健康づくり支援薬局(仮称)の要件(案)が示される(Update)

 26日、注目の健康情報拠点薬局(仮称)のあり方に関する検討会の第5回検討会が開催されています。

第5回健康情報拠点薬局(仮称)のあり方に関する検討会
(厚労省 2015年8月26日開催)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000095690.html

 上記資料にありますように、今回の検討会ではこれまでの意見を踏まえた具体的な要件案が示され、議論が行われています。

 要件案として、

健康づくり支援薬局(仮称)=かかりつけ薬局の機能+積極的な健康サポート機能

とした考え方を示したうえで、下記のような具体的な要件が提案されています。

1.かかりつけ薬剤師・薬局としての基本的機能

求められる機能 具体的な要件の考え方(案)
服薬情報を一元的に管理する機能
  1. 患者がその薬局においてかかりつけ薬剤師を適切に選択することができるような業務運営体制を整備していること。
  2. 患者がかかっている全ての医療機関を把握して、一般用医薬品等を含めた服薬情報等を一元的・継続的に把握するよう取り組み、薬歴に適切に記録していること。
  3. 残薬管理を含め、丁寧な服薬指導や副作用等のフォローアップを実施するよう取り組んでいること。
  4. 患者に対し、初回来局時等にかかりつけ薬剤師・薬局の意義・役割を説明し、かかりつけ薬剤師・薬局を持つよう促すこと。
  5. 患者に対し、お薬手帳の意義・役割を説明し、その活用を促すこと。また、一人の患者に複数のお薬手帳が発行されている場合には、一冊化・集約化に努めること。
24時間対応、在宅対応を行える機能
  1.  開局時間外であってもいつでも、かかりつけ薬剤師(かかりつけ薬剤師が対応できない時間帯がある場合にはかかりつけ薬剤師と適切に情報共有している薬剤師を含む。)が患者からの相談等(必要に応じ調剤を行うことを含む。)に対応する体制を整備していること。
  2. 在宅患者に対する薬学的管理及び指導の実績があること。
かかりつけ医を始めとした医療機関との連携機能
  1. 患者の情報に基づいて、必要に応じ、疑義照会や副作用・服薬情報のフィードバック、それに基づく処方提案に適切に取り組んでいること。

2.積極的な健康サポート機能

求められる機能 具体的な要件の考え方(案)
地域における連携体制の構築 【薬剤師以外の多職種や関係機関との連携】

  1. 地域の一定範囲内の医療機関、健診や保健指導の実施機関、地域包括支援センター、訪問看護ステーション、関係行政機関等と、あらかじめ連携体制を構築し、連絡・紹介先リストを作成していること。
  2. 健康に関する相談に対し、かかりつけ医を始めとした医療機関への受診勧奨、健診や保健指導の実施機関、地域包括支援センターや訪問看護ステーション、関係行政機関等への紹介に取り組んでいること。
  3. 薬局利用者等の同意が得られた場合に、必要な情報を紹介先の医療機関等に文書(電子媒体を含む。)により提供するよう取り組んでいること。
【地域における健康増進のための各種事業への参加】

  1. 地域の医師会、歯科医師会、薬剤師会、看護協会等に連携・協力し、地域の行政や医師会等が実施・協力する健康増進その他の各種事業等に積極的に参加することが望ましいこと。
 薬剤師の資質  【健康づくり支援に取り組む薬剤師の研修】

  1. 一般用医薬品等の安全かつ適正な使用に関する助言や健康に関する相談、適切な専門職種や関係機関への紹介等に関する研修を修了した薬剤師が常駐していること。
 薬局の設備  【個人情報に配慮した相談スペースの確保】

  1. 薬局内に、パーテーション等で区切られた相談窓口を設置していること。
 薬局における表示  【健康づくり支援薬局(仮称)であることの表示】

  1. 健康づくり支援薬局(仮称)であることや、一般用医薬品等の安全かつ適正な使用に関する助言や健康に関する相談を積極的に行っている旨を薬局の外側の見えやすい場所に掲示していること。
  2. 薬局で実施している健康づくり支援の具体的な内容について、薬局内で分かりやすく提示していること。
 医薬品の供給体制  【要指導医薬品、一般用医薬品の取扱い】

  1. 一般用医薬品等を、原則として中分類につき2銘柄以上の医薬品を取り扱っていること。
 開局時間 【開局時間の設定】

  1. 週45時間以上開局し、平日の開局日には連続して開局(午前8時から午後7時までの時間帯に8時間以上が望ましい)していること、さらに土日どちらかにも一定時間開局していること。
健康相談・健康づくり支援 【健康に関する相談内容の記録の作成】

  1. 一般用医薬品等の安全かつ適正な使用に関する助言や健康に関する相談を行い、薬局利用者の状況や一般用医薬品、健康食品等の特性を十分に踏まえ、一般用医薬品、健康食品等が適切に選定され、かつ使用されるよう、専門的知識に基づき説明すること。
  2. 販売内容や相談内容(受診勧奨や紹介の内容を含む。)を記録し、一定期間保存していること。
【健康づくり支援に関する具体的な取組の実施】

  1. 積極的に健康づくりを支援する具体的な取組を実施していること。
  2. 地域の薬剤師会等を通じて自局の取組を発信し、必要に応じて、地域の薬局の取組を支援していること。
【健康に関するポスター掲示、パンフレット配布】

  1. 国、地方自治体、関連学会等が作成する健康に関するポスターの掲示やパンフレットの配布により、啓発活動に協力することが望ましいこと。

 もっとすごいのは、上記認定要件にもなっている 、健康づくり支援に取り組む薬剤師に求められる研修のイメージです。
(画像クリックで拡大します)

 また、公表の仕組みについても、考え方が示されています。

 なお、(仮称)となっている名称についても、健康づくり支援薬局、地域包括健康づくり支援薬局、地域健康づくり連携薬局、地域包括ケア(支援)薬局 といった案が示されています。(→リンク

 9月7日に次の検討会の開催が決まっているので、おそらくその日に正式な要件が決まるものと思われます。(もう少しかかるという雰囲気も)

 これまでの議論については下記資料をご参考下さい

第4回(2015.08.26開催) 資料 議事録(未掲載)
第3回(2015.08.07開催) 資料 議事録
第2回(2015.06.18開催) 資料 議事録
第1回(2015.06.04開催) 資料 議事録

 当日の議論についてまだ把握していませんので、あくまでも上記案を見ての感想ですが、ここまでハードルを高くして名乗りを挙げる薬局がどれだけ出てくるか? です。
 
特に研修については、かなり重い内容だと思います。もちろん知っておくべき知識だと思いますが、卒後教育として今まで軽視してきたのを、さて必要だからやりなさいというものもちょっと考えてしまいます。CBニュースによれば、国や公的機関が研修プログラムを作るべきだという意見も出されたようですが、もし作るのであれば、私は全ての地域薬剤師に研修を義務付けるべきではないかと思います。(新たな認定薬剤師制度でも作りたいんですかね?)

 また、地域の保健サービス等に関する情報などは自治体ごとに取組みが大きく異なってくると思います。他職種や行政を巻き込んで、地元で地域薬局がどういうことができるのか、求められているのかも日頃から意見交換をする必要があるかもしれません。

 一方、これが新たな施設基準の算定要件の一つとなるのかどうかも注目です。はっきり言って、個人や小規模の薬局がこれを全てクリアできるかとなると、保険薬局実務に追われている現状を考えれば、相当難しいと思います。(一方で、指導チェック事項が増えて、厚生局も指導がしやすくなる?! )

 理想の姿として、全ての薬局が目指すべきであるとは思いますが、個人的にはバッシックされる状況になるまで、どうして今まで対策を打たなかったのかと思います。また、生活者が地域薬局のあり方にどれだけ目を向けてくれるかということも課題です。特に、一般用医薬品の購入をほとんどがドラッグストアで購入するケースがほとんどとなっている現実にも目を向ける必要があります。必要な種類の一般用医薬品をせっかく取り揃えても、購入してくれなければどうにもなりません。

関連情報:TOPICS
  2015.07.03 健康づくり支援薬局(仮称)の要件(検討会論点)
  2015.06.19 「かかりつけ薬局」=「健康情報拠点薬局」ではない
  2015.05.27 「患者のための薬局ビジョン」策定の重み
  2015.05.24 厚労省の「かかりつけ薬局」推進の本気度は疑わしい?
  2015.03.11 「医薬分業」公開ディスカッションを前に思う事

参考:
健康づくり支援薬局の要件案、厚労省が提示-「実務経験5年以上」など委員から注文
(医療介護CBニュース 2015.08.26)
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/46564.html
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150826-00000006-cbn-soci

「薬剤師の携帯番号、公開すべきか」
健康づくり支援薬局で議論紛糾、結論は今秋以降に
(m3.com 医療維新 2015.08.27)
https://www.m3.com/news/iryoishin/352157

支援薬局の具体的な要件案が明らかに
OTC薬も薬歴に記載、週45時間以上の開局、OTC薬中分類で2銘柄以上に
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/trend/201508/543557.html

下記は構成委員のBlog です。COML さんの記事は考えさせられます。誰のため、何のための検討会なのかと。

健康支援づくり薬局
(COMLのブログ 2015.08.26)
http://coml-blog.cocolog-nifty.com/blog/2015/08/post-74fc.html
(安藤たかおの見聞録 -永生会理事長のブログ 2015.08.26)
http://ameblo.jp/ando-takao/entry-12066216393.html

8月27日 18:20 リンク追加


2015年08月26日 23:01 投稿

コメントが2つあります

  1. アポネット 小嶋

    m3.com 医療維新と 日経DI が当日の様子を伝えているので読ませて頂きました。(要会員登録だけど)

    記事によると、医師会の委員は、「医療機関からみれば薬局でOTC薬を置いてほしくない」と発言されたとのこと。

    これはいくらなんでもこれは非常識とも言える発言です。

    薬剤師法第一条
    薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによつて、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。

    医薬品供給は薬剤師の第一義の仕事です。OTCの供給をしてはいけないということなのでしょうか。それとも、薬局は医療機関にとって都合のよい調剤所であればいいということなのでしょうか?

    また、食事や運動などの健康相談を行うことに対しては、看護協会の構成員からも疑問が投げかけられたとのこと。

    しかし、こういったことは一昔前の薬局では普通に行われていたことです。今でいうところのセルフメディケーション支援に貢献していたのです。

    海外では普通にやっているんですけどね。行政レベルで医療・健康・福祉情報の発信を薬局で行うという強い姿勢がないと難しいかもしれません。

    即ち、これまでのOTC販売軽視のツケがいかに深刻かということです。

    そして、もし、調剤偏重にならざるを得ない仕組みがあるならば、この見直しをしないと、結局のところ、この30年ですっかり変わってしまった、他の医療従事者、患者・生活者が抱く薬局像を変えることは難しいでしょう。

  2. とにかく、健康づくり支援薬局のビジョンをぶち上げる前に、スイッチ薬の大幅規制緩和を実現させるべき。

    大蔵省のお偉さんも言っていたが、漢方薬を例に上げて、OTC薬類似薬も何とかしなければならないと・・・。
    それと、この人の下記のコメントも印象的だ・・・。
    保険のあり方、患者の公平性、セルフメディケーションの推進、という三つの観点で、総合勘案したときに、同じ疾病に対してOTC薬と保険収載されている薬が併存している場合には、そこに関して給付のあり方を見直すべきではないかという問題意識を持っている」と述べた。
     6月に財政制度等審議会がまとめた建議では、「医療用医薬品については、使用実績があって、副作用の発生状況等から見て市販品としても適切であると認められれば、市販(スイッチOTC)が認められる。これらについては、公平性の観点、セルフメディケーション推進の観点から、保険償還率をその他の医薬品よりも低くすべき」と問題提起。

    皆保険を喰いものにしている日医や製薬メーカー、それを後押ししている政府のやから族は上述コメントをしっかりと自覚するべき。
    大幅にスイッチ薬を取り入れた上で、健康づくり支援薬局ビジョンを議論するべきではないだろうか。
    いろいろ今の薬局の実態から程遠い理想の条件(色々と御託を叫んでいるが・・・。)を並べ立てているが、「かいより始めよ」とは上述のことから考えることなのだ・・・。
    まあ、何を書いても、正当性が通らないこの日本の医療業界の歪みには書くだけアホらしいが、でも、書かずにはいられない・・・。