TOPICS 2016.11.13で紹介しましたが、現在厚労省では厚生科学審議会の下、薬剤耐性(AMR)アクションプランに定められた対策のうち、厚生労働省が所管する専門的・技術的事項について調査審議を行う小委員会が開催されています。
厚生科学審議会 (薬剤耐性(AMR)に関する小委員会)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-kousei.html?tid=401608
この小委員会の下には、薬剤耐性(AMR)アクションプランに定められた対策のうち、抗微生物薬の適正使用(AMS)等に係る専門的・技術的事項について調査審議を行う作業部会が設置され、現在、臨床の現場において、抗菌薬の適正使用を推進する上で重要な項目について、一般診療の場での実践的な対応を中心に解説した、「抗菌薬適正使用の手引き」作りがすすめられています。
そして、1月30日には第2回の作業部会が開催され、抗微生物薬適正使用の手引き第一版(仮称)たたき台が示され、検討がおこなわれました。
第2回抗微生物薬適正使用(AMS)等に関する作業部会
(厚労省2017年1月30日開催)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000152778.html
http://nk.jiho.jp/servlet/nk/release/pdf/1226803031993
(日刊薬業行政情報資料)
たたき台は、第1回作業部会(→資料リンク)で示された、コンセプト(→リンク)と、第1回小委員会(→リンク)で出された意見(→リンク)を踏まえ、委員と参考人が下記の項目でまとめています。
抗微生物薬適正使用の手引き第一版(仮称)たたき台
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000152769.pdf
1.はじめに(本田委員)
(1) 策定の経緯
(2) 策定の目的
(3) 手引きの対象
(4) 想定する患者群
(5) 科学的根拠の採用方針
2.総論(本田委員)
(1) 抗微生物薬適正使用とは
(2) 抗微生物薬使用の適応病態
(3) 抗微生物薬の不適正使用とは
(4) その他
3.各論(山本委員、宮入委員、北原委員、笠井参考人、堀越参考人)
3.1急性気道感染症
(1) 急性気道感染症とは
(2) 急性気道感染症の疫学
(3) 急性気道感染症の診断方法および鑑別疾患
(4) 治療方法
(5) 患者・家族への説明
3.2急性下痢症(山本委員、宮入委員、笠井参考人、堀越参考人)
(1) 急性下痢症とは
(2) 急性下痢症の疫学
(3) 急性下痢症の診断方法及び鑑別疾患
(4) 治療方法
(5) 患者・家族への説明
4.参考資料
「はじめに」で、『本手引きは、主に外来診療を行う医療従事者(特に診察や処方、保健指導を行う医師や保健指導を行う保健師)を対象として作成されており、入院診療に関する抗微生物薬の適正使用を網羅した内容とはなっていない」と、手引きの対象を示したうえで、
- 各医療者が抗微生物薬の必要な状況と必要でない状況を判別できるよう外来診療を支援することを念頭に置いた内容となっている。
- 総論及び各論の推奨事項の内容は、抗微生物薬の適正使用の概念の普及、推進を遂行するために欠かせない、処方を行わない医療従事者や患者も対象とした内容となっており、すべての医療従事者や患者にご一読いただきたい。
としており、現場(地域薬局)の薬剤師も、この手引きに注目する必要がありそうです。
注目点は、患者・家族への説明例が示されている点で、薬剤師から患者への説明例も示されています。
【薬剤師から患者への脱明例:急性気道感染症の場合】
医師による診察の結果、今のところ、ウイルスによる「風邪」とのことです。抗生物質(抗菌薬)はウイルスに対して効果はありません。むしろ、抗生物質の服用により、下痢等の副作用を生じることがあり、現時点では抗生物質の服用はお勧めできません。代わりに、症状を和らげるようなお薬が医師より処方されているのでお渡ししします。
ただし、「風邪は万病のもとJといまうすように、色々な病気の最初の症状が「風邪」のように見えることがあります。
3日以上たっても症状がよくりなってこない、あるいはだんだん悪くなってくる場合や、食事や水分がとれなくなった場合は、もう一度意志を受診するようにしてください。
【薬剤師から患者への説明例:急性下痢の場合】
医師による診察の結果、今のところウイルスによる腸炎のとのことです。抗生物質(抗菌薬)はウイルスに対して効果はありません。むしろ、抗生物質の服用により、下痢を長引かせる可能性もあり、現時点では抗生物質の服用はお勧めできません。
脱水にならないように水分をしっかりとることが一番大事です。少量、こまめな水分摂取を心がけてください。
便に血が混じったり、お腹がとても痛くなったり、高熱が出たり、水分も取れない状況がづく際は再度医師を受診してください。
上記のような説明をする機会が今後増えていくと思われますが、一方で課題も多いようです。
厚労省の作業部会、かぜに対する抗菌薬適正使用手引き作成へたたき台。
普通感冒
軽症の急性鼻副鼻腔炎
迅速検査または培養検査でGASが検出されていない急性咽頭炎・扁桃炎
百日咳を除く急性気管支炎
では、抗菌薬投与は推奨しない。と明記。— 国際医薬品情報 (@IPI_editors) 2017年1月30日
厚労省、かぜに対する抗菌薬適正使用手引きでたたき台。 薬剤師から患者への説明例について「医師による診察の結果と言っているものの、薬局の薬剤師は医師の診察の結果の詳細が分からないケースがある。医師の意図をどこまで薬剤師がきちんと把握できるか今後の課題」と北原委員(長崎大病院薬剤部)
— 国際医薬品情報 (@IPI_editors) 2017年1月30日
厚労省の作業部会、かぜに対する抗菌薬適正使用手引きでたたき台。
抗菌薬投与の推奨内容について「疑義照会をどうするか。適応症を含めて手引きに記載があるから疑義照会しなくていいのか、添付文書とは違うので疑義照会が必要なのか薬剤師にとって大きなところ」と北原委員(長崎大病院薬剤部)。— 国際医薬品情報 (@IPI_editors) 2017年1月30日
疑義照会といっても、院内ならともかく、院外で抗生剤が処方された場合処方箋だけで医師による診察の結果による必要性の判断はできないでしょ。
地域薬局でできるのはせいぜい一般的な啓発。抗生剤が処方されれば薬剤に沿った指導のみになる。
手引きをどれだけ強制力を持たせるかの方が重要— 小嶋 慎二@アポネット (@kojima_aponet) 2017年1月30日
抗生剤の使用 それが風邪、ウイルスか 肺炎、気管支炎、腸炎など、細菌かは 正直処方箋ではわからない 薬局での指導は無理では また予防投与も時にはあるなど、実臨床は複雑 https://t.co/XRxXv6VYTs — 中村 幸嗣 (@yukitsugu1963) 2017年1月31日
関連情報:TOPICS
2016.11.13 薬剤耐性(AMR)対策推進月間だけど
2月24日リンク追加
2017年02月02日 01:00 投稿