2013.03.13 第3回一般用医薬品のインターネット販売に関するルールの検討会
 2013.02.27 第2回一般用医薬品のインターネット販売に関するルールの検討会
 2013.02.14 一般用医薬品のインターネット販売に関するルールの検討が始まる
 2013.04.09 第一類もテレビ電話を介せばネット販売が可能に?
 2013.02.20 OTC鎮痛薬・風邪薬の包装(販売)制限は必要か
 2013.01.19 医薬品ネット販売に関する国内外の情報 
 2012.03.22 海外におけるセルフメディケーション(厚生労働科学研究)

16:35 更新 5月11日10:25リンク追加


2013年05月10日 15:42 投稿

コメントが7つあります

  1. いつも思うのですが、薬剤師でこの事に興味関心のある人はどれだけいるのでしょう。
    ネット販売ではダメって思ってる薬剤師がどれだけいるのでしょう。もしかしたら別にいいんじゃない?って思ってる人多いのでは?こんな事やってるって知らない人も多いと思います。
    組織力がないと言うか職業人として未熟と言うか。
    薬剤師法第一条を自覚すべきですね。単に調剤師や学者でなく。
    その精神をきちんと自覚すれば会長や一部上の人間が叫ぶだけでなく一枚岩の組織力になるんだと思いますけど。自分たちの既得権益を守るのでなく経済力に流されず国民の健康安全のために闘う必要があるって。

  2. アポネット 小嶋

    OTCを売らなくたって、調剤で守られているからと思っている人が多いんでしょうね。

    それにしても、検討会の資料の内容を引き合いに、各紙は今後厚労省の方針だとして好きなように記事を書いていますね。

    ●第1類は販売開始後4年を経過したものを、リスクが中程度の第2類は全てを、条件付きで解禁す
    る方針を固めた。(読売、資料7にそれらしきことは書いてあるが、解禁するとはとても読めない)

    ●これは第1類全体の2割ほどになる。残り8割も同省独自の基準で3つに分ける。(日経 これも資料7に基づいて記事にしているが、安全性評価が確立したものはネットOKとも読み取れる)

    ●副作用のリスクが高い医薬品も含め、条件をつけた上で全面的に解禁する方針を示した。(日テレNEWS24)

    テレビ電話があれば、ネット販売OKという話は実況ツイートや下記記事をみる限り、そういった議論は出ていないようにも思うのですが。

    第8回OTCネット販売検討会~たたき台の下で半歩前進か
    (NET IB NEWS 2013.05.10)
    http://ib-kenko.jp/2013/05/otc_2_0510_dm1217_1.html

    個人的には、テレビ電話よりも、乱用・不適切な使用をしないような個別の対策の方が深めることの方が重要だと思いますけど。

    構成員の岩瀬氏のブログ記事も興味深いです。

    官僚の世論形成術
    (ライフネット生命副社長 岩瀬大輔のブログ 2013.05.10)
    http://blog.livedoor.jp/daisuke_iwase/archives/6504577.html

    日薬も会員に真剣に問いかけるなら、検討会でどのような話が出て、どう考えたかをリアルタイムで発信しないと、まず会員は関心を持たないでしょうね。

    薬剤師法
    http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S35/S35HO146.html

    第一条  薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによつて、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。

    一般用医薬品の供給における薬剤師の役割や必要性を否定しているわけではないのでしょうか、現状でも世界的に見て人口比の数が多い日本の薬剤師の職能を発揮する場を広げていくこと(官民挙げての薬局でのヘルスプロモーションとか)を厚労省は真剣に考えていかないと、次世代の薬剤師が職能を発揮する場がどんどん失われていくのではないでしょうか?

  3. 薬剤師法第一条=日薬薬剤師倫理規定第一条。
    目的「人々の健康な生活の確保」 手段「調剤、医薬品供給、その他薬事衛生」
     ネット販売は販売手法の一つでしかなく、責任感のある専門家の関与によって「販売しない」という選択肢が確保されていれば職能上は問題ありません。「専門家の正当な判断によって販売しない」行為を封じようとする組織・経営者・システムに対して、専門家と消費者を守る仕組みがあれば良いのです。それを踏まえずに「ネット販売」という販売手法がダメだと専門家が言うと「そこにいる専門家は【正当な判断】を下せないような無能なのか」という議論になってしまいます。

  4. ひとつ大いに気になるところがあって、それは検討会初日の映像から垣間見えたことだが、規制側の委員のメンバーに、かって不運な話題となったサリドマイド禍の人が含まれていたことと、規制反対側にインターネット市販薬購入者が含まれていなかったことである。サリドマイド禍やエイズその他薬害の殆ど即ち公害や医療における進展がまだ無くて、被害を想定しえなかった時代の過失とでも言うべき事情で起こってしまった被害者を呼び寄せるというのは、ある意味筋違いのやり方ではないだろうか。そのように医療や薬学の恩恵を被らなかった人たちをあたかもさらし者にするようなひどいやり方は許されるものではない。過去にメーカーが回収を怠ったために生じた薬害禍、これをあたかもインターネット販売のルートにすり替えてはならないと思う。医薬上の歴史をいろいろ調べてみると、発生事故は過去の医療に伴う薬害禍のケースが殆どで、厚労省が認可したいわゆる市販薬では私の知る限り問題が見当たらない。
    結論的にいえば、検討会議での論議は大半の医薬品の禁忌に掲げられている「他薬との飲み合わせ」や「過剰連用」、また「個々人の注意不足(医薬品と向き合う慎重さの欠如)」、これらをどのようにして防ぐか、この諸点に視点を絞って販売責任及び使用責任についての論議としなければならないと思う。いずれ来たるべき時代には賢明な人たちは、「他薬との飲み合わせ」や「過剰連用」、また「個々人の注意不足」を起こさないような、あるいはそれが起こっても重大な副作用に至らないような医薬品の開発も別途進めていくことを考えているかも知れない。何分同じ人間の口から入るものでも「薬は異物」なのであるから、この異物の異物性たる特質を、そういう意味でも異物でなくなるように解決する努力を惜しんではならない。
    大量購入に関する私の考えが正しいとすれば、大量購入=危険とみなす考えの持ち主は、大量購入に悪意或いは乱用の志向があるものと決めつけているとしか考えられない。そんなバカげたことがあるだろうか。そんな考え方をする人は真実や実際を常に捻じ曲げようとする人以外のなにものでもない。大量購入したあと大量服用することで(服用による事故の)責任をメーカーや販売者に転嫁することも今のような時代では不可能にきわめて近い。医療ミスを訴えることとは質が違う。そんなことをしてメーカーや販売者を訴えて賠償させようとしても自滅するだけである。
    通販規制を行う場合によく利用されるのが、大量服用により自殺するような行為を未然に防がなければならないという宣伝文句である。薬だけが自殺の手段でもないだろう。一酸化炭素中毒もあれば排ガスの引き込みによるものもある。首つりもあれば手首の動脈を切る行為もある。また、倫理面からいって、やむにやまれずよほど死にたい理由があるために自殺の道を選ぶ人だって居る。そのようながけっぷちの人を、きれいごとを言って説得し自殺を思いとどまらせて、そのあと、その人が安寧に暮らしていける責任をとることができるのかだ。自殺を思いとどまらせる素晴らしい助力を持つ人は、自殺を思いとどまった人に安寧への道しるべも示してやらねばなるまい。通常の価格からみて安い(経済的に楽だ)と考えられた場合にまとめ買いをしたいから。まとめ買いに動く理由としては、医薬品の場合、同じように口にする食料品などと異なり特別に消費期限が長く、2年以上、長いものであれば5年以上といった設定のものもあるからで、一気に服用してやろうなどと奇妙な考えをもって買う人などいない。店頭でよく見かけることだが、「お買い得、しかしおひとり様二点限り」といった案内があるのは、できるだけ多くの消費者にいきわたるようにという理由からに過ぎない。その証拠に高いイメージがある通常販売のものについては数量限定となっていない。結論的にいえば、おひとり様何点限りとするのは無意味な論理である。だいいち、限定されれば同じ医薬品を複数の店で買えば済むといったすり抜けが横行するだけのことだ。通販においてまとめ買いに動くもう一つの理由は、「5,000円以上とか10,000円以上お買い上げの場合、送料無料、手数料無料」となることだ。
    そもそも、大量購入と不適切使用とを単直に結びつけることが奇妙なことではないか、あるいは無理があるのではないか。つまり消費期限までに適切に保管し適切に使用する人のことを考えるとき、その理屈はどうなるのか。むしろ、消費期限を過ぎた医薬品や、過ぎていなくても高温、多湿など保管状態が悪かったりしているのに気付かずに服用したりする危険もあることを周知させることも禁忌とは別にきわめて大切なこと。
    検討会で指摘されているようなリスクの表出をあまりにも深刻に考えるのは、少し行き過ぎのようにも思える。セルフメディケーションを流布する一方で、一般市販薬の内在リスクについて異物そのものとしてとらえるがために、効果の方を考えないでは困る。それではいったい何のためにセルフメディケーションを促進しようとしているのかわからないではないか。しかも、一般用医薬品でこれまでにサリドマイドを初めとする医療被害に匹敵するような薬害は一例も報告されていないという現実がある。リスク警告を販売にすり替えてはならない。何度も言うように、市販されている一般用医薬品(スイッチOTCも含め)については、服用にかかる個人個人との関わりを徹底検証することである。そして服用に関する個人服用の適正な方法をまとめあげることだ。このことを忘れて、恰も一般用医薬品を販売してよいものやら悪いものやらの初期段階でとやかく論ずるべきではない。
    あえてこんなことを言い直すのは、まだ問題の本質をわかっていない委員が多いからである。リスクを過大視するあまり一般用医薬品を販売してよいものやら悪いものやらで論ずるのであれば、店頭にも矛先を向けなければならないのは当たり前の話だ。販売そのものに疑念を持つということは厚労省の認可体制を認めないという姿勢に通じる。効用以上にリスクばかりを議論に乗せる姿勢は、土壌が定着したセルフメディケーションを根底から破壊するものだ。よくよく考えれば、店頭で今薬を求めるのに何の説明もない状態が過半を占めるのは、わざわざ時間を割いて買うほどの重大な危険を内在するほどのものでもないからだし、また、一刻も早く症状を快癒したいと願う消費者の気持ちが現われたものという側面も持っている。(以上、持論の一部より)

  5. 販売時に深い説明は不要である。その理由。
    ○ 市販薬は医療用に比して、副作用が起きないよう成分濃度が低くするなどの工夫がされており、一般的にリスクは弱い、だから誰もがこれまで安心して、医師からの処方も受ける必要がなく簡単に手に入れることができた。
    ○ これまで市販薬の売買において起訴に絡むほどの問題は発生していない。
    ○ 薬店において、検査器具もなく診断書の提示もなくふつうに販売されている。
    ○ 実店舗での現況が、ほとんど深刻な、時間を要する応談なしでスムーズに販売されている。
    ○ 購入者は、医療を受ける重大な愁訴からではなく、比較的軽度な愁訴から購入にかかる。重大な愁訴の人は救急性が高く検査の必要も感じており、まず医療機関へ行くことを頭に置く。深い説明というのは、こうした重大な、或いは緊急の場合にこそ必要なこととなる。
    ○ 構えて応談を求める場合は、使用者の使用直後とみなされ、購入時の思いは、リスクの懸念であるよりは求める効果の方である。
    ○ 使用者の使用後に対する相談の受け口としての応談特設のコーナーの設置を提案する。

  6. 笹田さま

    薬害被害者の方が、委員として参加されていることに関して、私は賛成です。
    これはこの方の被害がインターネット販売に関するか否かという単純な視点ではなく、被害に遭われ、薬事制度に関心を持って初めてこの国の薬や医療が、他の先進国に比較して販売重視・安全軽視であることを理解するという背景の方が重要だと考えるからです。

    薬事に関する規制緩和は、労働規制の緩和に比べ一般には非常に分かりづらく、今回の様に、安易な議論になりがちです。
    全国薬害被害者団体連絡協議会代表世話人の花井十伍氏は、この国の医療が成熟するのにあと100年はかかるだろうと指摘しています。私も同じ考えです。

    >…起こさないような、あるいはそれが起こっても重大な副作用に至らないような医薬品の開発
    は非常に大切なことです。しかしそのような薬剤が開発されても、従前の薬剤は宣伝によって売り上げを下げまいと努力します。この点は医療の現場においても重要性が認識されています。市場主義の主張においては、これは市場において淘汰されるとしますが、一方で専門性の高い分野においては「情報の非対称性」が存在することも厳然たる事実です。
    トクホの例をみても明らかなように、一度認可されてしまえばその後の追加研究で無効が示唆されようとも、認可が取り消されることはありません。市販薬含め、悪くいえば疾患の管理・治療において罠ともいえるような状況から、個人は自己判断で立ち回らなければなりません。
    ご指摘の「賢明な人」は、よい薬を提供しようとする一方で、相対的に利益の少ない薬についても販売促進策によって提供しようとします。
    この点においても、専門家の関わりを薄くする販売制度は医療文化の面で大きな損失です。
    >店頭で今薬を求めるのに何の説明もない状態が過半を占めるのは、わざわざ時間を割いて買うほどの重大な危険を内在するほどのものでもないからだし
    は、店頭において販売優先でこのような売り方をしても、一般には治療の失敗やリスクの上昇というものは認知し難いからです。極めて単純に服用直後の重篤な副作用に限ったとしても、マクロレベルの被害の想定を、各個人の経験で論じるべきではありません。それは、現代社会人であれば高度な情報処理の能力を持つとの緩和派の主張にも反します。

  7. 販売時に逐一、深い説明をということではなく、薬が専門家との継続的な関係性の中で使用される、そういった文化を形成する制度の継続、またその形骸化をなくす働きかけが必要です。
    〇医療の進歩というのは、単純に物質としての短期的なリスクのみならず、健康管理から疾患の管理の中における、薬剤の適正な位置づけという意味もあります。
    医療の進歩を市販薬にも適用すべきというならば、専門家の介入は強化すべきですし、単純なリスクというのみで捉え、なおかつ安全性は担保せよというのであれば、時代に合わせ発売停止にすべき薬剤が多数出てきます。
    〇市販薬の販売制度と訴訟について考慮するのであれば、現在形骸化している薬剤師等の「情報提供義務」を規制派、緩和派の双方が考え直す必要があります。
    現在の議論の本質においては、緩和派は自己責任、つまり客が訴えることの出来ない制度を志向しているのではないですか?
    〇検査器具もなく、診断書もないという主張は、医療裁判が、有責と認定しやすい外来での疾患管理ではなく、元々ミスがあっても有責となりにくい手術に偏っていることと同様の誤謬に思えます。疾患の治療の多くは、確定して進むものではありません。それは医療において、かつ診断書が存在しようとも同様です。検査器具がなければ、やけっぱちで治療するのではありません。
    〇実店舗云々は後述します。
    〇比較的軽度な愁訴ならば重篤性がない、ということでよければ規制緩和で構いません。
    そうではありませんし、またそのようなことを理解していない国民が多いからこそ、市販薬の販売規制や、顧客が必要と感じない状況においても専門家の関わりが必要なのです。緩和派は、現代社会では多くの情報から購入者自らが判断できるからこそ規制は必要ないとしています。
    〇実店舗で情報提供義務が形骸化されている事実をもって緩和をよしとするならば、情報提供義務を撤廃すればよいと思います。その方がよほど他の国との差異が分かりやすい。義務はあっても実際には機能していないのは、労働基準法とサービス残業の横行と同様の手法です。
    今後の日本では医療にかかり難くなります。市販薬が手軽になるのも同義です。そこでは医療水準を落とさない方法が議論されるべきであって、販売高の拡大と利便性の議論に歪曲されるべきではありません。