PMDA の「医薬品に関する評価中のリスク等の情報について」が更新され、 漢方薬3処方について、近く副作用として「腸間膜静脈硬化症」が追記される可能性があることが明らかになりました。
医薬品に関する評価中のリスク等の情報について
http://www.info.pmda.go.jp/riscommu/riscommu_list.html
(添付文書変更指示が行われると、このページからこの情報は削除されます)
ググったところ、昨年の日本中毒学会でも副作用事例が報告されているとのことで、漢方薬の長期服用者は留意が必要のようです。
漢方薬の副作用「腸間膜静脈硬化症」に要注意
筑波大学名誉教授・内藤裕史氏が対策の重要性を強調
(MT Pro 2013.08.02)
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1208/1208011.html
(ログインできない方は)
漢方薬の副作用に注意! 肺炎、腸間膜静脈硬化症など
筑波大名誉教授が警鐘
(あなたの健康百科 2013.08.15)
http://kenko100.jp/articles/120815000709/
上記によれば、腸間膜静脈硬化症(idiopathic mesenteric phlebosclerosis)(静脈硬化性大腸炎
phlebosclerotic colitis ともいうらしい)というのは、腸間膜静脈の線維性肥厚・石灰化によって起こる虚血性の腸病変で、腹痛、下痢(2週間~6年)、嘔吐などを主症状として緩徐に発症するそうです。
山梔子の主成分ゲニポシドが、下部消化管で腸内細菌により分解されてゲニピンとなり、アミノ酸と反応して生じた青色色素が大腸内壁に沈着することが原因ではないかとされています。
Mesentericphlebosclerosis associated with long-term oral intake of geniposide, an ingredient of herbal medicine.
(Aliment Pharmacol Ther. 2012 Sep;36(6):575-86.)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22817400
ググると、関連性が疑われる報告がいっぱいでできます。
4年間の経過観察を経て手術を余儀なくされた特発性腸間膜静脈硬化症の1例
(第67回日本消化器外科学会総会一般演題)
http://www.myschedule.jp/jsgs-toyama67/detail.php?sess_id=3314
漢方薬長期内服者に発症した特発性腸間膜静脈硬化症の1 例
(日本消化器病学会雑誌 109(9) 1567-1574,2012)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nisshoshi/109/9/109_1567/_article/-char/ja/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nisshoshi/109/9/109_1567/_pdf
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22976226
漢方薬の長期服用歴を認めた腸間膜静脈硬化症の 4 例
(日本大腸肛門病学会雑誌 63(6), 389-395,2010)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcoloproctology/63/6/63_6_389/_article/-char/ja/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcoloproctology/63/6/63_6_389/_pdf
漢方薬が関与したと考えられる若年女性発症の特発性腸間膜静脈硬化症の1例
(日本消化器内視鏡学会雑誌 54(3), 455-459,2012)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gee/54/3/54_3_455/_article/-char/ja/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gee/54/3/54_3_455/_pdf
特発性腸間膜静脈硬化症の病態と鑑別診断
(日本消化器内視鏡学会雑誌 54(3), 415-423)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gee/54/3/54_3_415/_article/-char/ja/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gee/54/3/54_3_415/_pdf
第98回日本消化器病学会開催
(週刊医学界新聞 2012.06.04)
http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02980_04
サンザシでも報告があるようです。
「健康食品」の安全性・有効性情報
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail636.html
今回、添付文章の改訂が行われそうなのは、黄連解毒湯と加味逍遥散、辛夷清肺湯の3処方のだけのようですが、山梔子は清熱薬として多くの処方に配合されており、長期服用しそうな、茵ちん蒿湯や温清飲、防風通聖散や荊芥連翹湯、加味帰脾湯、清上防風湯、五淋散(いずれも配合が少量の処方もあるけど)は今回、添付文書の改訂の対象となることはないのでしょうか?
参考:
静脈硬化性大腸炎(phlebosclerotic colitis)
(東京レントゲンカンファレンス 2012.01.26)
http://www.jcr.or.jp/trc/333/333_7_2.html
8月6日 21:00、2014年6月14日 J-stage へのリンク追加
2013年07月19日 17:59 投稿
防風通聖散なんてやせ薬で宣伝してますけど。
こう言うのこそネットで気軽に買いたい商品ですよね。
そもそも医科で証を考慮せず使われる現状にも問題があると思います。清熱の薬を熱がなくなってからも飲んでたら弱い臓器が冷えすぎて副作用が出て当たり前と思います。
漢方は何だかんだ言っても安全だって思い込みがあって一応合ってそうなら出したらそのままってのも多いですし。
ちゃんと漢方の専門的知識を持った医師に扱って欲しいです。
厚労省より添付文書改訂の指示が出ました。
使用上の注意改訂情報 平成25年度指示分(PMDA)
http://www.info.pmda.go.jp/kaitei/kaitei2013.html
黄連解毒湯 加味逍遙散 辛夷清肺湯
(使用上の注意改訂情報 平成25年8月6日指示分)
http://www.info.pmda.go.jp/kaitei/kaitei20130806.html#14
http://www.info.pmda.go.jp/kaitei/notice/20130806no14.pdf
[副作用] の「重大な副作用」の項に
「腸間膜静脈硬化症:
長期投与により、腸間膜静脈硬化症があらわれることがある。腹痛、下痢、便秘、腹部膨満等が繰り返しあらわれた場合、又は便潜血陽性になった場合には投与を中止し、C T、大腸内視鏡等の検査を実施するとともに、適切な処置を行うこと。なお、腸管切除術に至った症例も報告されている。」
を追記する。
報告書を見ると、過去3年間に
黄連解毒湯で、関連症例が6例(うち、因果関係が否定できない症例4例)
http://www.info.pmda.go.jp/kaitei/file/20130806frepno14_1.pdf
加味逍遙散で、関連症例7例(うち、因果関係が否定できない症例6例)
http://www.info.pmda.go.jp/kaitei/file/20130806frepno14_2.pdf
辛夷清肺湯で、関連症例6例(うち、因果関係が否定できない症例4例)
http://www.info.pmda.go.jp/kaitei/file/20130806frepno14_3.pdf
で認められたそうです。
ツムラのHPに添付文書の改訂情報が出ているのですが、示された症例を見ると、いずれも10年を超える服用なんですね。
黄連解毒湯(10年)
http://www.tsumura.co.jp/password/m_square/products/t_kaitei/2013.8/015oshi.pdf
加味逍遙散(10年)
http://www.tsumura.co.jp/password/m_square/products/t_kaitei/2013.8/024oshi.pdf
辛夷清肺湯(24年)
http://www.tsumura.co.jp/password/m_square/products/t_kaitei/2013.8/104oshi.pdf
漢方に副作用がないといっても、辛夷清肺湯を24年間も続けて服用というのもどうなのでしょう。
小太郎製薬のMSに日本漢方生薬製剤協会が監修したリーフレットをもらいました。
よくまとまっているのですが、WEBには今のところアップされていないようです。PDF化したのですが、画像などもあるのでとりあえず重要な部分について抜粋します。突発性腸間膜静脈硬化症
http://www.nikkankyo.org/qa/take_kampo/130926/IMP.pdf
(2014.06.14追記)
〈突発性腸間膜静脈硬化症と漢方薬・診断と対応〉
1.長期服用例( 数年から 数十年) で発症
ほとんどの患者さんで10 年以上の漢方薬の服用歴のあることがわかっています。
漢方薬の使用にあたっては、漫然と投与しないでください。
2.初期症状あるいは便潜血陽性等の兆候を見逃さないでください
漢方薬を長期間服用されている患者さんで、腹痛、下痢、晦気・咽吐などの出現あるいは便潜血陽性(無症状)などの場合には、精密検査をしてください。
3.患者さんに対する注意事項
原因不明の腹痛、下痢、便秘、腹部膨満感等が.続く場合には、(直ちに)受診するよう、指導をお願いします。
4.診断のために大腸内幌鏡検査、腹部単純X 線・CT 検査、生横等を実施してください
5.確定診断がついた場合には薬剤投与の中止あるいは経過観察をお願いします。
経過観察時には大腸内視鏡検査を定期的(1 回/1~2 年程度)に実施してください。また、薬剤投与の中止で症状あるいは大腸内視鏡・生検所見の改善が見られたとの報告があり、一般的に予後は良好です。
6.治療指針(明確な治憲法は確立しておりません)
原則薬剤投与の中止あるいは経過観察をお願いします。
症状が軽度である場合には保存的治療が中心となります。薬剤投与を継続しでも悪化しないとの報告もありますが、進行、重篤化(イレウス状態) し、腸管切除術の適用となる場合があります。
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茵ちん蒿湯、温清飲、黄連解毒湯、加昧帰脾湯、加昧逍遥散、荊芥連翹湯、五淋散、柴胡清肝湯、梔子柏皮湯、辛夷清肺湯、清上防風湯、清肺湯、訪風通聖散、竜胆瀉肝湯
茵ちん蒿湯について、PMDAに評価中のリスク情報がアップされました。
元記事で指摘しましたが、黄連解毒湯と加味逍遥散、辛夷清肺湯の3処方に加え、茵ちん蒿湯でも症例があったようです。(近く、添付文書の改訂が行われる)
医薬品に関する評価中のリスク等の情報について
http://www.info.pmda.go.jp/riscommu/riscommu_list.html
(添付文書変更指示が行われると、このページからこの情報は削除されます)
なお、上記コメントで紹介したリーフレットが日本漢方生薬製剤協会のウェブサイトの漢方薬の服用に際してのページ(http://www.nikkankyo.org/qa/take_kampo.html)にアップされていました。
突発性腸間膜静脈硬化症
http://www.nikkankyo.org/qa/take_kampo/130926/IMP.pdf