18日、10月30日に行われたニュージーランドMEDSAFEの医薬品の分類に関する委員会(Medicines Classification Committee Meeting)の議事録が公表され、オセルタミビル(タミフル)を処方せん医薬品から要薬剤師薬(restricted medicine)への分類を変更(reclassification )することが勧告されたそうです。
Classification of Medicines
Minutes of the October 2012 Classification Committee Meeting
(委員会議事録 2012.10.30開催、議題6-5)http://www.medsafe.govt.nz/profs/class/mccMin30Oct2012.htmhttp://www.medsafe.govt.nz/profs/class/Minutes/2011-2015/mccMin30Oct2012.htm
(今回は、他にも興味ある議案があります。紹介できれば・・・)
委員会に提出された再分類に関する資料
http://www.medsafe.govt.nz/profs/class/agen48Oseltamivir.pdfhttp://www.medsafe.govt.nz/profs/class/Agendas/agen48Oseltamivir.pdf
ニュージーランドでは、処方せん医薬品の区分のまま、2007年5月より、インフルエンザシーズン(5月~9月)に限り処方せんなしで販売できることが可能となっていますが、この5年の間適切に販売されていたこと、有用性が認められること、インフルエンザの流行は特定の時期に限られないことなどから、この期間限定のしばりを外し、要薬剤師薬への医薬品の分類変更を勧告しています。
分類の変更は以下の理由から支持されたそうです。
- the reclassification will reduce visits to general practice and the number of hospital admissions which could be a considerable cost saving for the New Zealand health system
再分類により、GPへの受診や入院数を減らし、ニュージーランドのヘルスシステムにおけるかなりのコスト削減につながる - early treatment of influenza is indicative of greater efficacy of treatment
インフルエンザの早期治療は、治療のより大きな有効性を示す - pharmacists are well placed to give advice on prevention and immunisation
薬剤師は、予防とワクチン接種についてのアドバイスをするのにふさわしい立場にある - recent research has shown that five years of non-prescription availability of oseltamivir in New Zealand has not resulted in any significant change in the development of resistance nor in the reduction of rates of influenza immunisation
最近の研究によれば、処方せんなしでの販売が行われた5年間、インフルエンサウイルスの耐性が増えたり、インフルエンザワクチンの接種率が低下することはなかった - the reclassification will increase the availability of Tamiflu in the event of a pandemic
再分類は、パンデミックの際のタミフルの有用性を高める - pharmacists have supplied Tamiflu professionally and appropriately
薬剤師は、専門的に、そして、適切に、タミフルを供給してきた - influenza infection is not limited to specific months of the year.
インフルエンザ感染は、特定の月に限られるわけではない
また、議論でも
- アルゴリズムで臨床診断基準を満たした患者に販売されていたというエビデンスがある
- タミブルによる耐性ははるかに少ない
- 安全に関するプロフィールが確立しており、乱用のリスクも低い
- 治療に有効とされる期間に患者がGPを受診することはしばしば難しい
- タミフルは、インフルエンザ接種プログラムへの補助薬としても使用されるので、アクセス拡大により予防マネジメントについての変更が必要かもしれない
といった分類変更を支持する意見が示され、委員会として次のような勧告を行っています。
That oseltamivir in 75 mg powder filled capsules should be reclassified from prescription medicine to restricted medicine, in a pack of up to 10 capsules, for the treatment or prophylaxis of influenza in adults and children aged 13 years and older.
13才以上の子どもと成人のインフルエンザの治療及び予防を目的として、最大10のカプセル入りオセルタミビル75mg含有のカプセル剤(の調剤)は、処方薬から要薬剤師薬まで再分類されるべきである。
今回の勧告に従えば、おそらく数か月以内に官報で要薬剤師薬への分類変更が告示されるものと思われます。
オセルタミビル(タミフル)の要薬剤師薬への医薬品の分類変更の検討については、豪州でも進められていて、TGAが医薬品の分類に関する委員会での検討を行うことを発表し、現在意見募集が行われています。
Invitation for public comment – ACMS and ACCS meetings, March 2013
(TGA 2012.11.29、下の方です)
http://tga.gov.au/newsroom/consult-scheduling-acmcs-1303.htm
ニュージーランドではこれまでも、ファムシクロビル、トリプタン製剤、スマトリプタンなど、日本では考えられないようなものも要薬剤師薬にスイッチされています。
Classification of Medicines~Database of Classifications(MEDSAFE)
http://www.medsafe.govt.nz/profs/class/classintro.asp
関連サイト:(リンク切れ)
Tamiflu Reclassified – Some Restrictions Removed
(Pharmaceutical Society of New Zealand Updated 14 September 2010)
http://www.psnz.org.nz/members/members_home/Tamiflu_reclass.aspx
the influenza diagnosis and Tamiflu supply protocol.
http://www.psnz.org.nz/members/members_home/documents/webTamiflu_Pharmacist_protocol.pdf
関連論文:(委員会でも取り上げていた論文。アブストラクトしか読めないのが残念)
Innovations from ‘down-under’: a focus on prescription to non-prescription medicine reclassification in New Zealand and Australia
(Self-care 3(5),p87-112,2012)
http://selfcarejournal.com/article/innovations-from-down-under-a-focus-on-prescription-to-non-prescription-medicine-reclassification-in-new-zealand-and-australia/
関連情報:
2007.05.16 シーズン中は、処方せんなしでもタミフルが入手可能に(NZ)
2012.09.07 タミフルOTC化でも耐性増やワクチン接種率低下は認めず(NZ)
2012.09.06 インフルエンザワクチンとトリメトプリムの再分類(NZ)
12月19日 9:05リンク追加
2012年12月18日 23:49 投稿
豪州では潜在的なリスクがベネフィットを上回るとして、Schedule 4(処方せん薬)からSchedule 3(Pharmacist Only Medicine)への変更は認められなかったようです。
Reasons for scheduling delegates’ final decisions, June 2013
(TGA 2013.06.28)
http://www.tga.gov.au/industry/scheduling-decisions-1306-final.htm
Oseltamivir
http://www.tga.gov.au/industry/scheduling-decisions-1306-final-03-acms.htm#oselt
The Phamacy Guild of Australia の提出意見(オセルタミビルの部分)
http://www.tga.gov.au/pdf/submissions/scheduling-submissions-1303-1.pdf#page=16
豪州薬剤師会 の提出意見(オセルタミビルの部分)
http://www.tga.gov.au/pdf/submissions/scheduling-submissions-1303-1.pdf#page=30
豪州とニュージーランドは、2016年に両国の医薬品規制当局(TGAとMedSafe)の統合が予定されており、両者の制度や運用の食い違いをできる限り均す作業も進捗中です。 そのような中で、異なった区分となったことは注目されます。