前記事で、薬事法改正案の内容を紹介しましたが、調剤された薬剤(処方せん医薬品)の販売に対面義務が盛り込まれたことでケンコーコムは今回の改正案に対し、「情報提供は必ずしも対面でなくてもインターネットを介してもできる」「処方薬のネット販売のルール作りの場がないまま、なし崩し的に全面禁止しようとしている」などと指摘し、処方せん医薬品についてもネット販売ができる権利があるとして、国を相手取り、ネット販売を行う権利を求める訴訟を東京地裁に提起しています。
訴訟の提起に関するお知らせ
(ケンコーコム 2013.11.12)
http://blog.kenko.com/company_ir/files/20131112_sosyou.pdf
医療用医薬品(処方箋薬)のネット販売を禁止する厚生労働省令は無効として、裁判を起こしたことになるので、薬事法が成立した時点で裁判そのものが継続されるかどうかはわかりませんが、上記プレスリリースの中にある、処方せん医薬品は医者の処方にもとづき薬剤師が調剤するものである点でリスクの性質が異なり、諸外国において郵送での販売が認められているので、ネット販売を禁止することは違憲無効であると考えておりますの部分が非常に気になりました。
訴状を見ていないので何ともいえませんが、処方せん医薬品は医師が説明した上で処方されるものであり、薬剤師はただそれを処方せん通りに渡すのが業務というように考えているようです。
12日の記者会見の動画はまだ見ていませんが、11月6日に行った楽天の記者会見でおおよその考えが示されてます。
(YouTube)
楽天 三木谷 医薬品ネット販売規制の問題に関する記者会見2013年11月6日
http://www.youtube.com/watch?v=zsbqqCG4ZpU
- (17分30秒あたり)
「薬を選択する自由」「薬を売る自由」 - (23分40秒あたり)
医師が処方した薬を受け渡すのが対面でなくてはいけないというのは時代錯誤 - (40分あたり)
ケンコーコムは処方せん薬のネット販売の準備をすすめている
個人的には、電子処方せんの導入や偽造医薬品対策など、環境が整えばネットでの処方せん医薬品の販売は将来的には可能だと思いますが、現時点ではインフラは整ったとしても、悪質業者が入り込むすきがあることや、そして何よりも、「医師が処方するものは絶対で安全」的な認識が示すように、「くすりとの関わり方」が一部の方々(特に医薬品ネット販売を推進する方々)に認識されていない現状では、対面義務化は現時点では政府としては当然の対応だと思います。
三木谷氏は、某紙のインタビューで「医療用医薬品は医師が対面で診断した上で処方するものだ。論理的に考えれば、薬を渡すときにもう一度対面する必要はない。医療用医薬品 のネット販売が可能になれば、薬をもらうためだけに通院し、病院で待たされる こともなくなる」とも答えています
ケンコーコムの考え(もしかしたら、ケンコーコムの考えが三木谷氏の発言となったのかもしれないが)も三木谷氏のこの考えを代弁したものとなっていますが、おそらく薬剤師では、こういった発言はまず出てこないと思います。
処方せん医薬品の販売(調剤とは言いたくない)がもはやビジネス化されてしまったことを考えると、当然の結果なのかもしれませんが、やはり保険医療制度や現場をよく知らない薬剤師ではない人が代表責任者というところが大きいのではないかと思います。(おそらく、保険医療制度自体もぶちこわしたいんだろうけど)
海外では多くの国で薬局の開設者は薬剤師です。これまで、そういったことにきちんと今まで向き合わなかったために、ついにこういった訴訟が起きたといっても過言ではありません。
一方で、ネット販売が認められた場合は、保険調剤の考え方も大きく変わることになると思います。そしてその時に課題となるのが、患者負担金の問題です。
現状の仕組みだと、処方せん受付枚数が多く、何もしなければ、算定額が低くなり、患者負担金が少なくて済む仕組みになっています。
当然ネット販売では、現在の考え方では薬剤服用歴管理指導料というのは算定できませんので、結果的に安くなり、それを逆手にとって安さをアピールするかもしれません。
次回診療報酬改定では、チェーン薬局への減額もささやかれていますが、私は同じような結果になるような気もします。
以前にも指摘しましたが、この際、薬局調剤における患者負担金については、薬価に対する定率負担(これも一律1~3割である必要はない)プラス技術料に関する定額負担にして、どこの薬局でくすりをもらっても同じ額になるような仕組みにしないと、「かかりつけ薬局」など、厚労省の思いとは違う方向になるような気がします。
医療用医薬品のネット販売権の確認求め、ケンコーコムが国を提訴
(日経DI 2013.11.12)
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/trend/201311/533561.html
関連情報:TOPICS
2013.11.12 薬事法改正案が国会に提出
2013年11月13日 00:58 投稿
>薬をもらうためだけに通院し、病院で待たされる こともなくなる
この部分は医師(会)がさほど熱心でないからスルーされたのでしょうけど、この問題に真剣に取り組んでいればかなり問題な発言ですね。医師の診察行為を否定してるわけですから。
本当に薬局開設者が何故薬剤師ではないのか?いつも思っていますし、この点に弱腰の薬剤師会と行政にはただただ遺憾です。
逆に「薬剤師」にはどんどん高いハードルを要求し資本力がない個人レベルでは追いつかなくなってどんどん現場を離れ勤務薬剤師が増える。何かがおかしいですね。
ネット環境も便利ですけど、現状で進めれば、まずは偽造処方箋があふれて問題山積と思います。その責任は取れるのでしょうか?と言っても責任を取ってもらっても副作用が起きたり犯罪が起きてからでは遅いのですけど。
厚労省が「薬事法違反の疑いのあるインターネットサイトの情報をお寄せ下さい」って言ってます。気がついた人は協力してどんどん報告すべきですね。
やっとこういうページが開設されました。
薬事法違反の疑いがあるインターネットサイトの情報をお寄せください
(厚労省)
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/topics/tp131111-01.html
でもきちんと対応してくれるんですかね?
悪質なサイトは名前をどんどん公表すればいいのにと思います。
それと薬事法の改正の件ですが、願わくば、薬局の開設者と登録販売業の管理者は薬剤師とすることを条文に盛り込んで欲しかったですね。今となっては無理ですけどね。
会見での発言がいくつか報じられています。
ケンコーコム、処方箋薬のネット販売の権利求め提訴
(TBS News i 2013.11.13)
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2052987.html
今までの大きな薬害は、厚労省の製造・承認段階で起きた。医者が患者を診察する。この薬を処方して良いかどうか。どういうリスクがあるか判断して処方箋を出している
(ケンコーコム側 阿部泰隆 弁護士)
「処方薬ネット販売禁止」ケンコーコムが国を提訴
(ANN NEWS 2013.11.13)
http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000015952.html
ケンコーコムは、「処方薬のリスクは医師が処方する際に判断している」と主張しています。
自己レス連投すみません。
後藤玄利氏がブログで考え方を示しています。
処方箋薬ネット販売の地位確認訴訟提起にあたって
(BLOGOS 2013.11.12 19:01 掲載)
http://blogos.com/article/73532/
医師の診断のもとに、個々の患者に処方される処方箋医薬品は、一般消費者が薬剤師の指導助言に基づいて、自ら選択する一般用医薬品とは検討すべきリスクの内容が大きく異なります。医師の処方に基づいて、薬局で調剤され、薬剤師により情報提供される処方箋医薬品のインターネット販売を禁止することの是非について、司法の判断を仰ぎたいと思います。
性善説を信じて、ネット販売をされるのかな?
副作用には、ポイント補償がつくのかな?
一般用医薬品市場は6000億円、院外処方せん調剤市場は6兆6千億円。放っておくはずはないよな。
院外処方せん調剤において、メールオーダーが可能になれば、赤字で苦しむ健康保険組合を一番の受益者にできる可能性がある。
保険薬局が院外処方箋を受け付けた際に、算定しなければならないものは調剤基本料と調剤料だけ?。薬剤服用歴管理指導料や計量混合加算・一包化加算などは算定しなくても違法ではない?
支払側の健保組合にとってローコストな保険薬局(メールオーダー薬局)と契約して、被保険者の処方箋をこのメールオーダー薬局へ健康保険組合が誘導する。
健康保険側にとっては患者のジェネリックの使用を主動でき、調剤手数料を抑制することで健康保険組合の支出が大幅に減り、保険者崩壊を防げるかもしれない。
でもこんな保険薬局が何件かできて、健康保険組合を囲い込まれてしまうと門前薬局も危うくなってしまいますね。さてさてどうなることやら・・・・・・・・・。
指導料取らなくても厚労省は指導してますよ。減免だって。そのシステムがきちんと機能しれくれればですけど。
高得点だけでなく、複数の都道府県にまたがった場合は別に指導ができるはずだけど、そんな指導入ったって聞いた事がない。その辺も大手に甘いから余計ですね。
営利で店舗数増やせば指導が厳しい(やって当たり前の事が指導大綱や業務運営ガイドラインには書いてある)ってイメージあれば、もう少し手が出し難い業種だって思われたかも。
ケンコーコムの後藤氏がブログでツイッター上での疑問などに応えて記事を掲載しています。
医薬品ネット販売にまつわる6つの誤解
(BLOGOS 2013.11.15)
http://blogos.com/article/73788/
処方せん医薬品の販売については次のように答えています。
ケンコーコムがやろうとしているのは、お医者さんからもらった処方箋を郵送等でケンコーコムに送ってもらい、それに基づいて薬局の薬剤師が調剤し、調剤済みの医薬品を宅急便等でお届けするものです。もちろん、保険も使えます。飲み方や、注意事項等はウェブやメール、説明書等を使って患者さんに伝えます。処方箋がなければ、一切売りません。(引用)
この記事については、現場の薬剤師の方も意見を寄せています。(きちんと意見を述べられている方に感謝します)
意見
http://blogos.com/article/73788/forum/
処方せん薬の販売については、症状が安定し、処方薬が少ないケースであれば、利用する人も少なくないかと思いますので、近い将来はおそらく日本でも導入される可能性は否定しません。
実際に、ある健保組合(WEB上では確認できませんでしたが、おそらく他の健保組合も水面下でこういったチラシを配っているかもしれない)が、某チェーン薬局のメールオーダーサービスの利用を呼び掛けています。
(正直言って、組合員を対象とはいえ、こういったことが堂々と行われているのは驚き)
南海電気鉄道健康保険組合・健康情報リンク
http://www.nankai-kenpo.or.jp/jigyo/jigyo_link.html
下の方にリンクがある
ジェネリックメールオーダーサービス
http://www.nankai-kenpo.or.jp/jigyo/generic.pdf
これって、問診票だけで済んでしまうってことはないですよね。
おそらくこの健保組合とこの会社との直接審査支払などの合意があると思われるので、厚生局が求める保険調剤業務などは関係ないのだと思いますが、あの会社の後発品に変更すれば必要な技術料が算定できなくてもトータルで元が取れるんでしょうね。
すぐに薬が必要な人、初めての人が利用することは考えにくいですが、メールオーダーでは販売側から直接問いかけない限り、相互作用や副作用のチェックは難しいでしょうし、効能効果も、誤った情報を与える可能性あります。(こういうときに限って地元の薬局に問い合わせたりする人もいる)
厚労省がもし保険薬局業務としてこれらを無条件で認めれば、保険薬局業務の在り方も問われるでしょうし、結果的にメールオーダーやオンライン薬局で購入した方が安くなるということが考えられれます。
繰り返しになりますが、そろそろどこの薬局でも同じ数量の薬を調剤してもらった場合には同じ自己負担金になる仕組みにしないと、厚労省が考えるのとは違う方向に行ってしまう可能性があります。
一方、薬事日報では社説で別の懸念を指摘しています。
ネット販売関連改正法案、国民の福音に
(薬事日報社説 2013.1.15)
http://www.yakuji.co.jp/entry33601.html
究極の目標は、患者情報の収集にあると考えられる。すなわち、個々の疾患に合致した健康食品や医療機器、バリアフリー施工業者に至るまで様々な関連分野のダイレクトメールを患者の了解のもとに送付し、市場拡大を目指していると推測される。 (引用)
現在、一般用医薬品をインターネットで販売している会社は、ケンコーコムさんのようにきちんとおこなわれているところばかりではありません。ルールがないからといって不適切な数量の販売を行っているサイトが散見されることは、以前述べたとおりです。(→TOPICS 2013.11.03)
ケンコーコムさんの主張が認められて、仮に処方薬のネットでの販売が認めれれば、怪しげなサイトや不適切な販売方法を放置するサイトが乱立することは目に見えています。(そういったものを取り締まらない、国民への啓発を行わない厚労省も問題ありだが。まずは新制度でOTC医薬品のネット販売がどれだけ法律順守されるかどうかかを見守る必要がある)
国民がそういったサイトを利用して健康被害にあわないためにも、現時点での明確な法規制は必要だと思います。
またネット上のコメントでは、薬剤師や薬局の既得権とかという言葉が飛び交っていますが、処方薬を含めた薬の供給が薬局や薬剤師の役割であるということが、どうも多くの方に理解されていないように思いました。
効率化を求めて、調剤専門とか第一類を取り扱わない量販店という現実もありますが、やはり完全医薬分業が行われていない日本の現状が、こういった認識を産んでいるように思われます。
医薬品ネット販売をめぐり官僚が暴走か 薬事法改正法案の手続き面での重大な瑕疵
(ダイアモンド・オンライン 岸博幸のクリエイティブ国富論 2013.11.15)
http://diamond.jp/articles/-/44504
大衆薬ネット販売
(宮崎日日新聞社説 2013 11.16)
http://www.the-miyanichi.co.jp/shasetsu/_2570.html
基本的に調剤済み医療用医薬品は販売でなく授与ですし、調剤済みって一体何でしょうね・・・・薬局で作って送った時でしょうか?患者さんが受け取った時じゃないでしょうか・・・・?
もし宅配で受け取った薬が間違っていた場合、また送り返して受け取って・・・・一体いつ薬が届くのでしょう。
一度も薬局に来局しない状況で調剤済みって言われる事が理解できません。
流通が発達してないと・・・・処方箋の期限切れになる確率が大きいような気もしますけど。
今の日本では処方箋を送るのはメール便ではダメですし、週末とか連休とかどうするんでしょうね?
でも一票の格差みたいに、いくら最高裁が言っても現状無理って事は世の中あるんじゃないでしょうか。
最高裁だって「薬事法の不備」を言っただけで、別にネット販売を擁護したわけではないですし。
いくら何でも裁判所もこれは良識ある判断されると思いますけど。
記事になりました。
やっぱり、健保組合に密かに営業をしていたようです。
「医療用医薬品の郵送サービス」実施準備
日本調剤 GE積極使用含め健保組合に営業も、厚労省が「待った」
(RISFAX 2013.11.18)
http://www.risfax.co.jp/risfax/article.php?id=43038
日本GEの後発品をつかってもらえば、おいしい話ですよね。
でも、近い将来実現する可能性もあり、処方せん医薬品のネット販売の容認も含め、これから大きな議論になりそうです。
厚労省は真剣に法解釈や保険業務の在り方、患者一部負担金の考え方について検討しなければいけません。
最近思うのですが、保険給付を受ける側にも法規制が要るのではないでしょうか?
安全に医療提供をする事を同意して保険給付を受けないといけない思います。
今回の問題、自費での購入なら1万歩譲って好きにすればいいですけど(薬事法の調剤した医薬品の販売=自費です)、保険給付となったら税金を使うわけです。患者側が好き勝手にやればいいって言うのは何か違う気がします。
税金で療養の給付を受ける以上はモラルがあるでしょうね。便利で安ければいい、その結果は自己責任っておかしいですよ。
不便で割高になったとしても、そこには医療人の免許の責任も伴うわけですし。
機械の一部のように医薬品販売するのは医療とは言えないと思います。
宅急便で送りますってうたい文句は厳密に言えば薬担の誘導云々に引っかかりそうな気もしますけど。
ケンコーコム社には表門を責め立てられ、日調社には裏門を攻められ、厚労省と日薬は落城寸前。
残念ながら赤字に悩見続ける多くの健康保険組合を巻き込んで裏門をこじ開けられる方が先だろうな。
さすがは日調社、目の付け所が薬剤師レベルではないね。