政府・財務省が2018年調剤報酬改定で求めるもの

 衆議院選挙を終え、いよいよ限られた期間の中で来年の診療報酬(調剤報酬)改定に向け、具体的な議論が始まります。調剤報酬など薬剤師関連の部分についての中医協での議論はまだ開始されていませんが、議論への影響を与える財務省と官邸の意向が明らかになっています。
 
まずは、10月25日に開催された財務省の財政制度等審議会の財政制度分科会で示された社会保障分野での要求です

財政制度分科会(平成29年10月25日開催)
(資料)
http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia291025.html
(議事録)
http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/proceedings/zaiseia291025.htm

 今回の分科会では、2018年度診療報酬改定・薬価制度の抜本的改革が示され、とりわけ調剤報酬の改革という独立の項目示されていることが特徴です(→資料リンク

 まずは例によって、調剤技術料が特出して増えていると指摘、原因は薬剤師が増えすぎて、その人件費に充てているというものです。(それなら、海外のように開局制限をすればいいと思う。また業務量、とりわけ保険調査委業務に係るものはこの20年で格段に増えており薬剤師はそれなりに必要。長期処方が増えていることが考慮されていない)

 そして、関連調査を踏まえて、次のような改革が必要としてます。

       上記資料にある、平成29年度予算執行調査というのは、診療報酬改定前に行っている「薬局の機能に係る実態調査」(みずほ情報総研に今年8月に委託)で、中医協の場でも検討の際にもしばしば利用されている調査です。(でも、調査結果はこれまでも全て公表されていないと思う)  今回、調査対象としてうちにもこの調査票が来ていて、内容を確認したらまさしくこの内容でした。  今年の調査では、ある1日全ての患者の剤数・種類数、1ヶ月間の医療機関ごとの応需枚数、在宅/居宅管理指導料や自家製剤・計量混合・嚥下困難者用製剤加算の算定状況についても調査しています。(結構確認するのが大変だった)  こういう形でデータが出てくるところをみると、剤(調剤料)やこれら加算についても今回見直しの対象になる可能性があります。

 

   また、今年相次いで発覚した、いわゆる付け替え問題も大きく影を落としていることはいうまでもありません。(今回の資料で、異例とも言える具体例を挙げての指摘が行われています。→リンク) ツイッター上ではこういう指摘も

   一方、26日開催された経済財政諮問会議では、厚労相が2018年診療報酬改定などの方針を明らかにしています。 平成29年第14回経済財政諮問会議 (2017年10月26日開催) http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2017/1026/agenda.html

 

         一方民間議員も、いろいろな提言を行っていますが、これまでの経緯を考えるとおそらく中医協でなどで取り上げることはないと思います。

 

 

 

   これらを踏まえ、来月から本格議論が始まる中医協などで論点として示されそうなのは

  • 現行の調剤基本料2の要件の引き下げ(最低でも、2000回→1500回、90%→80% かかりつけ算定があっても復活は認めないということもありうる。個人的には施設処方の付け替えや薬局そのものを分店するという手法もあるのであまり意味をなさないと思う。)
  • 調剤料の引き下げ

 

  • 後発医薬品調剤体制加算の要件引き上げ(最低でも、65%/75%→70%/80%)

 

 

 など引き下げ項目ばかりで、不祥事も加わり、罰則的引き下げは避けられないと思います。    厚労相の方針には、一応かかりつけ薬剤師・薬局の役割を進めることに言及をしていますが、かかりつけ薬剤師指導料自体に議論があることを考えると、この部分についての変更はあまりないように思います。    ただ全体的にいえることは、面分業=かかりつけ薬局の推進や評価だけは何とかして進めたいことだけは確かのようです。  前述した、「薬局の機能に係る実態調査」には患者向けにも調査票があって、手元に調査票のコピーを改めてみたら、何とリフィル処方せんについての質問がありました。  「欧米ではリフィル処方せんという仕組みがあります。そのような仕組みを利用したいと思いますか」で始まり、思うと答えた人に対しては、「どのような場合にリフィルを利用したいと思いますか」「リフィル処方せんで薬の交付を受ける場合、2回目以降はどこの薬局に行こうと思いますか」という質問が並んでいます。  どのくらいの回答が集まるか注目ですが、この結果はたぶん中医協にデータがでてくると思います。  2016改定では、リフィル処方といかないまでも、分割調剤を大病院に導入するという動きはありましたので、結果次第では、2018改定で俎上に上がる可能性は大と思われます。

   ただ現実にリフィルになったとしても、眠剤や安定剤など30日規制のものが入っている処方が少なくありませんし、貼り薬や塗り薬などの外用薬の取り扱いはどうするかなど、運用はとてもとても難しく、対象となる処方はかなり限られると思います。準備不足で混乱するので結局先延ばしということも十分想定されますね。

そうなると現実的なのは、35日超の処方に対して、分割調剤を義務付けるということになるのではないかと思います。

そして、医師会が妥協して容認するとすれば、大病院のみの先行導入(試行導入)でしょうか。もし、そうなったら敷地内薬局はどうなるでしょうね。違ったところから反対の声が挙がるかもしれませんね。

いずれにしても、来月から頻回の開催が予定されている中医協の議論には目が離せません。


2017年10月30日 00:00 投稿

コメントが1つあります

  1. アポネット 小嶋

    議事録がアップされていました

    宇南山委員のコメントが目に留まりました。

    大小5個のポイントをお話しさせていただきたいと思います。最初は意見というか、今後の話です。

    予算執行調査に基づく薬剤師の改革で、35ページに相当するところです。今回、一定の調査に基づいて改革するということは、非常にすばらしいことだと思いますが、処方箋の集中度に1つ焦点が当たっています。例えば、かかりつけ薬剤師という観点を考えると、実は薬局の中で特定の病院からの処方箋がどれだけを占めたのかというのは、あまり重要な情報ではないと思います。

    例えば、患者が一体何個の薬局に通っているのか。1人の患者に対する集中度のようなもの、また、処方内容のダブルチェックという観点からすると、今度は1つの病院で何個の薬局とつき合いがあるかという意味で、病院が発行した処方箋が何個の薬局で使われたかという集中度のようなものも非常に重要な情報になると思います。

    これは、今年度、すぐにできることではありませんが、ぜひとも中期的に、もう少し目的に沿ったような尺度をとっていくことがよいのではないか。そのために、ぜひともこういったものを研究者にもデータを公開して、分析を進めるというのが重要なのではないかなと思います。