英国NICE(National Institute for Health and Clinical Excellence:英国国立医療技術評価機構)は19日、頭痛に関する診療ガイドラインを公表しています。
Could painkillers be causing your headaches?
(NICE Press Release 2012.09.18)
http://www.nice.org.uk/newsroom/pressreleases/CouldPainkillersBeCausingHeadaches.jsp
Headaches: diagnosis and management of headaches in young people and adults
(NICE 2012.09.19 Update)
http://www.nice.org.uk/guidance/index.jsp?action=byID&o=13901
頭痛の診療ガイドラインという、日本では頭痛学会が2005年3月に作成し、mindsにも掲載されている慢性頭痛の診療ガイドライン(現在改訂作業中ですが)が有名ですが、今回のNICEのものと比べてみたところ、多くの部分で同じ内容でしたが、一部に若干の違いもありました。
慢性頭痛の診療ガイドライン
厚生労働科学研究費補助金 こころの健康科学研究事業
(慢性頭痛の診療ガイドライン作成に関する研究班)http://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0025/G0000061/0001
そこで、目に留まったところを抜粋したいと思います。(数字は、NICE Guideline のManagement の番号。勧告理由は Full Guidline にエビデンスなどの理由があります)
- 全ての頭痛において頭痛日記を書くことを考慮する(1-3-1)
- 緊張型頭痛(Tension-type headache)の急性期の治療には、合併症や有害事象などを考慮してアスピリンやアセトアミノフェンを用いることを考慮する(1-3-7)
- 緊張型頭痛の急性期の治療にはオピオイド(日本だとトラムセット配合錠が該当?)を与えないこと(1-3-8)
- 緊張型の頭痛の予防的治療には10回の鍼(はり)治療(5~8週間かけて)も考慮する(1-3-9)
- 偏頭痛の急性期の治療には、合併症や有害事象などを考慮して、経口のトリプタン製剤とNSAIDsの合剤か、経口のトリプタン製剤とアセトアミノフェンの合剤を与えなさい、12-17歳には希望があれば、点鼻タイプのトリプタン製剤を考慮する(1-3-10)
- 単剤のタイプを希望する場合は、経口トリプタン製剤、NSAIDs、アスピリン(900mg)、アセトアミノフェンを考慮する(1-3-11)
- トリプタン製剤を選ぶときはまず調達コストが安いものから使用し、効果がなかった他剤に変更する(1-3-12)
- 吐き気や嘔吐などの症状がないとしても偏頭痛の急性期には制吐薬の追加を考慮する(1-3-13)
- 偏頭痛の急性期の治療には、エルゴタミンやオピオイドを与えないこと(1-3-14)
- 経口などによる急性期の治療が無効な場合は、メトクロプラミドまたはプロクロルペラジンの非経口の製剤を与え、非経口のNSAIDsまたはトリプタンを追加することを考慮する(1-3-15)
- 偏頭痛の予防的治療には、合併症や有害事象などを考慮して、トピラマートかプロプラノロールを与えなさい。但し、妊娠可能な女性には催奇形や避妊薬の効果減少の可能性を考慮する(1-3-17)
- トピラマートかプロプラノロールで効果がない場合には、10回の鍼治療(5~8週間かけて)か、ガバペンチン(1200mg/日以上)の使用を考慮する(1-3-18)
- アミトリプチンなど他の予防的治療で偏頭痛がコントロールされているときは、必要に応じて投与を継続する(1-3-19)
- 予防的治療は治療開始後6か月たったら見直すこと(1-3-20)
- 1日1回400mgのリボフラビン(ビタミンB2)が人により偏頭痛の頻度や強さを減らす可能性があり助言される(1-3-21)
- 妊娠中の偏頭痛の急性期の治療にはアセトアミノフェンを与える。トリプタンやNSAIDsの使用は十分リスクについて話し合ってから考慮する(1-3-24)
- 群発頭痛(Cluster headache)の急性症状には、酸素吸入またはトリプタン製剤の皮下注または点鼻を行う(1-3-27)
- 群発頭痛の急性期の治療には、アセトアミノフェン。NSAIDs、オピオイド、エルゴタミン、経口のトリプタンは与えないこと(1-3-30)
- 反復性群発頭痛の予防的治療には、ベラパミルの使用を考慮する。治療開始時には心電図のモニタリングなどの専門的なアドバイスが求められる(1-3-32)
エルゴタミンは有害事象やエビデンスの少なさなどを考慮して、非推奨のようです。
ちなみに、トリプタン製剤は英国、独、ニュージーランドなどではOTCのものがあります。
関連情報:TOPICS
2012.04.12 偏頭痛予防の薬物治療ガイドライン(米国)
2012.04.12 偏頭痛予防に対するOTCや補完医療の有効性(米国)
2007.12.12 イミグラン自己注射
2006.05.19 スマトリプタンがOTCにスイッチ(英国)
2012年09月20日 00:27 投稿
関連記事です
「頭痛薬の過剰使用は逆効果」英NICEがガイドライン
(MT Pro 2012.09.20)
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1209/1209058.html
記事中の一般向けガイドラインは下記です。
CG150 Headaches: information for the public
http://www.nice.org.uk/nicemedia/live/13901/60881/60881.pdf
またNHS CHOICES でも関連記事を掲載しています。
Painkillers may be making a million headaches worse
(NHS Choices 2012.09.19)
http://www.nhs.uk/news/2012/09September/Pages/Painkillers-may-be-making-a-million-headaches-worse.aspx
薬剤師専売薬として、コデイン配合剤が鎮痛剤として存在していることに留意願います。 アスピリンや、アセトアミノフェンではダメな際に、登場する商品です。
そうでしたね。
ガイドラインではそこのところをあまり詳しくは触れていないような気もするのですが。
それと、OTCへの配合も2年前に結構制限がされていたはず、やはり乱用は今もあるのでしょうか?
最近の話題:
2009.09.04 ジヒドロコデイン配合OTC風邪薬,事実上使用禁止へ(英国)
2009.01.26 OTC鎮痛剤で依存が起こるか?(英国)