2日、注目の健康情報拠点薬局(仮称)のあり方に関する検討会の第3回検討会が開催されています。
第3回健康情報拠点薬局(仮称)のあり方に関する検討会
(厚労省 2015年7月2日開催)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000090378.html
第3回検討会では、個人的にも若干違和感のあったこれまでの「健康情報拠点薬局」に代わり、新たな名称としてとして、「健康づくり⽀援薬局」という名称が提案されたそうです。(各紙によれば、「拠点」という文言を残した方がよいとの意見も)
この健康づくり支援薬局の要件として、厚労省では下記のような要件を論点として示しています。
健康づくり支援薬局(仮称)の定義に関するこれまでの議論を踏まえ、以下の観点から、要件を検討することが適当ではないか。
- かかりつけ薬局・かかりつけ薬剤師としての基本的機能
- 薬剤師の資質
- 薬局の設備
- 薬局における表示
- 医薬品の供給体制
- 開局時間
- 地域における連携体制の構築
- 健康相談・健康づくり支援
今回の検討会ではこれらの要件について検討が行われています。
各構成員の具体的な意見は今後の報道や議事録を待ちたいと思いますが、各項目ごとに個人的な印象を記しておきます。
1.かかりつけ薬局・かかりつけ薬剤師の基本的機能
- 備えるべき機能(上記2~8)の詳細に関する今後の検討を踏まえて議論するが主な機能としては、以下の3つが考えられるのではないか
- 患者の服用歴や現在服用中の全ての薬剤に関する情報等を一元的に管理する機能
- 24時間対応、在宅対応を行える機能
- かかりつけ医を始めとした医療機関との連携機能
- かかりつけ薬局には、かかりつけ薬剤師がいることを求めるべきではないか。また、地域包括ケアシステムにおける多職種の一員としてのかかりつけ薬剤師について、かかりつけ医との関係を整理する必要があるのではないか。
2.薬剤師の資質
- 健康づくり支援薬局(仮称)においては、以下の内容の研修を修了した薬剤師が常駐することが必要ではないか。
- 要指導医薬品、一般用医薬品、健康食品等に関する知識と適切な情報提供のあり方
- 患者や来局者が気軽に相談できるコミュニケーションの取り方
- 地域包括ケアの考え方と多職種・関係機関の役割・活動
- 生活習慣病に関する基礎知識と受診勧奨を含めた関係職種との情報共有、連携の方法
- 健康増進に関する制度や健診など地域保健の全体像と関係職種・関係機関の役割・活動
- 自治体や保険者、多職種等による健康づくり支援の先進的な取組事例
ツイッターの情報(→リンク)によると、厚労省は「処方箋の調剤のみをやっている薬剤師が多く、健康サポート機能を考えた時に不十分な薬剤師が多いのではないかという観点で入れた」とのことだそうですが、構成員からは、「地域包括ケアなどに関する知識は既に持っている」との意見も出されたとのこと。どっちの言い分もわかるんだけど、要は地元の医療・保健・介護に関する公的資源がどのようなものがあるかどうかを日頃から把握して、紹介できればいいんだと思うんだけど。研修というよりも、他職種との日頃からの交流だと思う。
3.薬局の設備
- 薬局利用者が要指導医薬品、一般用医薬品、健康食品等について相談しやすい環境をつくるためには、患者・薬局利用者とのやりとりが他の薬局利用者に聞こえないよう、パーテーション等で区切るなどして、個人情報に配慮した相談スペースが必要ではないか。
海外でもこういったスペースを設けているところは一般的だが、小規模薬局や調剤だけに特化している薬局にはハードルが高いと思う。ただ、実際のところ、要指導医薬品、一般用医薬品、健康食品では個人情報に配慮する必要がある相談はそんなに多いのだろうか?
4.薬局における表示
- 地域住民に処方箋なしでも薬局に来てもらうためには、薬局外において、健康づくり支援薬局(仮称)であることや、要指導医薬品等の適正な使用に関する助言や健康に関する相談を行っている旨を表示し、周知することが必要ではないか。
- また、薬局内では、薬局で実施している健康づくり支援の内容を具体的に示すことが必要ではないか。
施設基準を念頭に置いた要件だと思うけど、健康づくり支援薬局でなくても薬局として行うべきことだと思うので、いちいち掲示するのはちょっと違和感も
5. 医薬品の供給体制
- 薬局利用者が要指導医薬品や一般用医薬品について相談しやすい環境を作るために、要指導医薬品及び一般用医薬品を一定数以上取り扱っていることが求められるのではないか。
- 品目数が多いと相談件数は増加するが、品目数が多くなると構造設備を拡充する必要も出てくるため、それらを考慮して、どの程度取り扱うことが適当と考えるべきか。
前回検討会では300品目が適当との意見も出されたようですが、品目数ではなくセルフメディケーションの支援ができる薬効群を揃えられるかということの方が重要なので、もし細かな要件を決めるのであれば、各薬効群ごとに何品目以上といった形にした方がいいと思う
6.開局時間
- 地域住民が相談したいと思って薬局に行っても、薬局が開局していなければ、意味がない。地域における健康づくり支援薬局(仮称)として、一定時間以上連続した開局が求められるのではないか。
- また、平日仕事をしている社会人の相談に応じるためには、土日休日にも一定時間の開局が求められるのではないか。
私も、自分のところで調剤をしていない薬や他薬局で購入した商品の相談を夜間などに受けることがある。まずは、そういったことが少なくなるような体制にして欲しい。
7.地域における連携体制の構築
- 住民からの健康に関する相談に適切に対応し、受診勧奨や紹介等を円滑に行えるようにするためには、かかりつけ医をはじめとした薬剤師以外の多職種や関係機関(医療機関、地域包括支援センター、行政機関等)と連携しておくことが必要である。
- このため、薬局で行う健康づくり支援の内容に応じて、連携が必要となる薬剤師以外の多職種や関係機関に対し、薬局の取組内容や必要に応じて紹介等を行う旨を説明し、了解を得るなど、あらかじめ、顔の見える関係、連携体制を構築しておくことが必要ではないか。その上で、連絡・紹介先のリストを作成しておく必要があるのではないか。
- 特に、かかりつけ医がいる場合や健診を受けている医療機関がある場合には、かかりつけ医等に連絡を取り、連携して相談に対応する必要があるのではないか。
- 受診勧奨や紹介の際には、薬局利用者等の同意が得られた場合には、必要な情報を紹介先の医療機関等に文書(電子媒体を含む。)により提供することも重要ではないか。
8.健康相談・健康づくり支援
- 健康に関する相談内容の記録の作成
- 薬局・薬剤師が個別の薬局利用者に対して継続して健康相談に乗るためには、
過去の要指導医薬品等の販売内容や相談内容を把握しておく必要がある。 - そのため、過去の要指導医薬品等の販売内容や相談内容の記録や保存が求
められるのではないか。 - 相談内容の記録にあたっては、薬剤師以外の多職種や関係機関に受診勧奨
や紹介を行ったことも、適切に記録しておくべきではないか。
- 薬局・薬剤師が個別の薬局利用者に対して継続して健康相談に乗るためには、
- 健康づくり支援に関する具体的な取組の実施
率先して地域住民の健康づくりを積極的かつ具体的に支援をするという役割を踏まえれば、自発的に健康づくり支援の具体的な取組を実施していることが必要ではないか。(薬剤師による禁煙相談日、医師による糖尿病予防教室や栄養士による栄養相談会の開催など) - 健康に関するポスター掲示、パンフレット配布
地域住民に健康情報を意識してもらうため、国、地方自治体、関連学会等による健康に関するポスター掲示、パンフレット配布による啓発活動に協力する。 - 要指導医薬品等に関するお薬手帳への記載
薬局利用者が自身が服用している保険診療に係る医薬品及び要指導医薬品等を適切に把握し、薬局以外の医療従事者がその服用状況が把握できるよう要指導医薬品等に関するお薬手帳への記載を指導する。
薬局に求めることも必要だと思うけど、同時に、市町村に対し、地域薬局の積極活用というのを周知した方がいいと思う。
9その他
- 衛生材料等の取扱い
住民からの相談に対応し、また、衛生材料、介護用品等の提供の拠点としての役割を果たすために、介護用品や衛生材料等を取り扱うことについても要件化すべきか。 - 地域における健康増進のための各種事業への参加
地域の行政、関連団体と連携するために、健康増進の各種事業への参加も大切である。
地域において、関連団体と連携するためには、地域の医師会、歯科医師会、薬剤師会等に連携・協力し、地域の行政や医師会や歯科医師会が実施・協力する健康増進やその他各種事業等(くすり教育等の啓発活動、多職種との研修事業など)に主体的に参加し、健康増進に貢献していることが望まれるのではないか。
おむつなどについては確かにニーズがあるとは思うけど、多品目、価格競争という現状にも目を向けて欲しい。
地域のおける各種事業への参加は地元薬剤師会が中心となるので、メリットがないとして入会しないチェーン薬局がどう対応するか注目しています。
いずれにしても、これらは本来全ての地域薬局が持ち合わせるべき機能だとは思います。
ただ、現場では規模の大小にかかわらず日頃の調剤業務だけで精一杯というところも少なくないのではないでしょうか?
助手の導入や薬歴の取り扱いなどを含めた保険調剤実務の見直しをしないと、今回の健康支援薬局を目指そうとしても断念せざるを得ない選択をせざるをえない薬局も出てくるのではないかと思います。
それと、ググったら、「健康づくり支援薬局」という名称は、一部県薬の取組としてすでに行われているんですね。きっと今回の要件も先行した地域の取組を参考にしているんだと思いますが、各県の取組との違いを今後どうしていくのでしょう。まさか、地域の事情に合わせて今後要件を決めるってことはないですよね?
関連情報:TOPICS
2015.06.19 「かかりつけ薬局」=「健康情報拠点薬局」ではない
2015.05.27 「患者のための薬局ビジョン」策定の重み
2015.05.24 厚労省の「かかりつけ薬局」推進の本気度は疑わしい?
2015.03.11 「医薬分業」公開ディスカッションを前に思う事
2015.01.02 新年雑感
2012.10.07 薬局の起源と100年間での変遷(FIP)
2010.05.08 公衆衛生分野における薬剤師活動の認知度と期待度(英国)
2008.04.05 薬剤師はさらなる役割を担うべき(英国)
参考:
健康情報拠点薬局の要件案が明らかに
(日経DI 2015.07.06)
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/trend/201507/542915.html
医療介護CBニュース 7月2日
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/46108.html
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150702-00000003-cbn-soci
m3.com 医療維新 7月3日
http://www.m3.com/news/iryoishin/336689
2015年07月03日 00:00 投稿
6月4日に開催された第1回検討会の議事録がアップされました。
各構成員の発言は今回の要件の一部にもなっているようです。
報道されていない興味深いやりとりが結構あるので、興味ある方はご一読下さい。
第1回健康情報拠点薬局(仮称)のあり方に関する検討会
(厚労省 2015.06.04 開催)
議事録:
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000090528.html
資料;
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000087809.html
>要は地元の医療・保健・介護に関する公的資源がどのようなものがあるかどうかを日頃から把握して、紹介できればいいんだと思うんだけど。研修というよりも、他職種との日頃からの交流だと思う。
→昨日傍聴していて私もその点に関して違和感を覚えました。
6月18日に開催された第2回検討会の議事録がアップされました。
報道されていない興味深いやりとりが結構あるので、興味ある方はご一読下さい。
第2回健康情報拠点薬局(仮称)のあり方に関する検討会
(厚労省 2015.06.18 開催)
議事録:
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000091154.html
資料;
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000088989.html
7月2日に開催された第3回の議事録がアップされました
報道されていない興味深いやりとりが結構あるので、興味ある方はご一読下さい。
第3回健康情報拠点薬局(仮称)のあり方に関する検討会
(厚労省 2015.07.02 開催)
議事録:
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000092829.html
資料:
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000090378.html
日医からヤイヤイ言われ、薬局の名称をこねくり回しているだけ。
将来の看板だけ掲げても、今の薬局の実態がついて行っていない。
本当に滑稽な話だ・・。
日医なんかも、薬局・薬剤師を馬鹿にしてあれやこれやと注文をつけているだけだ。
ドラックチェーン協会なんかも、行政の決まりごとにはすぐに反応して、「そのような体制にします・・・。」って、すぐにメッセージを発信している。
でも、加盟している薬局は足並みが揃っていないし、それぞれがバラバラなことをして、金儲けに奔走している。健康支援作りというよりは、行政に建前だけ媚売って、いかに、その裏で上手に金儲けすればいいかを考えているだけ。
今の調剤薬局も、健康支援作り薬局体制づくりとは程遠いところにある。
一部の奇特な薬局(?)だけがそれを目指そうとしているところがあるかもしれないが・・・。でも、実現には難しさがあるが。
つまり、何でもかんでもの理想を突きつけられても、今の薬局体制を理想に近づけて変えて行くのには無理がある。
もともとの不完全医薬分業で、患者中心ではなく、医者中心の医療体制が、過去から脈々と作り上げられているのが大きな理由だ・・・。
個々の薬局が先ずできること、つまり、個々の薬局のいまの形態の延長戦上で、かいよりはじめられることを無理なくしていくしか仕方ない。
大上段に構えた薬局の理想づくりを押し付けるのは、無茶な話だ。
まあ、日医などは行政や政府に圧力(茶々入れて)をかけて、いや、わがまま言い放題で、将来の薬局の姿を横槍入れてイジっているだけ・・・。
六年制の薬学部になる時でも、医師会はその検討会のメンバーに最初から入っていなかった。つまり、薬剤師そのものをそんなに重要視していない。医者たちの手足程度で動いてくれればいいものを、それ以上に薬剤師が動くことを許さない。
このスタンスはこれからも変わらないだろう。
こんなことを書く時間があれば、私は早朝散歩をする方が有意義な時間だと思っているが、どうしても、この支援作りビジョンを読んでいると、滑稽でアホらしくもなり、書かずにはいられなくなった。
健康づくり支援薬局を語るにはいろんな切り口があると思う。
私の切り口は下記の通りだ。
日医と政府、厚労省がつるんで、そして、製薬メーカーを従わせたGEの異常な促進がある。これは皆保険を喰いものにしているとしか思えない。
GEの数や種類の多さで、過剰処方は解消されない。
むしろさらにひどくなるだろう。新薬開発も立ち遅れる・・・。
過剰処方の抑制政策を場当たり的にしているが、GEの大量に市場に放出している限り、根本的な改善には繋がらない。
それよりも、スイッチ薬を大幅に緩和させるべきだ。
日医はGE促進は反対しないが、スイッチ薬開放ともなれば、猛烈に反対する。
自分たちの食い扶持の目減りがあるからだ。
医薬品の適正配分は処方薬とスイッチ薬のバランスを考えることが大切だ。
健康づくりの支援薬局の構築をかいよりはじめるためには、スイッチ薬を大幅に増やすことが先決だ。
ただ、ドラックストア、スーパー系ドラック、ネット販売がスイッチ薬の健全な育成を阻んでいるのは明らかだ。薬剤師を軽視して、スイッチ薬を金儲けの商材ぐらいにしか考えていないからだ。
スイッチ薬を増やした上で、それに携わる薬剤師のスイッチ薬の健全販売の環境整備をしっかりとするべきだ。
それが健康づくり支援薬局の身近な構築として、一番大切なことだ。
時間もないし、何回も書いてきたことなので、もう、書きたくもなかったが、あえて、この機会に書かせてもらう。
まあ、上述のことは安倍政権の歪んだ成長戦略の中では大河の一滴となってしまうことだが。書いても疲れるだけだが・・・。