FDA諮問委、Mevacorのスイッチは今回も認めず

 13日、米FDAの非処方せん薬諮問委員会(Nonprescription Drugs Advisory Committee)と内分泌代謝薬諮問委員会(Endocrinologic and Metabolic Drugs Advisory Committee)の合同会議が開催され、Mevacor(一般名:Lovastatin、本邦未発売)のOTC化を認めるかどうかの審議が行われましたが、評決の結果、10対2(棄権1)の大差でMevacorのスイッチは認めないとするとした結論が示されました。

 委員会では、多くの団体の代表が意見を述べましたが、服用が必要としない人や本来医師の治療が必要な人が購入したり、また誤った使われた方がされる可能性があると指摘され、メルク社の3度目の挑戦も失敗に終わりました。

FDA Should Deny Over-The-Counter Access to Risky Cholesterol Drug
(Public Citzen 2007.12.13)
http://www.citizen.org/pressroom/release.cfm?ID=2568

各紙が伝えるところによると、委員会では次のような点が指摘されています。

  • 購入を希望する(potential customer)1500人を対象とした調査によれば、4分の1が心臓病のリスクを持つような対象の人ではなかった。これは即ち、不必要な副作用に直面することを意味する
  • 購入を希望する30%の人は、心臓病や糖尿病を持っている、心臓病の発作の経験者など、本来意思の医師による治療を受けるべき人たちであった
  • 購入を希望する人の30%以上が既により強力なコレステロール低下剤を服用している(価格の安いもので代用したい?)
  • 1日あたり1~1.5ドルの販売価格を予定しているが、同様のスタチンが保険で1ヶ月4~15ドルで供給されている現実がある

 今回の諮問委員会の評決によれば、メルク社が示した妊婦への投与禁忌・横紋筋融解症・肝障害への注意書きについては一定の評価を得られていますが、なぜ諮問委員会はスイッチを認めなかったのでしょうか? それは12日のTOPICSでも述べましたが、薬剤師のカウンセリングを重視せず、販売を「セルフ販売」を前提としていることがその背景にあると考えます。

 自由の国アメリカであり、「自分のことは自分で考える」ということなのでしょうが、パッケージのラベルの工夫が行われたとしても、消費者はメーカーが考えるような行動をとるとは限りません。大衆薬に過度に期待する人もあれば、注意書きを間違って捉える人もいるからです。このことがやはり最終的にネックとなったようです。

 実際、米国ヘルスシステム薬剤師会(American Society of Health-System Pharmacists)では、今回の諮問委員会で現状の販売方法ではスイッチには賛成できないとする意見を委員会で表明しています。

FDA Advisory Committees Oppose OTC Status for Statins
(ASHP Press Releases and Announcements 2007.12.14)
http://www.ashp.org/s_ashp/article_press.asp?CID=168&DID=2037&id=23527
http://www.ashp.org/menu/News/NewsCapsules/Article.aspx?id=129

 おそらく、米国ではBehind-the-counter薬というカテゴリーが導入され、「スイッチ薬の販売方法は薬剤師を通じて行う」という仕組みが作られない限り、今回のスタチンを初め、カウンセリングが必要な治療薬(偏頭痛治療薬、ピルなど)は今後ともスイッチされることはないと考えます。医療制度が異なるとはいえ、ピルのOTC化を考えている英国とは大きな違いです

 さて、わが国でも第一類医薬品に期待が集まっていますが、情報作りや販売の仕組みははメーカー任せの感が否めません。確かに、処方せん医薬品の知識さえあれば対応ができるのかもしれませんが、トランシーノやアシクロビル軟膏などは医薬品の知識のみで対応できるわけではありません。むしろ、メディアやインターネットによる情報ばかりが先行しているのが気になります。

 日薬は、英国のように特に指導が必要なスイッチ品について、積極的に個々の販売方法について独自に検討し、会員に徹底させるという仕組みは作らないのでしょうか? 今回のFDA諮問委員会の報道を見ると、日本のOTC販売の現状は米国と変わりないことから、処方せん薬のスイッチ化はいつか行き詰るではないかと考えてしまいます。

関連情報:TOPIC 2007.12.12 スタチンのOTC化に支持が得られるか?(米国)

参考:
Switch to OTC lovastatin not recommended by FDA advisors
(Pharmacist.com 2007.12.14)
https://portal.pharmacist.com/AM/Template.cfm?Section=Pharmacy_News&template=/CM/HTMLDisplay.cfm&ContentID=14746
ASHP to FDA: Pharmacists Needed to Guide Use of Nonprescription Statins
(ASHP Press Releases and Announcements 2007.12.13)
http://www.ashp.org/s_ashp/article_press.asp?CID=168&DID=2037&id=23501
http://www.ashp.org/menu/News/NewsCapsules/Article.aspx?id=126
FDA Advisers Reject Over-the-Counter Statin
(HealthDay News 2007.12.13)
http://www.healthday.com/Article.asp?AID=610838
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/12/13/AR2007121300943.html
Advisers reject OTC sale of cholesterol drug
(USAToday 2007.12.13)
http://www.usatoday.com/news/health/2007-12-13-cholesterol-drug_N.htm

12月16日22:40更新


2007年12月14日 11:20 投稿

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