メチルフェニデートと持続性勃起(米FDA)

 米FDAは17日、メチルフェニデート(本邦はリタリン、コンサータ)の使用している男性で、まれに長時間・時に痛みを伴う持続性勃起(priapism、long-lasting erections)を生じる可能性があるとして、注意を呼びかけるラベルの変更を了承したと発表しています。

FDA warns of rare risk of long-lasting erections in males taking methylphenidate ADHD medications and has approved label changes
(FDA Drug Safety Communication 2013.12.17)
http://www.fda.gov/Drugs/DrugSafety/ucm375796.htm
http://www.fda.gov/downloads/Drugs/DrugSafety/UCM378835.pdf

 FDAには、1997年から2012年までにメチルフェニデート製剤との関連性が疑われる持続勃起症の報告が15例あり、年齢が特定できた14例のうち、12例は18歳未満の患者だったそうです。(8~33歳で平均12.5歳)

 うち2例は外科的な介入が必要となり入院治療を行ったそうです。

 また4例ではメチルフェニデートを中止後も持続性勃起が続いたそうです。

 また、今回のアナウンスによれば、別のADHD治療薬のアトモキセチンでも、持続性勃起症との関連性があるとしています。(メチルフェニデートよりも報告が多いということらしい。本邦のストラテラ添付文書でも、その他の副作用の項で「持続勃起、勃起時疼痛」の記載があった。でも文献は出てこなかった)

 FDAでは、医療専門職に対して両剤の使用や変更にあたっては注意するよう呼びかけるとともに、患者に対しては4時間を超える勃起が続くときはすぐに医師の受診を受けるよう呼びかけています。

 文献もあたってみました。かなり前から、医学雑誌への症例報告もあるようです。

Methylphenidate-induced erections in a prepubertal child
(J Pediatr Urol. 2013 Feb;9(1):e1-2.)
http://www.jpurol.com/article/S1477-5131(12)00092-7/fulltext

Priapism associated with methylphenidate: a case report.
(Turk J Pediatr. 2010 Jul-Aug;52(4):430-4.)
http://www.turkishjournalpediatrics.org/?fullTextId=812&lang=eng

Stuttering priapism associated with withdrawal from sustained-release methylphenidate.
(J Pediatr. 2004 May;144(5):675-6.)
http://www.jpeds.com/article/S0022-3476(04)00022-8/fulltext

 カナダや豪州では、上記文献を踏まえて、既に注意喚起が行われていました。

Extended-release methylphenidate (Concerta) withdrawal: suspected association with priapism
(Canadian Adverse Reaction Newsletter, Volume 16, Issue 3, July 2006)
http://www.hc-sc.gc.ca/dhp-mps/medeff/bulletin/carn-bcei_v16n3-eng.php#a3

Methylphenidate extended-release (Concerta) for attention deficit hyperactivity disorder (ADHD)
(NPS MEDICINEWISE 2007.1)
http://www.nps.org.au/publications/health-professional/nps-radar/2007/april-2007/methylphenidate-xr

 また、オランダではLarebがシグナルとして情報をアップしていました。(こちらは年齢が少し高い)

Methylphenidate and erectile dysfunction
(Lareb 2010.9)
http://www.lareb.nl/larebcorporatewebsite/media/publicaties/kwb_2010_3_methyl.pdf

 ロイターが紹介しているFDAのコメントにもありますが、思春期に達していない子どもでは、この問題を認識できなかったり、恥ずかしくて言い出しにくい可能性があるので、親・保護者や医療関係者は注意を払う必要があるでしょう。(本邦では、添付文書への記載は現時点ではない)

参考:
FDA warns attention deficit drugs may cause long erections
(Reuter 2013.12.17)
http://reut.rs/1cyHSAz


2013年12月18日 01:38 投稿

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