各メディアが報じていますが、安倍総理は5日、成長戦略の第3弾。インターネットによるすべての市販薬の販売解禁表明しています。(関連記事は右上ツイートのリンクでたどって下さい。掲載期間は通常1週間程度です)
成長戦略第3弾の根拠となっているのは、5日に公表された規制改革会議(http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/meeting.html)の答申と、官邸の政策会議である産業競争力会議(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/skkkaigi/kaisai.html)の成長戦略(素案)です。
規制改革に関する答申~経済再生への突破口~
(平成25年6月5日 規制改革会議)
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/committee/130605/item3.pdf
成長戦略(素案)
(平成25年6月 産業競争力会議)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/skkkaigi/dai11/siryou1-1.pdf
それぞれ、医薬品のインターネット販売の記述の部分を抜粋します。
(規制改革に関する答申57ページ)
医療の ICT 化の推進
a 一般用医薬品のインターネット等販売規制の見直し【平成25年9月までに措置】
※国際先端テスト実施事項
インターネットを含む郵便等販売については、平成 21 年6月の改正薬事法の施行において、副作用のリスクの程度に応じた一般用医薬品の販売制度が導入され、あわせて施行された「薬事法施行規則等の一部を改正する省令」により、第三類医薬品以外の郵便等販売は原則として禁止されている。
一方で、医薬品等のインターネット通販会社による第一類及び第二類医薬品のインターネット販売を行う権利の確認を求めた裁判では、平成 25 年1月に最高裁判所から判決が示され、郵便等販売に対する新たな規制は、郵便等販売をその事業の柱としてきた者の「職業選択の自由」(憲法第 22 条第 1 項。「職業活動の自由」を含む)を相当程度制約するものであることは明らかであること、薬事法の立法過程において国会がインターネット販売を禁止する意思があったとは言い難いことを指摘した上で、省令で一律に第一類医薬品および第二類医薬品の郵便等販売を禁止していることは、薬事法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効とし、国の敗訴が確定した。
したがって、従来の規制に代わる新たなルールとして、販売形態の特性や、業界の自主的なガイドラインも踏まえ、安全性を適切に確保する仕組みを設けた上で、インターネット等で全ての一般用医薬品の販売を可能とし、これらの制度的枠組みを遅くとも平成 25 年9月までに整える。
(成長戦略(素案) 62ページ)
一般用医薬品のインターネット販売
一般用医薬品については、インターネット販売を認めることとする。
ただし、「スイッチ直後品目」及び「劇薬指定品目」については、他の一般用医薬品とはその性質が異なるため、医療用に準じた形での慎重な販売や使用を促すための仕組みについて、その成分、用法、用量、副作用の発現状況等の観点から、医学・薬学等それぞれの分野の専門家による所要の検討を行う。秋頃までに結論を得て、所要の制度的な措置を講じる。
インターネット販売は対面販売よりリスクが高いと決めつけて、その前提の下で議論をすることはしないものとする。
おとといからの報道を見ると、解禁は99%か100%かなど、刻々と状況が変わっていますが、9月までに専門家により諸問題についての検討を行い最終的なルールづくりを行うということだけは、確認されているようです。
ただ一方で、報道を見ると答申や素案にない事項についても合意がされているという報道があります。
- 関係4閣僚が、首相官邸で協議。ネット販売と店頭販売では売り方を区別するべきではないと確認した
ネット業者特にモールを運営する楽天を配慮(TBS系のメディアは、楽天の三木谷氏が100%解禁しなければ産業競争力会議の委員を止めると恫喝して、株価への影響などを考慮し今回答申に盛り込まれたと伝えている)したものですが、海外では少なくとも乱用や誤用、不適切使用による対策のため、一部の国では自主的な規制も含め、ネットでの購入のハードルを高くしており、こういった合意には、厚労省はどれだけ政府与党に各国の現状をレクチャーしていたのかを疑問に感じるを得ません。
4日には慎重派の団体が合同で記者会見を行ってそうですが、ここまで来た以上、本当に社会にとって必要な医薬品のインターネットのあり方について、オンラインドラッグ協会のガイドライン以上のルールをつくって、安心して購入できる仕組みを直ちに検討すべきではないかと思います。
下記の産業競争力会議の素案(こんな記事を書くと削除されそうな気もしますが)を見ると、最後のチャンスが与えらているような気もします。
「スイッチ直後品目」及び「劇薬指定品目」については、他の一般用医薬品とはその性質が異なるため、医療に準じた形での慎重な販売や使用を促すための仕組みについて、その成分、用法、用量、副作用の発現状況等の観点から、医学・薬学等それぞれの分野の専門家による所要の検討を行う。秋頃までに結論を得て、所要の制度的な措置を講じる。
劇薬指定品目というと、原薬ベースで考えると第一類(ヨヒンビン、ロキソニンだってスイッチされるまでは劇薬扱い)だけではなく、第二類(コデイン類、アセトアミノフェン、プソイドエフェドリンも該当すると思う)にも多くの成分があります。(報道によれば政府は対象を第一類の品目だけとしているが、答申・素案には「第一類」とは書いていないので第二類についても対象とすべき)
慎重派の方にはこういった成分が含まれた医薬品の海外の販売状況(店舗・ネット)の販売状況の詳細について調べ、いかに日本の販売状況が無リスクという認識でちょっと間違えれば依存や健康リスクを伴うことをきちんと社会にわかりやすく示すことも必要ではないかと考えます。(海外にはインターネットモールで医薬品を販売している国が果たしてあるのだろうか? 価格を比べ、安いものをまとめて買えば送料はタダになるけど、たくさん手元にあればちょっとしたことで使ってしまうことだってあるかもしれない。でもこれは経済活性化ではない。個人的には禁止すべきだと思う)
今回の議論では 「安全性」っということばかりが問われていますが、問題は「副作用のリスク」だけではないはずです。
リスクは手軽に入手=気軽な使用がもたらす、「依存」や長期連用による潜在的な健康リスクもあるのではないでしょうか。
今回の検討会ではこういったことはまだほとんど検討されていません。
そして厚労省、今回の検討会にあたってどの程度の準備をしていたのでしょうか?
今回の検討会を進めるにあたって、厚労省は海外の事情をきちんと情報収集できる立場なのに、厚生労働科学研究の成果報告書の概要を検討会で示しただけで、何ら情報収集の努力をしてこなかった。これだけでも私は憤りを覚えます。
政府与党の推進派の人たちは、海外ではネットで医薬品は買えるから進めよと言っていますが、一方で、OTC鎮痛剤や小児用風邪薬の販売規制も行われている現実もあります。厚労省は政府与党の人たちにどれだけレクチャーをしたんですか?
(まいけるさんからまたコメントが来そうですが)現状のままだと、プソイドエフェドリン含有医薬品もインターネットで自由に変えますよと、世界に宣言するようなものです。これは、薬物対策に取り組んでいる世界の取り組みに泥を塗るようなものです。(実際に楽天のモールで警察庁の通知にもかかわらず、プソイドエフェドリン配合の鼻炎薬を何と180日分を売っているサイトがあった)
もう残された時間は3か月です。
そもそもリスク区分をするときも、依存や乱用、不適切な使用や長期使用による潜在的なリスクといった社会的要因をほとんど考慮に入れなかったのが今回のツケです。
慎重派の皆さんは残された期間、死にもの狂いで、リスクの高い一般用医薬品の販売のあるべき姿を一般国民・生活者がわかるように、まとめて示して下さい。
特に薬剤師会は海外とのネットワークがあるんでしょう。国内の事例だけを示しても、国民はもう納得しません。海外の状況がどうであるか必死に調べて(米国だけは参考にはならないけど)、一般用医薬品販売のあるべき姿(ネット販売であれば、それなりのハードルや自主規制がある)をきちんと伝えて、一般用医薬品との関わり方を国民に問いかけるべきです。
これくらいできなけば、もう組織としての存在価値はありません。
また、日薬などの職能団体には、自己判断で購入・繰り返し使用する人に適切なアドバイスができるよう、資材の作成・提供や薬学的トリアージ(あまり適切な言葉ではないけど)などの取り組みを行うべきです。
例えば、頭痛で同一銘柄の商品の購入を求める人にどのような具体的にどのような情報提供を行うかなどです。
リアル店舗に行って、相談すればセルフメディケーションの手助けをしてもらえるとなれば、生活者にとってインターネット販売よりも対面販売の方が安心という声が高まると思います。
それと、総合感冒薬と鎮痛剤の大包装品の必要性についても検討すべきだと思います。
いろんな成分を配合すれば何でも効くとして、成分がてんこ盛りの日本の総合感冒薬というのは、海外ではあまり見かけません。
配合されているものにはコデイン類+アセトアミノフェン/イブプロフェンといったケースが少なくなく、コデイン類による知らず知らずの依存→鎮痛剤による健康リスク(アセトアミノフェン=肝障害、イブプロフェン=消化器系潰瘍)も起こる可能性があります。
また、海外のようにOTCの外箱などもっとわかりやすく(ネットなら必ず表示させる)に、For Three days use only. Can cause addiction といった、連用による潜在的な健康リスクについても表示させるよう必要があると思います。
さらに、専門家による検討にあたっては、2012年度にまとめられれた、厚生労働科学研究全文のWEBへの掲載も必要でしょう。
一般用医薬品における、化学合成品等のリスク区分の見直しと漢方製剤の安全性確保に関する研究
(平成24年度 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究)
http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD01.do?resrchNum=201235044A
OTC医薬品に関わる専門家教育と供給等に関する調査研究
(平成24年度 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究)
http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=201235031A
上記の一部を概要として紹介したもの
諸外国における一般用医薬品のインターネット販売規制について
(第6回検討会 資料6)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000303tz-att/2r985200000303y3.pdf
薬物乱用・依存等の実態把握と薬物依存症者に関する制度的社会資源の現状と課題に関する研究
(平成24年度 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究)
http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=201235023A
(上記の分担研究)
薬剤師を情報源とする医薬品乱用の実態把握に関する研究
(平成24年度 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000303tz-att/2r985200000303yp.pdf
セルフケア・セルフチェックを支援する医療提供体制と一般用医薬品の役割に関する研究
(平成24年度 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究)
http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=201235032A
振り返れば、今回の問題はリスク区分をする際に、依存や乱用、不適切な使用や長期使用による潜在的なリスクといった社会的要因をほとんど考慮に入れなかったのが、今回のツケとなったと思っています。
これで、ネット販売がすべてOKになり、第一類や第二類などのネットでの販売方法に特別な規定を設けないというのであれば、医薬品のリスク区分というのは、販売に当たってはほとんど意味をなさなくなるでしょう。
私は、リスクの3区分とは別に薬剤師の直接の関与が必要な “Pharmacist Only Medicine” を創設することを提案します。
そして、依存や不適切使用による健康リスクがあるものについては、ネット販売では特別の対応を求めるべきです。
2013年06月06日 01:24 投稿
薬害オンブズパースン会議事務局長の水口真寿美氏へのインタビューがWEBに掲載されています。
市販薬ネット販売全面解禁は新たな薬害を生む
(ビデオニュース・ドットコム インタビューズ 2013年06月05日)
http://www.videonews.com/interviews/001999/002806.php
新たなルールづくりに考慮すべき点を指摘しています。(34分頃から)
・実効性のあるルールをつくる
届出ではなく許可制にする
第三者機関で定期的にチェックする
双方向性の仕組みの導入(=電話相談の併用)
・インターネットショッピングモールの運営者の責任を明確化する
・業界の自主規制に頼るだけではなく、厚労省は細部までルールを作り、監督し、最後まで責任を持つべき
概ね同意できるものです。(個人的にはショッピングモールでの販売は好ましくないと思います)
4日の閣議後の記者会見の概要がアップされています。
(通常は翌日。確か、一回アップされたような。確認に時間がかかった?)
田村大臣閣議後記者会見概要
(H25.6.4(火)8:41 ~ 9:05 ぶら下がり)
http://www.mhlw.go.jp/stf/kaiken/daijin/2r98520000033opg.html
大臣の発言で気になる部分を抜粋
(記者)
仮にネットで売るということになった場合に、条件作りとか安全性の担保っていうのについて、甘利大臣の下で決めるというような情報が一部筋から流れてきているんですが、これは厚労省でやるんですよね。
(大臣)
まだ、インターネットでどこまで売るのか売らないのかということも含めて取扱い調整をしている最中なので、どこでそれを検討するのかということは議論はしておりませんが、一定のルールをですね、今3類売られているわけですよね、これがどういうような形になるのか分かりませんが、今現状は我々は何らこれを売っていることに対してですね、一般用医薬品すべて止めることができない状況でございますから、そういうことを鑑みても一定というのをルールを作るという意味では当然のことでありまして、どこに作るかというのはまた決まっているわけではありませんけれども、当然そういうルールを決めるという話になればそれは専門家の方々に入っていただいて適切な判断をいただくような検討会になるんだと思いますから、まだそこまで実は議論をしているわけではございませんので、何ともいえませんけれども、適切に国民の皆様方に安全というものをしっかりとですね、確認ができるような形で売る売り方というものをたぶん御議論いただく話だと思います。どこでやるかまでは我々も知っておりません。それはそうでしょう。だってまだルール決まってないですから。そこまで議論行かないですよね。あと調整が決まってないですから。調整が着いてからたぶんいろんな議論になるんだというふうに思います。
(記者)
今議論になっているのは、スイッチOTCとかですね、そういう切替え直後の物が中心なのか、あと指定2類についても検討会では両論併記的な書きぶりになっているわけですけれども、それについてはもう議論になってないのか、そこはいかがですか。
(大臣)
安全性という意味では当然指定2類も入ってるんですが、それは議論している中ではですね、今言われたようなインターネットがどうのこうのだけじゃなくてですね、どういう取扱いで売るんだという話も含めてありますので、それはある意味その薬局で売る場合もですね、しっかりとした安全性を確保しなきゃいけないっていうことになりますから、別に薬局ではどうでも売っていいっていうわけじゃないんで、ちゃんとそれは薬剤師の方々の元にですね、情報提供していただきながらですね、しっかりとした判断で売る売らないも今判断いただいておるわけでありますから、元々そこの売り方自体がちょっといろいろと制約が甘かったんじゃないかという御議論なんかも検討会の中ではいただいているわけなんでね、そういうことも含めての議論は当然やっていかなきゃいけないということも認識の中にあるんですが、ただ、今言われたスイッチがですね、1番確かに危険性というもの、安全性というものがまだ確認が完全にできていないという物であることは確かでありますから、そういう意味ではそこが1番センシティブであることは間違いないですよね。その安全性という意味からしてですよ。だから、そこの議論というのは当然のごとく大きな一つの議論になることは間違いないと思いますけどね。
(記者)
依存性のある指定2類とかですね、そういう物について特別な条件が必要だろうと、対面も含めてですね、そういう話にはなったんですか。
(大臣)
2類ですからね、それは。いろんな議論はあると思います。ですから、売るときにですね、ちゃんと量をどう確保、確認するんだとかっていうのは、ネットの方々はできるとおっしゃられるわけなので、そういうところはしっかり確認できる方法というものはこれからいろんな議論をしていかなきゃいけないんだと思いますが、2類は2類でございますので、少なくともさっき言った意味では、スイッチの物から比べればですね、安全性はある程度確認はできる。 ただその大量購入して他の目的で利用するという話は、これは本来薬として扱うんじゃなくて、用途外利用という形でですね、買っちゃいけない方が買うわけでありますから、こういう物に対しての防御策っていうものは、これは一般の薬店でありますとかですね、チェーンドラッグストアなんかでも同じようなことを防いでいかなきゃいけないわけなので、ネットで売ると決まったわけではありませんが、今現状売っているわけですよね。今売っている、ネットの中でもそういう物は本来買っちゃいけない人達が買っているわけですから防いでいかなきゃいけないんで、そういう物に関してはネットの方々は一定量購入しているよっていうのがある程度は確認できるんじゃないかっていうこともおっしゃられるわけであって、それはそういう仕組みができればある程度は防げるのかなというふうに思いますが、それはできればですよ。だからそういうことも含めて、調整が全て着いた後にですね、そういう議論っていうのはこれからやっていかなきゃいけないわけですよ。
だからこの調整が着いたら全てが終わるわけではないので、その後本当に今言われたようないろんな趣旨の問題をどう防いでいくかということを技術的に考えていかなきゃいけないという大きな仕事があることは間違いないです。 ただまだ、そこに行くまでの調整段階で、そこにまだ入れないというのが今の現状であるというふうに御認識いただければありがたいと思ってます。
どうも、第一類だけではなく、(指定)第二類の依存性や乱用の問題があるのものについても検討の俎上となるとも読み取れるんですけどね。
しかし、「条件作りとか安全性の担保っていうのについて、甘利大臣の下で決める」って情報はすごいですね。厚労省も情けないですね。.
それと、次のやり取りも注目
(記者)
先ほどの話の中で、今、一般用医薬品の販売に関してはコメントすることができないと話をしてても、場合によってはこれ、インターネット販売については例えば医療用薬品の方に引き戻すとかそういった判断というのは選択肢としてありうるんでしょうか。
(大臣)
これ、例えば2類なんかを医療用に戻すってのはちょっと技術的にどうなのかなと。なかなか難しいところがあるでしょうけれども。スイッチに関しては安全性を検証しているというようなルールになってますので、一般用医薬品になじまないってことになれば、それは戻すというのは理論上はあり得るだろうとは思いますけれどもね。検証結果も副作用が非常に大きくて一般商品としてなじまないということになれば、一般用医薬品としてなじまないということになれば、そういうことは理論上はあるのかなというふうに思いますけれども。
前後関係を見ると、「処方せん薬に戻す」という話はこの記者から出たものが独り歩きしたみたいですね。(どこの社の記者がこんな質問をしたんだろう。日経あたり?)
ケンコーコム他の最高裁勝訴判決では、2社に薬事法施行規則の規定にかかわらず、第一類・第2類医薬品の郵便等販売を行う権利を認めている訳であり、さらに判決理由のなかで憲法22条1項による職業選択の保障は職業活動の自由の保障も包括していると判断されており(昭和43年最高裁判例)、薬事法施行規則はケンコーコムの職業活動の自由を制約するもので違法とされているように考えます。
ということは、新たな販売ルールを作ってケンコーコムの職業活動の自由を制約しようとした場合、今度は新たな薬事法の合憲違憲訴訟は必至ということになります。少なくとも合憲違憲の最高裁判決が出るまでの数年?はケンコーコムの市場独占状態が維持されることになりますね。
ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司のやり取りですが、これは必見です。(3:10あたりから)
薬販売のネット解禁は正しい判断と言えるか
(ビデオニュス ドットコム 2013.06.08)
http://www.videonews.com/news-commentary/0001_3/002808.php
メディアにほとんど報じられなかった、慎重派記者会見の声や、海外特派員協会でのケンコーコムの後藤氏の講演での動画も収録されています。
お二人のやり取りには非常に同意できるところがあります。
宮台真司氏のコメントも手厳しいです。
・対面販売の実効化がされていない・(店頭販売にはネット以上のものが感じられない)
・特定の場所に住んでいいる人が不便を強いられるのはおかしい
・どんな副作用があるのかということに関心が低い人への対応が課題
(いちばん手厳しかったのは、42:15あたり)
僕はネットでくすりの情報を見ることが多いんだけど、各国の薬事行政の下でそれぞれの薬がどう扱われているのだとか、学会での危険についての評価が学説的にどう変遷していていったのか実はネットで調べられるんですよ。そんなことを薬剤師が知っていると思えない。特殊な薬については得意かもしれないけど、最先端の学会での学説がどうなっていて、どういう変更から成り立っているかはむしろネットでも調べられるんですよ。(~やっぱり薬剤師が問題なんですねといいつつ、最後は薬剤師にエール)
チェーンドラッグがきちんとやってますよといっても、こういう評価なんですね。
やっぱり、効率性や販売側の事情が優先する(対面)販売の現状。
(専門家の常駐とか、セルフ販売の是非とか)
それと、昔から言われている、あらゆる地域にどう薬を供給するかという問題。
(利益が上がらない場所には出店しないしね)
さらに、一般用医薬品の副作用のリスクへの関心(くすりとどうかかわるか)を高めてこなかった厚労省の問題。
(厚労省のウェブサイトに行っても、生活者向けのくすりに関する一般的な情報がほとんどないしね)
そして、今何が問題になっているかに関心が低い薬剤師の問題。
本当に心に突き刺さるやりとりです。
私は県庁所在地の市の中心部から20km以上離れた田舎町で薬局をやってます。そこから山の田舎道に沿って15kmとか20kmって間隔で薬店が2件あります。利益がそんなに上がらなくても頑張ってやっています。こう言う地域はコンビニすらありません。ネットで便利になるかと言うと市内より1日配達が遅れる可能性があります。現に調剤の配送がそんなもんです。急配って急がせても2時間とか3時間かかります。
ごく一部でしょうけど「離島」ばかり言われていますが本当の過疎地域への配慮がないと思います。
こういう地域は市町村の援助で過疎地域の診療所があります。
でも薬剤師会にそんな話をしても全く人事です。
>効率性や販売側の事情が優先する
これはドラッグストアの話ですよね。
薬剤師が開設者であれば違うと思います。
昔からのパパママ薬局を調剤に誘導し潰してきた日薬と厚労省の四分の一世紀の功罪でしょうね。
どなたか忘れましたが薬剤師に必要なのは原点回帰だと思うと。本当にそう思います。
サラリーマン薬剤師ばかりでは自分で何かをやらなければ!とは考えないのではないでしょうか?
何もしなくても休みと給料がもらえ、逆に余計な事を言えば会社の不利益なると排除されかねません。
今回の成長戦略、医師会に対しても(すみません)診療情報は宝の山と信じられない事を言ってます。
健診も含め診療報酬のデーター分析を金に換え個人の健康情報を金に換え、国民の健康を守ると言う建前で国民の自由を奪おうとしてると思います。
ネットはもちろん便利で宝の山です。
でも妄信し過ぎでは無いのか?と首相に問いたいですね。
医療はあくまでも生身の人間に対してであり、人間には心があります。
長文失礼致しました。
もう一度冷静に考えてみたんですけど、最後の「やっぱり薬剤師が問題なんですよね」という部分はどうしても引っかかりました。
ぼんたさんがご指摘されている通り、薬剤師が経営者であれば、必要な医薬品の供給のために、日々地域のために何が必要かということを真剣に考えているので、「薬剤師が問題なんですよね」というのはむしろ失礼ではないかと思いました。
実効ある対面販売をと言っていますが、情報提供できるような店舗づくりになっていなければ、できませんよね。
通路に小さいショーケースの中に第一類を入れて、専門家がそこに張り付いてはいないというところを「情報提供場所」と称している店舗も見たことがあります。
結果的にレジで説明ってことにもなりますが、多くのレジ待ちのお客さんの前で、時間をかけてなんて説明できるわけない。
これって、薬剤師の責任ではありませんよね。
私は、薬剤師ではなく、薬を利益が得られる商材と考え、いかに効率的に多く販売するかに群がる人たちが問題なのではないかと思いました。
そして、こういった群がる人たちの言い分だけを取り入れ、対面(ただ情報提供すればいいというものではない)という従来までの販売スタイルを形骸化させるだけでなく、製薬メーカーに配慮して、一般用医薬品の潜在的なリスクについて生活者に問いかけることがなかった厚労省の責任も大きいと思います。
厚労省には、本当の意味でのセルフメディケーションを推進しようという考えはないんですよ。
いつも拝見させていただいております。
リスファクスから転載させていただきます
薬剤師問題議員懇談会・伊吹会長「常に新しいものを」
反ネット販売をかかげる日薬の記念式典で
薬剤師問題議員懇談会
会長
伊吹文明氏
現衆議院議長で、薬剤師問題議員懇談会会長の伊吹文明氏が9日、一般用医薬品のインターネット販売に強く反対する日本薬剤師会の記念式典でスピーチを行った。全文は以下のとおり。
※書き起こしにあたっては、必要最低限の編集を行っています。
———————————————————–
日本薬剤師会の120年の歴史は、患者や健康を心配している国民と向きあい、地域や医療機関で努力してこられた皆さまの先輩・先生方の120年であったと思います。また、薬剤師の皆さま方が使命感や誇りを持ってお仕事ができるように努力された、歴代役員の皆さま方が積み重ねた120年でもあります。これからも国民のためにどうぞよろしくお願いしたい。
私は今日、薬剤師問題議員懇談会会長として皆さま方の「同僚」としてここへ参っておりますので、式辞はあえて作っておりません。私たちはずっと一緒に日本の医療を守るため、その中でも特に、薬剤師の皆さまが果たしていただく役割を守るために努力して参りました。安倍総理もまた、この薬剤師問題議員懇談会の会員でありますし、かつては自由民主党の当時の社会部会長、今の厚生労働部会長として、薬剤師問題に取り組んでいただいた方でございます。
今、成長戦略の一環として、インターネット販売の問題が大きくクローズアップされております。人間の成すことですから、長所もあれば短所もございます。長所は必ず短所に通じます。「雄弁」といわれる方は、別の人が見れば「おしゃべり」ということになりますし、「慎重」な人や「無駄をしない」人が、「グズで何にも決められない」人と見られることもあるわけです。インターネット販売にともなう利用者の利便という長所を、最大限に活かしながら、失敗の無いよう短所をおさえていかなければならない。薬剤師や登録販売業者の先生方のような有資格者以外、端末の開設は許されていません。有資格者かどうかの識別方法、今までインターネットに馴染みのなかった薬店・薬局の方々に端末を利用していただく方法、また、その助成措置をどうしていくのか―。それは田村厚生大臣にかかっているといえます。
われわれは、大切なことを伝統として守りぬくと同時に、常に新しいものを付け加えて生きていかねばなりません。国民のために、患者のために皆さま方が何を成せるか、これをわれわれ薬剤師問題議員懇談会はご一緒に守り抜いてまいりたいと思います。今後の日本薬剤師会のご発展を心からお祈りして、ごあいさつといたします。
長文失礼しました。
どの程度の転載かわかりませんが、RISFAXの著作権にも配慮して下さいね。(23:29 追記)
WEB掲載されていましたね。
薬剤師問題議員懇談会・伊吹会長「常に新しいものを」
反ネット販売をかかげる日薬の記念式典で
(出会いDI)
http://www.risfax.co.jp/didi/didi.php?id=274
日薬もこういった時期の下に、記念式典を行ったんですから、来賓一人一人からどのようなお言葉を頂いたのか、会員に示して欲しいものです。
RISFAX配信です。
スイッチ直後品目・劇薬は「新分類」で
政府内に「第0類」構想、医療用とOTC薬の中間カテゴリー新設も
(RISFAX 2013.06.11)
http://www.risfax.co.jp/risfax/article.php?id=41502
じゃあ今までの「第1類」というのどういう位置付けだったんでしょうね。
Pharmacist Only Meidicines (要薬剤師薬)という名称の方がいいのでは。
概ね同意できますが、海外の状況を考えれば、コデイン類やプソイドエフェドリンもこの範疇に入れて欲しいですね。
そうなると、登録販売者の店舗だけだと多くの風邪薬などが売れなくなるけど、大包装の販売制限を検討すればいいと思う。(ネットも同様)
「やっぱり薬剤師が問題なんですよね」
ほかの薬剤師用掲示板で、ドラッグストアーに勤めた未経験薬剤師さんのコメントとして、
経験者と一緒に勤務するはずが、一緒だったのは1日目だけで2日目からは一人で勤務していた。法律上は薬剤師が一人いればokなんですが、やっぱり薬剤師が問題なんですよね。
昨日、深夜0:00から放送されたNHKのニュース解説番組です。(放送内容がデキストになっています)
時論公論 「薬のネット販売 安全をどう確保するのか」
(2013年06月12日 (水) 0:00-0:10放送)
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/158648.html
(一部引用させて頂きました)
安全対策を考える上では、ネット販売ゆえに心配される問題と、店頭販売も含めた問題に分けて検討する必要があると思います。
海外ではネットに限らず、店で販売する場合でも、薬物依存や乱用につながる成分が含まれている薬を規制している国があります。必要最小限の量にとどめる小包装にしたり、一度に販売する個数に上限を設けたり。日本でも、こうした薬をどう販売するか、改めて考える必要があります。
薬を使う人がどんな症状を訴え、他の薬を飲んでいないか、アレルギーはないかなど、丁寧に聞き取ることが必要です。そうでなければ、その人にあった薬を選ぶこともできないからです。一類の薬は情報提供が義務付けられていますが、状況を聞き取ることも義務化してはどうでしょう。
イギリスやオーストラリアなどでは、薬剤師が地域住民の健康管理を支援する役割を担っているので、相談に来た人から丁寧に話をきき、何をどうアドバイスするか、徹底した教育が行われています。ちなみに薬剤師がそうした対応をしている国では、薬のネット販売の利用者はごくわずかで、信頼できる薬剤師がいる薬局で、薬を買う人がほとんどだということです。
今後検討されるべき課題が整理されていると思いました。
なお昨日の夕方には、ラジオでも同様の解説が行われています。
ラジオ時論公論「薬のネット販売 安全をどう確保するか」
(2013.06.11 18:00台に放送)(録音)
http://www.nhk.or.jp/hitokoto/sound130611.html
チェーンドラッグストア協会は案の定、容認に舵を切ったそうです。(自粛解除ってのも変)
薬ネット販売:ドラッグストア協会も解禁
(毎日新聞 2013.06.14)
http://mainichi.jp/select/news/20130615k0000m020062000c.html
薬ネット販売の自粛解除 ドラッグストア業界団体
(日本経済新聞 2013.06.14)
http://s.nikkei.com/12tgFzv
当然ながら、チェーンドラッグストア協会も「来週中にもガイドラインを公表したい」と対策を急いでいるとのこと。
日薬も反対の立場を貫いてロビー活動をするのも必要だと思いますが、もちろん独自のガイドライン案は作成してますよね? もししていなければこれは大変なことです。
もし独自のガイドラインを決めてなければ、結局はチェーンドラッグストア協会やネット販売業者の都合のいいものになってしまいますよ。
登録販売者制度を盛り込んだ改正薬事法の二の舞にならないように。
ルールが決まってから「解除する」というのならともかく、まあ日薬もよくこんな団体とこれまで協調していたかと思いますよ。
日本チェーンドラッグストア協会(http://www.jacds.gr.jp/)の独自のガイドラインが、7月2日にようやくアップされました。
業界自主基準「医薬品ネット販売ガイドライン」
http://www.jacds.gr.jp/netsales/guideline0702.pdf
但し、このガイドラインは、新法令施行までの間の基準であり、新法令の内容が決定するまでの暫定的なものですが、基準をクリアしたものについては、適合店として独自のロゴマークの表示が可能になるそうです。
ネット販売基準適合店リスト
http://www.jacds.gr.jp/netsales/index.html
ガイドラインで目に留まったところとしては、
・販売及び授与に関する情報交換は、サイト画面での処理及び電子メールでも可能だが、双方向で意思疎通ができる電話による問い合わせができる体制を整備しておくこと。
・副作用の疑いがある場合には、薬事法の規定に基づき、副作用等の報告を行うこと。
・購入制限が必要な医薬品は、その医薬品と数量を各社で決定し、表示すること(特にブロン液は3本までとするなど)。ただし、通知などで「販売量は原則として一人1個」など、販売個数制限が設けられている医薬品は、当該個数の範囲内に制限すること(販売個数制限がなくても、リスクの高い医薬品はリスク区分に関わらず、各社の判断で、適正な個数制限を設定すること)。
・医薬品のネット販売に関する事故、事件、問題に関する情報をJACDS 対策本部に報告すること(JACDS 会員企業(自社)、非会員企業(他社)を問わず、ネット販売による問題が発生した場合、またはそのような情報を得た場合には寄せ下さい)。
PNBの記事などを見ると、日薬は反対の立場を貫くことだけを優先して、独自のガイドラインを検討しているように見えません。
厚労省がきっといい案を提示してくれると思っているようですが、これまでの検討会で無策だったことを考えると、結局はこういった業界の自主基準がそのまま採用になってしまいます。
本当にいいんですかね?
既に報じられていますが、具体的な販売ルールを決める検討会が8月15日に開催されます。若干構成員の入れ替えが行われていますね。
第1回一般用医薬品の販売ルール策定作業グループの開催について
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000014653.html
一方、国会も海外調査団を派遣するそうです。
衆院厚労委 再生医療とネット販売で「海外視察」を実施
(RISFAX 2013.08.09)
http://www.risfax.co.jp/risfax/article.php?id=42070
日本と同じような状況のフランスも訪問して、薬剤師会などからヒアリングする予定とのことですが、日薬だって薬剤師会ルートで聞き取りが可能であり、独自の情報発信もできたはずでは?
TOPICS 2013.06.25 フランスでの医薬品ネット販売のルールが告示
元記事で紹介した下記厚生労働科学研究の報告書全文がアップされています。かなり興味深い内容です。余裕があったら記事にする予定です。(とりあえず、内容についてツイートしていきます。スクロールして、下の方にPDFファイルがある)
セルフケア・セルフチェックを支援する医療提供体制と一般用医薬品の役割に関する研究
(平成24年度 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究)
http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=201235032A