OTCの購入履歴は業務上知りえた秘密に該当するか?

 顧客の囲い込みにドラッグストアなどでも導入が進むTポイントですが、朝日新聞がOTCの購入履歴が他社に提供される可能性があるとして、疑問を投げかける記事を掲載しています。

Tポイント、医薬品の購入履歴を取得 販促活動に利用
(朝日新聞7月17日 今のところ全文アクセス可)
http://www.asahi.com/national/update/0717/NGY201207160032.html

記事へのツイート→リンク

 記事にもあるように、ドラッグストアでのOTC購入履歴が、「育毛剤を買った人に他社のかつらの広告が送られる」、「関節の痛みを和らげる薬を買った人に他社の健康食品を勧める広告が送られる」という可能性があるということで、記事では、業務上知り得た人の秘密を漏らすことを禁じる刑法134条に抵触する可能性があると指摘しています。

houko.com.
http://www.houko.com/00/01/M40/045.HTM#s2.13

(刑法)
第13章 秘密を侵す罪

(秘密漏示)第134条
医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

  問題は、OTCの購入履歴が知りえた秘密情報にあたるかですが、刑法で「医薬品販売業者」と明記されている以上、これは該当する可能性があります。(調剤での利用履歴はこれに該当しないのだろうか?)

 これに、処方せん調剤による使用履歴があれば、当然健康食品メーカーからなどのDMの対象にさらされることはいうまでもありません。

 自社のポイントカードの購入履歴で、自社の販促に活用されるのは顧客も容認できるでしょうが、これを他社に利用され、知らないところから自分の病気関連のDMや広告が来るとなると、さすがに考えさせられるかもしれません。

 10月からの調剤ポイント禁止を控え、購入履歴(使用履歴)が他社に利用される可能性がある現在のTポイントへのポイント付与については、一考の余地がありそうです。

関連情報:TOPICS
 2012.02.10 調剤ポイント付与禁止の施行は10月に延期


2012年07月17日 14:01 投稿

コメントが11つあります

  1. アポネット 小嶋

    朝日新聞の記事へのツイートが1200を突破、反響がかなり大きいようです。

    そもそもポイントの導入というのは顧客へのサービスではなく、顧客の購入傾向や嗜好などの個人情報の収集が目的だから、個人的には驚くことではないのですが、ツイートを見ると「えーっ」という感じのつぶやきが多いようですね。

    記事にもありますが、処方せん医薬品についても「調剤」として代金だけが送られるということですが、これを会員の年齢や性別、購入日時などの情報と結びつけられれば、個人情報として十分特定できるのではないでしょうか?

    例えば、高額の一部負担金を定期的に払っていることがわかれば、

    「この人高い薬を使っているから、難しい病気かも」

    と推測される可能性もあります。

    これに加え、がんに効くとされている健康食品などを買っている履歴があれば、この人は・・・ということになりますよね。

    この時点で、業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたということになるとも考えてしまうのですが。

    Tポイント導入をアピールしている調剤薬局さんは要注意ですよ。

  2. アポネット 小嶋

    参考まで、T会員規約の個人情報に関わる部分の抜粋です。

    Tポイントを導入している企業さんは、導入(切り替え)時に当然説明しているんでしょうね。

    T会員規約
    http://www.ccc.co.jp/member/agreement/index.html#agreement04
    http://www.ccc.co.jp/fileupload/pdf/member/20111001_Tmember.pdf#page=5

    第4条 (個人情報について)
    1.個人情報のお取扱い
    当社は、本条第2項記載の会員の個人情報を必要な保護措置を講じた上で取得し、本条第3項記載の各利用目的のために利用させていただきます。また、本条第4項記載の共同利用者と本条第3項記載の各利用目的のために本条第2項記載の個人情報項目を共同して利用させていただきます。(以下略)

    2.当社が取得する会員の個人情報の項目
    (1) 「お客様登録申込書」の記載事項及びT ログインID お申し込み時の登録事項(変更のお申し出の内容を含みます)氏名、性別、生年月日、住所、電話番号、電子メールアドレス等
    (2) ポイントプログラム参加企業における利用の履歴
    (8) サービスご利用内容

    3.利用目的
    (3)会員のライフスタイル分析のため
    (4)会員に対して、電子メールを含む各種通知手段によって、会員のライフスタイル分析をもとに、または当社が適切と判断した企業のさまざまな商品情報やサービス情報その他の営業案内または情報提供のため

    4.共同利用者の範囲及び管理責任者
    ・当社の連結対象会社及び持分法適用会社
    ・ポイントプログラム参加企業(TSUTAYA 加盟店を含みます)
    本条第3項の利用目的のための共同利用に関し、個人データの管理について責任を有する事業者は当社とします。

    5.会員がポイントサービスの利用のためにポイントプログラム参加企業においてTログインIDを入力又はT カードを提示した場合、当社とポイントプログラム参加企業との間において当該会員の個人情報が相互に提供されることについて、当該会員は同意したとみなされることとさせていただきます。かかる個人情報の提供にご同意いただけない場合には、ポイントプログラム参加企業におけるポイントサービス(ポイントの付与及び使用を含みます)をご利用いただくことはできません。

    6.当社は、運営業務の一部を守秘義務契約を締結した委託先に委託しています。委託先は、委託業務を遂行するために必要な個人情報に接し、これを利用します。

    9.個人情報のセキュリティについて
    当社では、個人情報を利用目的に応じて必要な範囲内において、正確かつ最新の状態で管理しております。これらの個人情報は漏洩、減失、毀損などのリスクに対して、経済産業省が告示した「個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドライン」に準拠し、技術面及び組織面において合理的かつ厳正な安全対策を講じます。

  3. アポネット 小嶋

    掲示板で指摘があったので確認してみました。

    何と、2004年7月に開催された、第4回 厚生科学審議会医薬品販売制度改正検討部会でのやりとりです。

    どうも、刑法では法人は処罰できないということらしいです。

    (資料2-2)医薬品販売業者に係る刑法の秘密漏示罪について
    http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/07/s0721-6c.html

    【1】 法人への適用について
    ○  刑法134条第1項は、両罰規定(注1)が存在しないことから、法人処罰を認めていないものとされている。

    【2】 薬局・薬店の従業員等への適用について
    ○  刑法134条第1項は、秘密漏示の主体を限定しており、それ以外の者については本条の適用はない。そして、「医薬品販売業者」とは、許可を受けて医薬品の販売業を営む者とされているため、刑法第65条第1項(注2)の規定に該当する場合を除き、薬局・薬店の従業員は本罪の主体たりえないものとされている。
    ○  なお、薬局・薬店の従業員が職務上知り得た秘密を漏らしても、本条を根拠に、その雇用主や法人の代表者に罰則を科すことはできない。

    (注1): 両罰規定
    ○  両罰規定とは、「犯罪が行われた場合に、行為者本人のほかに、その行為者と一定の関係にある他人(法人を含む。)に対して連座的に刑を科する旨を定めた規定をいう」。(『法令用語辞典【第八次改訂版】』(学陽書房))
    ○  両罰規定の例:薬事法第89条
     
    第八十九条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、第八十四条、第八十五条、第八十六条第一項、第八十七条又は第八十八条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
    (注2): 刑法第65条第1項(身分犯の共犯)
    ○  犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする。

    議事録から引用
    http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/07/txt/s0721-3.txt

    事務局
    続きまして資料2-2についてご説明をさせていただきます。これにつきましても第3回部会におきまして事務局のほうから、販売業者に関する守秘義務、秘密を守るという義務につきまして刑法の、この資料の一番上にございます第134条の規定につきましてご説明をさせていただきましたところ、部会長代理のほうから法人の適用等につきましてご質問があったところでございまして、刑法を所管しております法務省にも確認をした上でまとめさせていただいた資料でございます。
     刑法の第134条でございますが、ここにございますとおり薬剤師、それから医薬品販売業者、またはこれらの職にあった者が正当な理由がない中で人の秘密を漏らしたというときには罰金に処すると、このようになっているわけでございますが、業者が法人であった場合には(1)のほうでまとめさせていただいておりますとおり、両罰規定がこの条文の中にはないということでございますので、法人処罰は認められていないと。あくまでも業者個人に対する罪という形になるところでございます。
     それから(2)でございまして、薬局・薬店の従業員の適用についても確認をしております。この最初の○にございますとおり、あくまでも秘密を漏らした場合の主体をこの条文においては限定しているということでございまして、刑法の基本的な考え方に基づきまして主体をきちんと限定したものについてのみ処罰を行うと、このような基本的な考え方があるということでございますので、これ以外のものには適用がない。すなわち従業員につきましては販売業者というわけではないということでございますので、本罪の主体とはなり得ないと、このようになっているところでございます。
     なお、この2つ目の○にございますとおり、従業員が職務上知り得た秘密を漏らした場合でも、雇用主や法人の代表者に罰則を科すこともできないとこういうことになっているわけでございまして、刑法の第134条の規定の意味と言いますのは、薬剤師個人あるいは医薬品販売業者、許可を得た者というものが秘密を漏らしたという場合のみ限定して処罰されると、このような解釈になるということでございます。
     注1としまして、両罰規定についてまとめさせていただいております。それから注2におきまして、ここにつきましては上のほうの(2)の最初の○のところに関連するものでございますが、身分犯の共犯というような形で販売業者自ら、許可を受けた者自ら、それからその従業員が一緒に共犯した場合の取り扱いについては共犯になるということで、注意書きでまとめさせていただいているということでございます。資料2-2はこういう形でまとめさせていただいたものでございます

    これに対し、

    松本部会長代理
     はい、特に2-2につきまして今事務局からご説明をいただいたわけですが、この刑法上の秘密漏示の責任を負う者として、医師から公証人まで挙がっている中の今お話を聞く限りでは、医薬品販売業者というのだけがちょっと特殊な、少し場違いなと言うか、少し違ったタイプではないかなと。と言いますのは、他は皆個人の資格とか職能でありますが、医薬品販売業者だけは一種の業態で押さえているというのが少し異質であるということと、もう一つ、「販売業の許可を受けている者」という押さえ方ですから、そうしますと個人で販売業をやっている場合には個人になるけど、会社とか有限会社で法人が販売業の許可を取ってやっている場合には、これは法人になるんですが、今のご説明だと法人はそもそも罰則の対象外である。しかも、個人がやっているわけではないから、代表であるところの経営者個人、あるいは従業員も、医師とか薬剤師の資格を持っていない限りこの法律上秘密漏示罪には問われないということになる。逆に薬剤師とか医師の資格をもっていなくても、個人として販売業の許可を得て事業をしている者は、そういう専門の資格を持っていなくても刑法で罰せられるということで、ここの点でもなにかアンバランスな感じがしますので、個人情報保護につきまして特に医療・健康関係はより強く保護しろという声が強いわけですから、そのへんの見直しをされるときにこの刑法の条文も見直しをするべきではないかなと思います。

    まさかここまで見越しているわけではないですよね。

  4.  刑法第134条の列挙されているものは、「医薬品販売業者」を除き、自然人の内で特別な資格を付与された者であるのに対し、これだけは特定の営業許可を得た者ということで、自然人以外の法人も概念的には含まれるように思われるため、異質な感じがしていました。
     また、薬事法には「医薬品販売業者」の定義はなく、この刑法第134条に規定する者はだれなのか、あいまいです。例えば、薬局開設者は含まれるのでしょうか? また、医師や歯科医師が自ら調剤して患者に交付した場合は、販売に当たらないということでしょうか?
     無論、国内外から非合法に入手した医薬品を業の許可を得ずして売却した場合は、それが反復・継続、多数という、業の定義に当たるならば、含まれるのでしょうか?

  5. 守秘義務は無理と思いますが、カード導入を決めた法人のドラッグ・薬局には、厚生局か県が指導すべきじゃないですか?
    個人情報保護法ができた時に、適用事業者だけでなく、医療機関・薬局は全て遵守しろと強いメッセージがあったんですから。
    その内容からしたら、カードを使った場合の情報の提供の説明を行っていなければいけないと思います。
    店はカードを使えるようにしただけで、個人の意志でカードを使うので、カード規約には書いてあるし・・・って問題じゃないと思います。
    ちゃんと店内に掲示して説明すべきです。
    喉元過ぎて何とやら、なら、厚労省の通知って意味がない事になります。

    それと、刑事罰は難しいなら、後はこんな事知らなかったデーターが勝手に流れた精神的苦痛・・・・で、民事で誰か裁判起こすしかないんですかね?、現状では。
    何にしても厚労省が後手に回ってる気がします。

  6. アポネット 小嶋

    今回の問題で冷静に考えてみればわかっていたことなのですが、Tポイント/自社独自のポイント(カード)と、クレジットカードのポイント(カード)は違うものじゃないかって。

    前者の目的は、個人情報を提供してもらうことに対し、会社やグループ間の販促活動のお礼として付与されるものであるのに対し(おそらく導入会社は逆の言い方をすると思いますが)、クレジットカード会社が付与するものに関してはクレジットカードでの支払いに対するお礼であって性格が異なるものではないかと。(違っていたらご指摘下さい)

    ですから調剤ポイント問題も、ポイント付与の目的がそもそも違うのにそれを、「クレジットカードは認めているのに、消費者へのサービスを妨害するのか」と主張するのはちょっと違和感も。

    なんでいまさら! 処方薬ポイント付与禁止、“朝令暮改”にドラッグストア反発
    (Sankei Biz 2012.07.19)
     http://www.sankeibiz.jp/macro/news/120719/mca1207190505005-n1.htm

    ツイッターでの声を見ると、どうも自社独自のカードからTカードに移行する際に、「Tポイント提携先でのお買い物にご利用頂けます。」とお得感を説明するだけで、必ずしも十分な説明が行われていないケースも少なくないようです。

    ウェルシア関東のWEBに行ってみましたが、Tポイントの規約もなければ、Tポイントへのリンクも貼られていないようです。(おそらく入会時に規約くらいは渡しているのかなあ?)

    お知らせ ウェルシア関東
    http://www.welcia-kanto.jp/info/t-point.html

    生活者が知らなかっただけなのかもしれませんが、ぼんたさんが指摘されるように、少なくともTポイントを導入している薬局・薬店では、「利用情報は、加盟企業のさまざまな商品情報やサービス情報その他の営業案内または情報提供のために利用されます」ということを掲示などでもっと周知することくらい必要かと思います。(罰せられなくても、刑法に抵触する可能性があるのだから)

  7.  「Tポイント/自社独自のポイント」と「クレジットカードのポイント」を異なったものとする考えには、賛同できません。 クレジットカード会社も、当然に売上内容の収集を行い、それに基づいた販促を実施している筈です。それでなければ、利用を奨励するポイント付与を実施する意義はありません。
     また、規約の説明は、ご指摘の通り必要不可欠と思われます。

  8. アポネット 小嶋

    ご指摘ありがとうございます。

    ということは、クレジット会社も含めて、ポイントカードは発行の形態にかかわらず、やはり販促が(主)目的ということになるのですね。

    ということは、便利だと思われた病院でのクレジットカードでの支払いももしかすると、履歴が相互利用される場合があるということになるのでしょうか?

    そうなると本当に、利用にあたっては本人の同意をきちんととることが必要ですね。

  9. クレジットカードも共同会社のサービス利用のために提供する事があると書いてありますが、提供されるのが嫌なら申し出て下さいとあります。
    共同利用を拒否した場合でもカードの利用はできます。
    でもTポイントは同意できないなら使えないんですよね。

    医療機関などのカード利用も市場調査に利用可能と言う事ですよね?・・・・あくまでも自主規制でしかなく、T-カードのように金額だけとかで、別に厚労省が何か規制してるわけじゃないですよね?

    そう考えると、カード支払の場合情報を利用されるのを拒否されるならその旨カード会社に申し出が必要と医療機関で十分な情報提供する(個人情報保護法の遵守の視点から)とか、何らかの規制(医療機関での使用は共同利用できないとか:あったらすみません)をするとか、もう1回考えないといけないんじゃないでしょうか?

  10. くまさんのサイトで、蔦屋(CCC)の規約へのリンクもあり、文面からは情報提供を断っても、それを以って利用を拒否することはしませんとしています。 もっとも、カード発行後でもその更新を拒絶、或いは利用を停止する事が出来るとしていますし、情報提供を断っても実行されるまでは手間がかかりそうです。 むしろ、申し込みにおいて選択させないならば、それも問題かもしれません。

  11. 規約なのですが、個人情報のとこしか熟読してませんが。
    『・・・但し、本条第3項(4)記載の利用目的にご同意いただけない場合でもこれを理由に入会をお断りすることや退会の手続きをとることはございません。この場合、会員は、当社に対して本条第3項(4)記載の利用目的に基づく会員の個人情報の利用停止を申し出ることができます。』
    →(4)会員に対して、電子メールを含む各種通知手段によって、会員のライフスタイル分析をもとに、または当社が適切と判断した企業のさまざまな商品情報やサービス情報その他の営業案内または情報提供のため

    であって。
    (3)会員のライフスタイル分析のため
    は同意しなくても分析されるのではないでしょうか?
    (6)も何かひっかかる言い回しなんですが・・・・

    何にしても、利用停止の申し出ができる以上、カード取扱い店は説明必要と思います。