NZ、豪、英、蘭、米、日本、スイッチが進んでいるのは?

 余裕がないのでとりあえず簡単な紹介です。

 このほどPLoS One 誌に、ニュージーランド、豪州、英国、オランダ、米国、そして日本の6か国のスイッチ状況をまとめた論文が掲載されています。(北海道医療大医薬情報解析学分野 黒澤菜穂子教授が共著)

Widening Consumer Access to Medicines through Switching Medicines to Non-Prescription: A Six Country Comparison
(PLoS One Published Online 24 Sep 2014)
http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0107726
http://www.plosone.org/article/fetchObject.action?uri=info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0107726&representation=PDF

Table1 最近の各国のスイッチ状況
http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0107726 

一覧表は、Table3 でまとめられています

(Table3 拡大やPPTなどでのダウンロードが可)
http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0107726#pone-0107726-t003

 上記表の通り、ニュージーランドではオセルタミビルやトリメトプリム、フルコナゾール、ファムシクロビル、トリプタン製剤、インフルエンザワクチンなど、日本ではとても考えられないような成分もスイッチされていますが、今回の論文を紹介した地元  New Zealand Herald 紙のインタビューで、医師会会長はスイッチ政策を支持した次のように発言が興味深いです。

New Zealand had the balance of medications available without a prescription “reasonably right”.

Pharmacy medicines more accessible here than in many countries
(NZ Herald 2014.09.29)
http://www.nzherald.co.nz/lifestyle/news/article.cfm?c_id=6&objectid=11333195

 TOPICS 2013.06.11 の記事(コメント)でも述べましたが、ニュージーランドには独自のスイッチを行う仕組みがあるので、日本の状況とは一概に比較はできませんが、6か国中日本だけが、緊急避妊薬やオルリスタット(抗肥満薬。未だ薬価収載ができないオブリーンと同系)、PPIが未だ処方せん医薬品であることには考えさせられます。

関連情報:TOPICS
 2013.06.11 ニュージーランドのPharmacist Only Meidicines
 2013.12.28 タミフル、要薬剤師薬に分類変更へ(NZ)
 2012.09.07 タミフルOTC化でも耐性増やワクチン接種率低下は認めず(NZ)
 2012.09.06 インフルエンザワクチンとトリメトプリムの再分類(NZ)
 2009.04.30 薬剤師のプロフェッションが問われるタミフル直接販売(NZ)
 2007.05.16 シーズン中は、処方せんなしでもタミフルが入手可能に(NZ)  
 2008.12.05 英国におけるスイッチOTC25年の歩み


2014年09月30日 00:48 投稿

コメントが3つあります

  1. スイッチ薬化は各国の国情や医療制度の成り立ちの違いなどによって大きな影響を受けます。ただ、言えることはそれを鑑みても、日本は異常な国であるということです。
    明治時代からの医師優先の不完全医薬分業の環境下で、医師会の力には圧倒的なものがあります。それによって、スイッチ薬化は遅々として進んでいません。
    今まで認められたのも、同じような類似薬が多く、目新しいものは出ていません。これから出るとしたら、また、同じような類似薬でしょう。
    医師会の言い分は薬剤師には臨床がわからないし、そのウエイトの高い重要なる処方薬は店頭の薬剤師に任せられない。また、店頭そのものも、スイッチ薬が増やせる店舗構えになっていない。つまり、薬剤師というソフト、店舗というハードが、スイッチ薬を増やせる環境には程遠いということでしょう。これは、今までの薬剤師の意識、それを取り巻く人たち(メーカーも含めて)の自覚が、OTC薬を限りなく雑品化に近づけて、利益を上げるためだけの商材としてきたからです。OTCという意味合いのオーバー・ザ・カウンターは利便性、利益追求性によるセルフ化などで、形骸化されてしまいました。
    メーカーもそれに加担してきました。これでは医師の理解も得られるわけがありません。
    ただ、医師もOTC薬→処方薬の流れを大所高所から観る視点を養い、薬剤師を理解し、育てるぐらいの大きな度量をもって、どういう品目がスイッチ薬化として、相応しいのかを行政とともに一緒に考えなければならない時期にきているのでは。そうしなければ、いずれ、皆保険制度による医療財政は破綻して、言い方は悪いですが、医師そのものの稼業もできなくなってしまいます。
    軽・中・重病に対する医薬品の適正配分、患者や消費者の医薬品に対するコスト意識、勉強意欲をより高めるためには、ふさわしいスイッチ薬化の促進を急がなければならないと思います。何度も書いてきたことですが、日本(どこの国も一緒かわかりませんが)は権力の強いものによる「処方薬主流の大河」が出来上がってしまっています。その大河の一滴に、上述がなってしまわないように願いたいものです。

  2. Table3.のproton pump inhibitorは、Japanでnot switichedとなっていますが、間違いでは?

  3. TVでコマーシャルしていたガスター10(ファモチジン)をPPIと勘違いしていました。H2ブロッカーでしたね。コメントを取り消します。