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薬局とともに健康な未来へ(独ABDAポジションペーパー)

ドイツ薬剤師連盟(ABDA)が、患者の利益のために、より多くのことを行うことが許されるべきであるとしたポジションペーパーを公表

【Aponet.de 2025.04.10】
Mehr Aufgaben für Apotheken: So könnte die Zukunft aussehen
https://www.aponet.de/artikel/mehr-aufgaben-fuer-apotheken-so-koennte-die-zukunft-aussehen-31597

ABDAは、将来的に薬局がより多くの業務を担うことで、特に医師の負担を軽減することを提案

医薬品の供給が不足した場合には、救急医療の場合と同様に、薬局にはより大きな裁量権を

軽度疾患に対しては、事前に医師に相談することなく、薬剤師が処方箋医薬品を直接調剤することも考えられる

子どもの場合、特定の医薬品は健康保険会社の負担で提供される可能性も

また、予防接種の提供や、血糖値の測定といった簡単な健康チェックなどによる予防医療の提供も重要

さらにアドバイスも強化する必要がある。薬局は、特に新しい長期投薬を開始する場合や、電子患者記録などのデジタル医療サービスを利用したい場合に重要なサポートを提供できるだろう

ABDAのプレスリリース

【ABDA 2025.04.09】
Apothekerschaft schlägt neue Versorgungsaufgaben für Apotheken vor Ort vor
https://www.abda.de/aktuelles-und-presse/pressemitteilungen/detail/apothekerschaft-schlaegt-neue-versorgungsaufgaben-fuer-apotheken-vor-ort-vor/

地域薬局は、医療制度の課題に効果的に対応するために決定的な貢献をすることができます。

医療資源が乏しい今日において、高度な資格を持つ学術的医療専門家としての薬剤師の潜在能力を、約 17,000 の薬局でより効果的に活用する必要があります。

ABDAは、「薬局とともに健康な未来へ」というポジションペーパーを発表し、今後薬局が地域でどのような仕事を担っていけるかについて提言をしました。

こちらがポジションペーパー

医療提供体制のあり方が問われている日本でも、こういうものを提示しないといけない

Positionspapier „In eine gesunde Zukunft mit der Apotheke“
https://www.abda.de/fileadmin/user_upload/assets/Pressetermine/2025/Pk_20250409_forsa-Umfrage/Positionspapier_In_eine_gesunde_Zukunft_mit_der_Apotheke_2025.pdf

患者にとっての利点

新しいケア サービスは患者のニーズに合わせて特別に調整されており、高品質のケアを維持しながら人々の健康に具体的な付加価値を提供します。

迂回のない迅速な医薬品供給

医薬品供給のボトルネックにもかかわらず、迅速な医薬品供給

医療用医薬品が供給できない場合
薬局チームは、同じ有効成分の製剤に切り替えるか、治療上同等の代替品を使用することで、より迅速な医薬品供給を可能にします。

治療上同等の代替品を使用する。

夜間・緊急時の自宅近くでの迅速なケア

緊急時には、医師から処方された長期服用薬の小分けパック を薬局で直接受け取ることができる。

簡単な急性疾患(尿路感染症、結膜炎など)については、薬剤師が処方薬を直接提供することができる。

小児の急性疾患治療用の市販薬は、法定健康保険 (SHI)の負担で、保護者が地域の薬局で直接入手できる。

必要な場合は、医師との具体的な相談や救急医療機関への紹介が行われる。

長期投薬患者の迅速で安全な治療

慢性疾患患者に対するGPの年間定額診療料の導入(医療強化法、GVSG)は、医学的に必要のない受診を減らすことを目的としている。

以下のサービスにより、患者は長時間の通院や待ち時間を短縮することで、長期の投薬治療を受けやすくなり、同時に治療のアドヒアランスも向上する。

●処方箋の更新

安定した処方箋を持つ患者は、地域の薬局で、決められた薬や病気について、既存の処方箋の延長を受けることができる。

処方箋の更新により、薬の追加パックを入手することができる。

●慢性的なケア

地域薬局は、患者に長期の薬の提供に関してさらに充実したサポートを提供し、シームレスなケアをを実現します。

薬局は、処方箋のリマインダーシステムや、必要であれば、治療の成功をモニターすることによって、患者をサポートします。

現場で直接予防と早期発見

薬局への敷居の低いアクセスは、以下のような予防や早期発見のために、より活用することができる。

・予防接種

・心血管危険因子などのスクリーニング検査

・タバコ関連疾患の予防などのカウンセリング・サービス。

・モニタリングサービス

このようにして、リスクが早期に認識され、疾病が予防され、ケアが改善される(「心臓の健康を強化する」法律案(ヘルシー・ハート法、GHG)も参照)。

安全な薬物療法をさらにサポート

●薬物療法の安全性向上(AMTS)

専門職間の薬物療法管理は、薬物療法のリスクを早期に認識することを可能にします。

これはAMTSの改善と死亡率の減少につながり、患者はより安全でより良いサポートを受けることができると感じています。

このことは、ザクセン・チューリンゲン州の医薬品イニシアティブであるARMINによって実証されています。

●治療アドヒアランスの強化 – 最初から

長期治療のために新しい医薬品を処方する場合、薬局は治療の最初の数週間、患者をより緊密にサポートすることができます。

体系的なカウンセリング

モニタリングやリマインダーサービスを通じて、患者が治療を正しく開始し、一貫して実行し、治療を成功に導くことができます。

●デジタル・ヘルスケア・システムへの統合

薬局はすでにデジタル化の重要なパートナーである。

将来的には、患者が革新的なヘルスケアソリューションの恩恵を受けられるように、さらに多くのことができるようになる。

それは、患者がデジタルサービスを利用できるようにサポートし、指導することで可能となる。

例えば、薬局チームは電子患者記録(EPR)の受け入れを促進し、患者がEPRや電子投薬計画(eMP)を利用するのをサポートすることができる。

このように、薬局チームは(デジタル)ヘルスリテラシーを強化し、デジタル化が進む世界において、独立した医療サービスの窓口や仲介者として機能することができる。

ますますデジタル化が進む世界で、彼らは独立した医療情報の窓口であり仲介者である。


濫用等のおそれのある医薬品の成分指定に係る研究(2024厚生労働科学研究)

2024年委実施された医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究の報告書がアップされました

濫用等のおそれのある医薬品の成分指定に係る研究(現時点では未アップ)
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/177774

先行して、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部HPにアップされました
https://www.ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/report/index.html

各成分の依存性や乱用につながる精神作用性などに関する情報を収集・整理し「濫用等のおそれのある医薬品」の指定範囲に関する見解案を作成した

報告書全文
https://www.ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/report/pdf/24KC2005.pdf

全国29施設から報告された294症例について検討
患者の平均年齢は29.1歳、女性が71.4%を占めた
製品の具体名も例示

(分担研究1)(p19-)
全国の依存性専門医療機関を受診する患者における市販薬乱用の実態に関する研究
https://www.ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/report/pdf/24KC2005.pdf#page=22

有効成分
ジヒロドコデイン 55.1%
 エスエスブロン錠、パブロンゴールドA、新ルル

デキストロメトルファン 34.7%
 メジコンせき止めPro、新コンタック、エスエスブロン液L

ジフェンヒドラミン 17.7%
 レスタミン、ドリエル

ブロモバレリル尿素 15.3%
 ウット、ナロン錠

アリルイソプロピルアセチル尿素 7.1%
 イブ、ロキソニンSプレミアム、新セデス錠、バファリンプレミアム

カフェイン製剤 3.4%
 エスタロンモカ

乱用時の使用量(平均)は
 エスエスブロン錠 50.6錠
 パブロンゴールドA 63.2錠
 ナロン錠 21.8錠
 メジコンせき止めPro 37.9錠
 新コンタック錠 29.0錠
 レスタミン 84.6錠

乱用される製品には「ブランド嗜好性」があることが明らかになった

SNSなどのインターネットを乱用の情報源とし、「幻覚がみえる」という効果を期待しているといった臨床的特徴もみられた

日本中毒情報センターに問い合わせのあった市販薬の意図的摂取の事故を集計解析することにより、事故発生状況を明らかにした

(分担研究1)(p59-)
市販薬の意図的摂取に関する問い合わせの集計及び解析業務(委託)
https://www.ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/report/pdf/24KC2005.pdf#page=62

意図的摂取の問い合わせ件数が多かったもの

162件 エスエスブロン錠
79件 イブA錠
75件 メジコンせき止め錠Pro
67件 バファリンA
58件 エスタロンモカ錠
53件 レスタミンコーワ糖衣錠
48件 新ルルA錠s
44件 パブロンゴールドA〈錠〉
30件 ウット

学術文献により、その主成分の薬理作用、中毒症状または薬物依存性等を調査し、それらの情報をまとめた

(分担研究2)(p99-)
乱用等のおそれのある医薬品の追加候補となる薬剤に関する文献的調査
https://www.ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/report/pdf/24KC2005.pdf#page=102

デキストロメトルファン
アリルイソプロピルアセチル尿素
ジフェンヒドラミン
カフェイン
コデイン
ジヒドロコデイン
メチルエフェドリン
ブロモバレリル尿素
エフェドリン
プソイドエフェドリン

について調査検討

あSNSでの書き込みで不適正使用されていると推察される市販薬の販売名の把握し、上位5品目についてさらに解析

(分担研究3)(p127-)
ソーシャル・ネットワーキング・サービスを情報源とするテキストマイニングおよび予防啓発に関する研究
https://www.ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/report/pdf/24KC2005.pdf#page=130

研究班ではこれらを踏まえ次のような見解をまとめています

濫用等のおそれのある医薬品の成分指定に対する見解案

  1. デキストロメトルファン及びジフェンヒドラミンは、数多くの市販薬症例、意図的摂取による中毒情報の報告があり、乱用に伴う健康被害を文献上でも確認できることから、直ちに「濫用等のおそれのある医薬品」として指定すべきである
  2. カフェインは、依存症としての症例報告は限られているが、意図的摂取による中毒情報の報告や、心電図異常の出現などが報告されていることから、何らかの販売規制が必要である
  3. アリルイソプロピルアセチル尿素は、国際的に医薬品として使われておらず、乱用に伴う健康影響に関する情報が乏しいが、国内の依存症専門医療機関からは一定数の症例が報告された
    すでに「濫用等のおそれのある医薬品」に指定されているブロモバレリル尿素も含めて、医薬品として承認の妥当性についても検討していくことが必要と考えられる

薬物乱用・依存状況の実態把握のための全国調査と近年の動向を踏まえた大麻等の乱用に関する研究(2024厚生労働科学研究)

2024年に実施された医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究の報告書がアップされました

薬物乱用・依存状況の実態把握のための全国調査と近年の動向を踏まえた大麻等の乱用に関する研究(現時点では未アップ)
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/177698

先行して、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部HPにアップされました
https://www.ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/report/index.html

報告書全文
https://www.ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/report/pdf/shimane2024.pdf

家にある市販薬を乱用手段として使われている実態を考えると、濫用等のおそれのある成分を含む大包装品の販売のあり方や是非について考える必要があるかもしれません。

(分担研究2)
飲酒・喫煙・薬物乱用についての全国中学生意識・実態調査(2024年)
https://www.ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/report/pdf/J_NJHS_2024.pdf

過去1年以内の市販薬の乱用経験率は1.8%乱用した市販薬の入手先は、薬局・ドラッグストア等の実店舗(64.2%)が最も多く、家の常備薬(33.3%)、有人・小人・知人(3.6%)、インターネット(3.5%)と続いた

乱用経験率には性差が見られ、男子生徒(1.5%)に比べて、女子生徒(2.0%)が高い傾向にあった

「家の常備薬」を入手経路とする回答も一定の割合でみられたことから、家庭内での医薬品管理を徹底することの重要性を保護者に周知することが求められる

一方、全ての違法薬物の生涯経験率は、前回調査に比べて減少

(分担研究3)
全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査(2024年)
https://www.ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/report/pdf/J_NMHS_2024_2.pdf

市販薬関連例では、特に若年層や情勢の増加が特徴的
今後の薬物対策は、「逮捕されない薬物」濫用に関する対策が重要な課題

主たる薬物
覚醒剤 45.5%、睡眠薬・抗不安薬 17.4%、市販薬 15.1%

睡眠薬・抗不安薬の内訳
エチゾラム 38.9%
ゾルピデム 33.8%
フルニトラセパム 25.2%
トリアゾラム 15.5%

市販薬
コデイン含有群 61.4%
デキストロメトルファン含有群 38.1%
ブロムワレリル尿素主剤群 13.1%
ジフェンヒドラミン主剤群 10.1%
アリルイソプロピル尿素含有群 6.4%
カフェイン単剤群 3.5%

(分担研究4)(p157-)
救急医療における薬物関連中毒症例に関する実態調査~一般用医薬品を中心に
https://www.ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/report/pdf/shimane2024.pdf#page=160

8施設で行われた、一般用医薬品の過量服用に関する大規模疫学調査
124例中女性が79%(98人)を占めた