論文・報告あれこれ 2013年1月

今月のちょっと気になった論文や報告などです。誤りがあったらご指摘下さい。月ごとにまとめて随時追加する予定です。 (J-STAGE に掲載のものは、発行後一定期間過ぎてから解禁となるものがあり、1年以上前に掲載された論文等を紹介する場合があります)

★更新することが多いので、2013年1月分よりスタイルとURLのタイプを変えました。右下に最終更新日を記してあります。

紹介日 論文・報告タイトル
(紹介記事・ブログ、関連論文)
概要・コメント
01..27 Visual Hallucinations Related to Angiotensin-Converting Enzyme Inhibitor Use: Case Reports and Review
J Clin Hypertens Published Online 25 Jan 2013)
(オープンアクセス)

ACE阻害薬との関連性が疑われる幻視(Visual Hallucinations)についての症例報告やMHRAへの報告をレビューしたもの。研究者らはACE阻害薬の投与開始後の幻視が現れれたら中止を検討すべきとした。確認したら、オランダLarebですでにSignalとしてリストアップされていた。
01.25 New statins labeling update: Risk of increased blood sugar levels and diabetes
(Health Canada 2013.01.24)

英・米・独などに続きカナダも、スタチンによる高血糖・糖尿病リスクについての安全性情報を発出。ハイリスク者には血糖モニターも推奨。日本は添付文書での注意喚起はまだでしたよね?
01.25 Samsca (tolvaptan): Drug Warning – Potential Risk of Liver Injury
(米FDA Safety Information 2013.01.25)

新規利尿薬の トルバプタン(サムスカ錠)との関連が疑われる重篤な肝障害が3例報告されたとする注意喚起。日本ではその他の副作用での肝機能異常での記載に留まる。
01.25 At FDA, Pharmacists Answer Your Call
(米FDA Consumer Updates 2013.01.23)
FDAで働く薬剤師の様子を紹介したもの。薬学生のための体験プログラムも用意されているという。日本でも行政薬剤師で活躍うる薬剤師をこういった形で伝えれば、薬剤師の社会における存在をアピールできると思う。
01.25 Don’t Double Up on Acetaminophen(米FDA Consumer Updates 2013.01.24) アセトアミノフェンの過量服用などへの注意喚起を促す消費者向け情報。毎日3杯以上アルコールを飲んでいる人がアセトアミノフェンを含む薬を飲む場合は専門家に相談するよう呼びかけている。
01.25  

Breastfeeding and Tacrolimus: Serial Monitoring in Breast-Fed and Bottle-Fed Infants
CJASN Published Online 24 Jan 2013)

妊娠中から免疫抑制剤のタクロリムスを使用している女性が授乳した場合の子どもへの影響を調べた observational cohort study。臍帯血での移行は肝臓でクリアランスされ、また母乳への移行も低レベルであることがわかった
01.25  Fetal antiepileptic drug exposure and cognitive outcomes at age 6 years (NEAD study): a prospective observational study
Lancet NeulogyPublished Online 23 Jan 2013)

妊娠中の抗てんかん薬の使用が子どもIQに影響を及ぼすかどうかを調べた研究。単剤(バルプロ酸、カルバマゼピン、ラモトリジン、フェニトイン)を使用した英米妊婦の305人の子どもを追跡調査したところ、バルプロ酸を使用していた母親から生まれた子どもの6歳時のIQが用量依存的に低かった。
01.25 Hospital Admissions for Childhood Asthma After Smoke-Free Legislation in England
Pediatrics Published Online 21 Jan 2013)
(今のところオープンアクセス)

禁煙法の施行によって喘息による入院数が減っているという報告。法律施行前は毎年2.2%増加していたが、法施行後12か月で12.3%減少した。
01.22 Growth and pubertal development of adolescent boys on stimulant medication for attention deficit hyperactivity disorder
Med J Aust 2013; 198 (1): 29-32.)
メチルフェニデートなどのADHD治療薬が思春期の成長(身長の伸び)に影響があるかどうかを調べた研究。
01.22 What is ‘pharmaceutical care’ in 2013?
Int J Clin Pharm. Published online 8 Jan 2013)
Int J Clin Pharm 誌の論説。
01.22 The management of ocular allergy in community pharmacies in the United Kingdom.
Int J Clin Pharm. Published online 1 Jan 2013)
アレルギー性結膜炎をシナリオとした英国における覆面調査の結果(フルテキストで読んでみたい)
01.22 Non-prescription medicines for pain and fever-A comparison of recommendations and counseling from staff in pharmacy and general sales stores.
Health Policy published online 5 Jan 2013)
 こちらは痛みや発熱をシナリオとしたスウェーデンの薬局などでの覆面調査(これもフルテキストで読んでみたい)
01.10 World Health Assembly Agendas and trends of international health issues for the last 43 years:: Analysis of World Health Assembly Agendas between 1970 and 2012
Health Policy Published Online 4 Jan 2013)
(オープンアクセス)
2012年までの43年間にWHOの総会(World Health Assembly)で取り上げれた議題を分類し、国際的な健康問題の動向と特徴を解析したもの。研究者らは5つに分類、最も多かったのが伝染病で25.3%、次いでヘルスシステムが19.1%、非伝染性疾患13.9%などが続いた。
01.06 Fesoterodine – GI haemorrhage
(WHO Pharmaceuticals Newsletter No. 6, 2012)

日本では承認されたばかりの過活動膀胱治療薬のフェステロジン(トビエース)との関連が疑われる上部消化管出血のシグナル検出。
01.06 Ethinylestradiol/Drospirenone and Spinal cord infarction
(WHO Pharmaceuticals Newsletter No. 6, 2012)
エチニルエストラジオール/ドロスピレノン合剤(ヤーズ配合錠)との関連が疑われるSpinal cord infarction(脊髄梗塞)のシグナル検出。
01.06 平成23年度家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告
(厚労省 2012.12.27 公表)
毎年年末に公表される報告書。小児の誤飲事故原因第2位の「医薬品・医薬部外品」による事故事例は参考にしたい。
01.06 A review and assessment of drug-induced parotitis.
Ann Pharmacother. 46(12) p1688-99. 2012)
薬剤の使用との関連が疑われる耳下腺炎(drug-induced parotitis)についてのレビュー。文献調査で40薬剤84の症例報告があった。13報告があったフェニルブタゾン、7報告があったl-アルパラギナーゼ、7報告があったクロザピンで関連性を調べたが認められなかった。
01.06 Recognition of adverse drug events in older hospitalized medical patients
Eur J Clin Pharmacol 69(1):75-85,2013)
(オープンアクセス)
入院高齢患者における有害事象の認識度をまとめたもの。
01.06 Pregabalin abuse and dependence in Germany: results from a database query
Eur J Clin Pharmacol Publihed Online Jan 2013)

ドイツBfArMの有害事象データベースからプレガバリン(リリカ)の濫用や依存についてのレポートを解析したもの。これまでに55の報告(平均年齢36歳、64%が男性、1日平均使用量は1424mg)があり、複数の嗜癖がある人が約4割を占めた。(日本では報告があるのだろうか?)
01.06 Aripiprazole for the treatment of methamphetamine dependence: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial
Addiction Published Online 3 Jan 2013)
(オープンアクセス)
動物実験からドパミンD2受容体作動薬のアリピプラゾールがメタンフェタミン中毒患者にも有用ではないかとして行われたRCT。尿中の減少や性的リスクの減少が認められたが、依存者の使用量減少にはつながらなかった
01.06 Analgesic Use and Frailty among Community-Dwelling Older People : A Population-Based Study.
Drugs Aging.Published online 4 Jan 2013)

体重減少、疲れやすい、動作が鈍い、低い身体活動性などの虚弱さと鎮痛剤の使用との関係を調べた75歳以上高齢者を対象とした調査結果。虚弱傾向の高齢者では健康な人より骨格筋の痛みを感じることがあり鎮痛薬(78.7%がアセトアミノフェン)を使用する傾向があり、薬剤の選択にも留意が必要だとした
01.06 The role of local anaesthetics in premature ejaculation
BJU Int. 110(11c) e943-948 Dec 2012)
(オープンアクセス)
早漏における外用局所麻酔剤の有用性についての総説。タキフィラシーのエビデンスはなく、オプションとして有用であるとしたが、パートナーも含めた痺れ感を生じる可能性があるとしてコンドームの使用や挿入の前に洗い流すことも必要ではないかとした。内服ではSSRIが使われることもあるという。

最終更新日:2013年2月5日

コメントが3つあります

  1. シッフズジャパン 鈴木

    英文論文の日本語ダイジェストは最新の科学情報が概観でき有難いです。
    本年もよろしくお願いいたします。

  2. アポネット 小嶋

    平成23年度家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告を受けて、4日、厚労省医政局総務課長、医薬食品局総務課長、厚生労働省医薬食品局安全対策課長名で通知が出ています。

    医薬品等の誤飲防止対策の徹底について
    (医療機関及び薬局への注意喚起及び周知徹底依頼)
    (2013年1月4日)
    http://www.info.pmda.go.jp/iryoujiko/file/20130104-001.pdf

    1.患者の家族等、特に小児による誤飲が生じないように、処方または調剤にあたっては、医薬品を小児の手の届かない場所に保管するなど、適切な保管及び管理をするよう、患
    者及び家族等に十分注意喚起すること。

    2.高齢者等自ら医薬品の保管・管理が困難と思われる患者に対しては、家族等介護者に対して注意喚起を行うこと。

  3. アポネット 小嶋

    下から2番目のDrugs Aging の 研究についての解説記事です。

    虚弱な高齢者では鎮痛薬の処方頻度が高率,有害事象の発現に注意
    (MT Pro 2013.01.16 要会員登録)
    http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1301/1301024.html

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