一般用医薬品のネット販売などについて規定した、薬事法改正案が12日閣議決定し、国会に提出されています。
第185回国会(臨時会)提出法律案
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/185.html
薬事法及び薬剤師法の一部を改正する法律案
(平成25年11月12日提出)
1 医薬品の販売業等に関する規制の見直し
(1)一般用医薬品の販売方法に関するルールの整備
一般用医薬品のインターネット販売を認めることとし、
①厚生労働大臣は、一般用医薬品の販売方法に関する遵守事項を定めるものとする。
②第1類医薬品(リスクの高い一般用医薬品)の販売に当たっては、年齢、他の医薬品の使用状況等を確認するものとする。
③第1類医薬品(リスクの高い一般用医薬品)の販売に当たっては、継続使用者等が適正に使用すると認められる場合以外は薬剤師から購入者に対して、医薬品を適正に使用するための情報を提供しなければならないこととする。
(2)劇薬及びスイッチ直後品目の販売に関する安全確保のための仕組みの整備
劇薬及びスイッチ直後品目(医療用から一般用に移行して間もなく、一般用医薬品としてのリスクが確定していない薬)については、他の一般用医薬品とはその性質が異なるため、医療用医薬品(処方せんに基づき提供される医薬品)に準じた形での慎重な販売や使用を促すための仕組み(対面での販売)を設ける。
(3)その他
医療用医薬品(処方せんに基づき提供される医薬品)については、その効能・効果等において人体に対する作用が著しく、重篤な副作用が生じるおそれがあることから、医療従事者の積極的な関与の下で、慎重に販売するための仕組み(対面での販売)を設ける。
2 指定薬物の所持、使用等の禁止
指定薬物について、その所持、使用等を禁止し、違反した場合に罰則を科す。
内容的には、TOPICS 2013.11.03 の内容を条文化させたもので、これまでは省令で規定されたものなども薬事法の条文に盛り込まれています。また、「処方せん」の表記が「処方箋」に代わっています。(本サイトでは当面これまでの「処方せん」の表記にします)
ネットで販売が禁止されたものについては、新たに「要指導医薬品」というカテゴリーが新設され、販売方法などについて、法律で規制されています。(第一類の本来の趣旨はこれだったと思ったんだけど)
一方、調剤された薬剤(処方せん医薬品)の販売に対面義務が盛り込まれたことから、「どさくさに紛れて盛り込まれた」など、波紋を呼んでいます。(これについては別記事を立てます)
詳細は、法律案新旧対照条文のファイルを見ていただきたいのですが、気になった部分を抜粋します。
(調剤された薬剤の販売に従事する者)
第九条の二
薬局開設者は、厚生労働省令で定めるところにより、医師又は歯科医師から交付された処方箋により調剤された薬剤につき、薬剤師に販売させ、又は授与させなければならない。
(調剤された薬剤に関する情報提供及び指導等)
第九条の三
薬局開設者は、医師又は歯科医師から交付された処方箋により調剤された薬剤の適正な使用のため、当該薬剤を販売し、又は授与する場合には、厚生労働省令で定めるところにより、その薬局において薬剤の販売又は授与に従事する薬剤師に、対面により、厚生労働省令で定める事項を記載した書面(当該事項が電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下第三十六条の十までにおいて同じ。)に記録されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を厚生労働省令で定める方法により表示したものを含む。)を用いて必要な情報を提供させ、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わせなければならない。
2 薬局開設者は、前項の規定による情報の提供及び指導を行わせるに当たつては、当該薬剤師に、あらかじめ、当該薬剤を使用しようとする者の年齢、他の薬剤又は医薬品の使用の状況その他の厚生労働省令
で定める事項を確認させなければならない。
3 薬局開設者は、第一項に規定する場合において、同項の規定による情報の提供又は指導ができないとき、その他同項に規定する薬剤の適正な使用を確保することができないと認められるときは、当該薬剤を販売し、又は授与してはならない。
4.薬局開設者は、医師又は歯科医師から交付された処方箋により調剤された薬剤の適正な使用のため、当該薬剤を購入し、若しくは譲り受り調剤された薬剤を購入し、若しくは譲り受けようとする者又はその当該薬局開設者から当該薬剤を購入し、若しくは譲り受けた者から相談があつた場合には、厚生労働省令で定めるところにより、その薬局において薬剤の販売又は授与に従事する薬剤師に、必要な情報を提供させ、又は必要な薬学的知見に基づく指導を行わせなければならない。
(薬局医薬品の販売に従事する者等)
第三十六条の三
薬局開設者は、厚生労働省令で定めるところにより、薬局医薬品につき、薬剤師に販売させ、又は授与させなければならない。
2 薬局開設者は、薬局医薬品を使用しようとする者以外の者に対して、正当な理由なく、薬局医薬品を販売し、又は授与してはならない。ただし、薬剤師、薬局開設者、医薬品の製造販売業者、製造業者若しくは販売業者、医師、歯科医師若しくは獣医師又は病院、診療所若しくは飼育動物診療施設の開設者(以下「薬剤師等」という。)に販売し、又は授与するときは、この限りでない。
(薬局医薬品に関する情報提供及び指導等)
第三十六条の四
薬局開設者は、薬局医薬品の適正な使用のため、薬局医薬品を販売し、又は授与する場合には、厚生労働省令で定めるところにより、その薬局において医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師に、対面により、厚生労働省令で定める事項を記載した書面(当該事項が電磁的記録に記録されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を厚生労働省令で定める方法により表示したものを含む。)を用いて必要な情報を提供させ、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わせなければならない。ただし、薬剤師等に販売し、又は授与するときは、この限りでない。
2 薬局開設者は、前項の規定による情報の提供及び指導を行わせるに当たつては、当該薬剤師に、あらかじめ、薬局医薬品を使用しようする者の年齢、他の薬剤又は医薬品の使用の状況その他の厚生労働省令で定める事項を確認させなければならない。
3 薬局開設者は、第一項本文に規定する場合において、同項の規定による情報の提供又は指導ができないとき、その他薬局医薬品の適正な使用を確保することができないと認められるときは、薬局医薬品を販売し、又は授与してはならない。
4 薬局開設者は、薬局医薬品の適正な使用のため、その薬局において薬局医薬品を購入し、若しくは譲り受けようとする者又はその薬局において薬局医薬品を購入し、若しくは譲り受けた者若しくはこれらの者によつて購入され、若しくは譲り受けられた薬局医薬品を使用する者から相談があつた場合には、厚生労働省令で定めるところにより、その薬局において医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師に、必要な情報を提供させ、又は必要な薬学的知見に基づく指導を行わせなければならない。
(要指導医薬品の販売に従事する者等)
第三十六条の五
薬局開設者又は店舗販売業者は、厚生労働省令で定めるところにより、要指導医薬品につき、薬剤師に販売させ、又は授与させなければならない。
2 薬局開設者又は店舗販売業者は、要指導医薬品を使用しようとする者以外の者に対して、正当な理由なく、要指導医薬品を販売し、又は授与してはならない。ただし、薬剤師等に販売し、又は授与するときは、この限りでない。
(要指導医薬品に関する情報提供及び指導等)
第三十六条の六
薬局開設者又は店舗販売業者は、要指導医薬品の適正な使用のため、要指導医薬品を販売し、又は授与する場合には、厚生労働省令で定めるところにより、その薬局又は店舗において医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師に、対面により、厚生労働省令で定める事項を記載した書面(当該事項が電磁的記録に記録されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を厚生労働省令で定める方法により表示したものを含む。)を用いて必要な情報を提供させ、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わせなければならない。ただし、薬剤師等に販売し、又は授与するときは、この限りでない。
2 薬局開設者又は店舗販売業者は、前項の規定による情報の提供及び指導を行わせるに当たつては、当該薬剤師に、あらかじめ、要指導医薬品を使用しようとする者の年齢、他の薬剤又は医薬品の使用の状況その他の厚生労働省令で定める事項を確認させなければならない。
3 薬局開設者又は店舗販売業者は、第一項本文に規定する場合において、同項の規定による情報の提供又は指導ができないとき、その他要指導医薬品の適正な使用を確保することができないと認められるときは、要指導医薬品を販売し、又は授与してはならない。
4 薬局開設者又は店舗販売業者は、要指導医薬品の適正な使用のため、その薬局若しくは店舗において要指導医薬品を購入し、若しくは譲り受けようとする者又はその薬局若しくは店舗において要指導医薬品を購入し、若しくは譲り受けた者若しくはこれらの者によつて購入され、若しくは譲り受けられた要指導医薬品を使用する者から相談があつた場合には、厚生労働省令で定めるところにより、その薬局又は店舗において医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師に、必要な情報を提供させ、又は必要な薬学的知見に基づく指導を行わせなければならない
(一般用医薬品に関する情報提供等)
第三十六条の十
薬局開設者又は店舗販売業者は、第一類医薬品の適正な使用のため、第一類医薬品を販売し、又は授与する場合には、厚生労働省令で定めるところにより、その薬局又は店舗において医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師に、厚生労働省令で定める事項を記載した書面(当該事項が電磁的記録に記録されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を厚生労働省令で定める方法により表示したものを含む。)を用いて必要な情報を提供させなければならない。ただし、薬剤師等に販売し、又は授与するときは、この限りでない。
2 薬局開設者又は店舗販売業者は、前項の規定による情報の提供を行わせるに当たつては、当該薬剤師に、あらかじめ、第一類医薬品を使用しようとする者の年齢、他の薬剤又は医薬品の使用の状況その他の厚生労働省令で定める事項を確認させなければならない。
6 第一項の規定は、第一類医薬品を購入し、又は譲り受ける者から説明を要しない旨の意思の表明があつた場合(第一類医薬品が適正に使用されると認められる場合に限る。)には、適用しない
第五十七条の二(略) 第五十七条の二(略)
2 薬局開設者又は店舗販売業者は、要指導医薬品及び一般用医薬品(専ら動物のために使用されることが目的とされているものを除く。)を陳列する場合には、厚生労働省令で定めるところにより、これらを区別して陳列しなければならない。
- 薬局製剤(漢方薬を含む)の販売のハードルが高くなる?
- 要指導医薬品については従来の第一類とは異なる陳列方法が求められる可能性がある(空き箱による陳列禁止とか?)
- 依存性など販売数量などの考慮が必要な医薬品の定義がされなかった。(今後、省令で規定するにしても、おそらく該当品目やその根拠は何?ということでもめそう)
薬剤師法も改正があります。
(情報の提供及び指導)
第二十五条の二
薬剤師は、調剤した薬剤の適正な使用のため、販売又第二十五条の二薬剤師は、販売又は授与の目的で調剤したときは、患者又は現にその看護に当たつている者に対し、必要な情報を提供し、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない。
なお今回の法案(特にネット販売が認められなかったことについて)については、さまざまなブログ記事等が掲載されています。
これらを読むと、改めて薬剤師の仕事というものや「くすりとの関わり方」が一部の方々に理解されていないことを痛感させられます。
厚労省は薬のネット販売規制になぜこだわるのか
(ニューズウィーク日本版 エコノMIX異論正論 2013.11.12)
http://www.newsweekjapan.jp/column/ikeda/2013/11/post-757.php
医薬品ネット販売規制について思うこと
(マリンバの雑感 2013.11.08)
http://marinn.cocolog-nifty.com/mmm/2013/11/post-0319.html
以下 BLOGOS より
アベノミクスと医薬品ネット販売
http://blogos.com/article/73446/
なぜ三木谷社長は怒っているのか
http://blogos.com/article/73432/
大衆薬のインターネット販売 攻撃と防御:三木谷さんの立場と国の立場
http://blogos.com/article/73287/
「処方薬ネット販売禁止」はさすがにやり過ぎでしょ
http://blogos.com/article/73276/
関連情報:TOPICS
2013.11.12 一般用医薬品ネット販売のルールの落としどころ
2013年11月12日 23:25 投稿
28日午後の衆議院本会議で法案が可決され、参議院に送られています。
みんなの党は新たな規制強化だとして反対討論。
共産党はモールでの販売を懸念するなどの反対討論。
賛成討論の民主党は、産業競争力会議を巻き込んだことが問題だと指摘。
維新の会は賛成したものの、賛成討論で処方薬販売の検討を求めています
【衆議院インターネット審議中継】
2013年11月28日 (木)本会議
http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=43279&media_type=fp
厚生労働委員会での質疑は下記に動画がアップされています。医薬分業やエパデールスイッチの問題も取り上げられています。
2013年11月22日 (金) 厚生労働委員会 (5時間27分)
http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=43249&media_type=fp
2013年11月27日 (水) 厚生労働委員会 (6時間39分)
http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=43274&media_type=fp
12月5日の参院厚生労働委員会で質疑が行われたのち採決が行われ、原案通り可決されました.
秘密保護法の審議のあおりで民主党が出席を拒否し、質問が行われなかったのは残念です。
個人的にはこんな短時間での委員会の審議でいいのかとは思いますが。
録画がアップされています。26分30秒あたりから。
【参議院インターネット審議中継】
http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php
→動画へのリンク
その後、本会議に上程され可決されたそうです。
改正薬事法が成立 薬ネット販売の一部規制
(47NEWS 共同通信 2013.12.05 23:03配信)
http://www.47news.jp/CN/201312/CN2013120501002480.html