後発医薬品への変更進まず、処方せん書式の変更も視野に

 厚労省は、7日に開かれた中央社会保険医療協議会・診療報酬改定結果検証部会に、昨年4月の後発医薬品促進策(処方せん書式の変更)の影響を調べるために行われた、後発医薬品の使用状況調査(全国の保険薬局から無作為で抽出された1,000薬局を対象に行われ、583薬局から回答)の速報値を報告しました。

第15回中央社会保険医療協議会診療報酬改定結果検証部会資料(2007年11月7日開催)
   資料(厚労省 11月9日掲載) 資料(WAM NET 11月9日掲載)

 今回の調査は、2007年7月1ヶ月間に取り扱った処方せんについてを詳しく分析したもので、下記のような結果が得られています。(( )内の数字は、前回2006年10月に行われた調査結果)

薬局数ベース
(回答薬局数583)
薬局数 回答のあった薬局に占める割合
1)1ケ月間の取り扱い処方せんのうち、後発医薬品への変更可欄に処方医の署名等がある処方せんを取り扱った薬局 489 83.88%
(86.46%)
処方せんベース
(総取り扱い枚数755,545枚)
(1薬局あたりの1,296枚)
総枚数
(n=576)
1薬局あたりの平均枚数
(n=576)
全処方せんに占める割合 「後発品への変更可」署名処方せんに占める割合
1)全処方せんのうち、「後発医薬品への変更可」欄に処方医の署名等がある処方せん枚数 131,337枚 228枚 17.38%
(17.06%)
2)1のうち、実際に後発医薬品に変更した処方せん枚数 (1品目でも変更した場合も含む) 10,709枚 18.6枚 1.42%
(0.97%)
8.15%
(5.71%)
3)2のうち、後発医薬品情報提供料を算定した処方せん枚数 3,168枚 5.5枚 2.44%
(0.55%)
2.41%
(3.22%)
4)1のうち、「後発医薬品へ変更可」欄に処方医の署名等はあるが、処方せんに記載された全ての銘柄について後発医薬品が薬価収載されていないために、後発医薬品に変更することができない処方せん枚数 14,504枚 25.18枚 1.92%
(1.47%)
11.04%
(8.63%)

 上記の表の通り、後発医薬品への変更可の処方せんを1枚でも取り扱ったことのある薬局の割合は83.9%(前回調査:86.5%)で、前回並みでした。これを処方せんベースでみても、「後発医薬品への変更可の処方せん」は全体の17.4%で、前回調査17.06%からほとんど変わりませんでした。また、実際に後発医薬品に変更された処方せん枚数の割合についても8.2%で、前回調査5.7%から微増に留まりました。

 さらに、「全ての銘柄について後発医薬品が薬価収載されておらず、変更が不可能だった」処方せんは11.04%で、依然として処方医が後発医薬品の有無の確認をしないままに処方している実態が明らかになりました。

 一方、今回の調査では処方せん発行する医療機関(2,000診療所、1,000病院)や医師(一般診療所2,000人、病院2,000人)への調査も行われています。うち医師についての調査は下記のような結果が得られています。

回答医師数
診療所417人、病院651人
合計 診療所
医師
病院
医師
「後発医薬品への変更可」欄に署名した処方せんを発行したことがある 62.3% 66.4% 60.5%
後発医薬品の処方に関する考えに近いものはどれか 特にこだわりはない 69.2% 64.5% 72.2%
患者からの要望がなくても後発医薬品を積極的に処方 11.0% 14.9%  8.6%
患者からの要望があっても後発医薬品は基本的には処方しない 17.9% 18.9% 17.2%

 上記の表のように、後発医薬品の処方への抵抗がそれほど高くない現状が明らかになっていますが、約2割の医師が「患者からの要望があっても後発医薬品は基本的には処方しない」との回答を行っています。

 処方しないと答えた医師は、その理由として、後発医薬品の品質への疑問(85.3%)、後発医薬品の効果への疑問(70.7%)、後発医薬品の副作用への不安(51.3%)、後発医薬品の安定供給体制の不備(43.5%)、後発医薬品の情報提供の不備(64.4%)、後発医薬品に関する患者への普及啓発(2.6%)などを挙げています。

 厚労省では、後発医薬品への変更が進んでいないとする今回の結果を受け、9日の中央社会保険医療協議会に、2008年度以降は医師が「後発薬への変更不可」と判断した場合のみに署名する様式に変更する改革案を提示するだろうと各紙は伝えています。

関連情報:TOPICS
          2007.04.25 後発医薬品の使用状況調査報告書
          2007.04.22 後発医薬品優先使用に方針転換へ
          2007.02.01 後発医薬品変更可の処方せんは17%に留まる(厚労省調査)

参考:ジェネリック医薬品意識調査、
     医師は強い抵抗感なし、薬局での対応は消極的
     (薬事日報 HEADLINE NEWS 11月8日)
    http://www.yakuji.co.jp/entry4902.html
    日本経済新聞11月8日 他

11月8日 18:50掲載 9日13:00更新


2007年11月08日 18:50 投稿

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