安倍首相がインターネットによる一般用医薬品の販売を解禁するとの政府見解を表明して1か月余りが経過しましたが、日本社会薬学会(http://shayaku.umin.jp/)は8日、6月29日付で、安倍首相、田村厚労相、稲田行政改革担当相あてに、意見書を提出したことを明らかにしています。
一般用医薬品販売制度に関する意見書を提出
(日本社会薬学会)
http://shayaku.umin.jp/youbou/index.html
(コピペさせて頂きました。注目部分は青字にさせていただきました。すみません。)
2013年6月29日
内閣総理大臣 安倍晋三 殿
厚生労働大臣 田村憲久 殿
行政改革担当大臣 稲田朋美 殿
日本社会薬学会
会長 宮本 法子
一般用医薬品販売制度に関する意見書
私たちは、医薬品など生命関連物質と人間の健康との社会的なかかわりの中で、総合的に研究・教育を発展させることにより、人間の生命と健康の維持・増進に寄与することを目的に活動している学会です。
一般用医薬品のインターネットなどによる販売を解禁するとの政府の見解に対し、意見を申し上げます。
インターネット販売の規制を省令レベルで行うのは不適切との平成25年1月の最高裁判所の判決を受けて、厚生労働省の「一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会」が、2月から5月末までに11回開催するという過密スケジュールで持たれました。検討会ではインターネット販売の解禁派、反対派の意見が折り合わず、5月31日に両論併記することで一旦検討会を閉じることになりました。
しかし、検討会報告書が確定するのを待たず、安倍首相は5月5日、アベノミクス第3の矢の成長戦略の目玉として、インターネットによる一般医薬品の販売を解禁すると発表しました。検討会の最終開催から5日しか経っていません。
このことは第1に、過重なスケジュールの中で開催されてきた有識者による「一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会」を全く無視するに等しい行為で、決して許されないことです。
第2に不都合な点は、一般用医薬品のインターネット販売の解禁を経済成長戦略の目玉とされている不都合です。医薬品には副作用があり、有効性のメリットが副作用というデメリットを上回ると期待されるときにだけ用いられる特殊な商品で、使わないで済むならそれに越したことはないものです。したがって、医薬品は決して経済戦略に乗るものではなく、経済成長政策の目玉とすることはその適正な使用にひずみをもたらす危険性があります。
一般用医薬品には、安全性を考え、リスク分類などを実施し、社会的規制を行ってきた経緯があります。必要最小限度の規制はもちろん必要であり、それをないがしろにすることは許されません。
薬事法第25条は、一般用医薬品は薬剤師その他の医薬関係者から提供された情報に基づいて需要者が自らの選択により使用されるものとしています。このセルフメディケーションを推進するためには、国民の自己決定権をいかに支えるかが課題で、大所高所の立場から国民のためのサポート体制、啓発、薬育をしていかねばなりません。今後一般用医薬品のうちの高リスクのものについて検討を継続すると報道されていますが、国会の場なども含めて慎重な検討が望まれます。
なお、これに関連して気がかりなことがあります。これら高リスクのものについて検討し、インターネット販売に適さないものがあればそれらを医療用医薬品に戻せば、一般用医薬品のインターネット販売の「100%解禁」が可能となるとも報道されていることです。
これは本末転倒で極めて不適切です。もちろん、医療用医薬品、一般用医薬品、医薬部外品などについて、縦断的なリスク分類の再検討を行い、必要があれば分類の変更をすることは理に適っています。しかし、「インターネット販売ありき」でそれに適さない一般用医薬品を一括して医療用医薬品に戻すなどは、あまりにも短絡的思考です。先にセルフメディケーションの円滑な推進に向けて国民の自主決定権をサポートする体制の重要性について記したのはそのためです。
最後に、医薬品が簡単に買えることで、過量服薬、薬物乱用が安易にできてしまうようなことが無いよう、インターネット販売でも店頭販売でも一定の規制は必要です。英国などではパッケージ容量規制などを通じそうした規制がなされています。
私たちは、検討を重ね、以上の見解に到達しましたので、「意見書」として提出するものであります。
以上
日薬のこれまでのステートメントとは異なる視点で、今回の決定までのプロセス含め問題点を指摘しており、全て同意できるものです。
特に、最後の部分の「医薬品が簡単に買えることで、過量服薬、薬物乱用が安易にできてしまうようなことが無いよう、インターネット販売でも店頭販売でも一定の規制は必要」という部分については、ネット販売の具体的なルール作りとは別に検討する必要があると思います。
一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する
これまでの議論の取りまとめ(報告書)と今後の対応について
(日本薬剤師会 2013.06.04)
http://www.nichiyaku.or.jp/action/wp-content/uploads/2013/06/130604_01.pdf
「日本再興戦略」(成長戦略)に対する日本薬剤師会の見解
~ 一般用医薬品のインターネット販売に関して ~
(日本薬剤師会 2013.06.14)
http://www.nichiyaku.or.jp/action/pr/2013/06/pr_130614.pdf
なおネット販売については、民主党・新緑風会の辻泰弘参院議員が、6月25日付けで質問主意書を提出しています。(答弁書では例によって、「お尋ねについて一概にお答えすることは困難」を連発。答弁書の決め文句?)
一般用医薬品のインターネット販売の解禁に関する質問主意書
(参議院 平成25年6月25日提出 答弁書受領7月2日)
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/183/meisai/m183142.htm
関連情報:TOPICS
2013.06.30 不正使用や依存の可能性がある医薬品のリスト(英国)
2013.06.06 医薬品ネット販売慎重派に残された時間は3か月
2013.04.16 OTC薬の大量・頻回購入の対象はブロンだけではない
2012.09.14 日本人はOTCの副作用や依存性はあまり気にかけない?
2012.07.30 OTC薬の乱用・依存の実態(厚生労働科学研究)
2013年07月09日 12:11 投稿
食品に関して、消費者の理解を得るため、内閣府に食品安全委員会を設置し、時間をかけてコンセンサスを得る努力をしています。一般用医薬品は健康食品以上に副作用の危険性がありますので、現段階でのインターネット販売解禁は国の責任が問われます。
昔まだインターネットなどのない時代、プロン液やトニンシロップという咳止めシロップの乱用が問題になり、薬剤師としての良心を持たない極一部の薬剤師が経営する薬局店頭でのまとめ売りの実態がマスコミに暴かれました。
各製薬メーカーは出荷制限を掛けたりしましたが、結局は他店分を融通・調達したり、シロップが出荷制限されると、プロン錠などの鎮咳用錠剤までまとめ売りする始末。
咳止めに限らず、ナロン顆粒やセデス錠などの鎮痛剤もずいぶんと乱用されておりましたよね。
プロン液30本100ケース、トニンシロップ1箱30本100ケースを毎月売ってしまう薬局が4-5軒あって、製薬メーカーのセールスは其れなりに助かっていました。
乱用者にまとめ売りするような薬剤師には、薬剤師資格停止などの強い抑止力が必要だったんでしょうが、店頭での対面販売で乱用者にまとめ売りしても、乱用者はどこの誰だか分らないし、レシートさえ発行しなければどこの店で買ったかも分らない。
対面販売は絶対安全などというのは夢物語でしかありません。
Atomさん、確かに、20年位前に外資系製薬会社の同僚がストレス解消のため、煙草と咳止めシロップを愛用していたことを思い出しました。ただ耐えるだけのストレスが多い大手企業の職場環境にも問題があります。
幸雄さん 今では喫煙者の肩身が狭いご時世ですが、10年ぐらい前までは会社の販売会議といえば紫煙が漂っているのが当たり前でしたね。タバコと咳止めシロップでストレス解消というのは私の周りにはいませんでした。
私の元同僚たちはもっぱら食欲でストレスと戦っていましたね。ストレスで胃が痛くなり食欲がなくなるか、反対に過食的に食欲が増すかでした。ダブルのトレンチコートが2年目にはシングルになり、3年目には前が合わなくなるほど食欲でストレスを紛らわす同僚もいました。
仕事のストレスは、避けられないのでうまく発散していくよう心がけています。