血栓リスクでDiane-35 (ダイアン35)の販売を中止(仏)

 第3、第4世代の経口避妊薬の血栓リスクについて注意喚起を行っている仏医薬品安全庁(ANSM:the National Agency for the Safety of Medicines)(TOPICS 2013.01.06)ですが、経口避妊薬としても広く使われているにきび治療薬 Diane-35 (含むジェネリック品)の販売を中止(停止)すると発表しています。(3か月で処方も完全停止)

Pour la sécurité des patientes, l’ANSM engage une procédure de suspension de l’AMM de Diane 35 et de ses génériques – Communiqué
(ANSM 2013.01.30)
http://ansm.sante.fr/S-informer/Actualite/Pour-la-securite-des-patientes-l-ANSM-engage-une-procedure-de-suspension-de-l-AMM-de-Diane-35-et-de-ses-generiques-Communique

France pulls acne drug after contraception deaths
(Telegraph 2013.01.30 AFP配信)
http://www.telegraph.co.uk/health/9836747/France-pulls-acne-drug-after-contraception-deaths.html

 Diane-35は、抗アンドロゲン(男性ホルモン)薬のシプロテロン酢酸塩(日本では以前、アンドロクールの名前で発売されていたが、今はこの成分を含むものは販売されていない)とエチニルエストラジオールの合剤で、もともとにきび治療薬として世界116か国で発売されていますが、排卵抑制作用があることから、医師が避妊薬として処方することが少なくなかったそうです。

 フランスでは、315,000人がこのDiane-35が使用しているのですが、今週、この25年間に125人が血栓関連の病気にかかり、うち4人が死亡していたと報じられ、フランス当局の対応が注目されていました。

Diane® 35 et ses génériques – Communiqué
(ANSM 2013.01.27)
http://ansm.sante.fr/S-informer/Actualite/Diane-R-35-et-ses-generiques-Communique

Quelle est la situation actuelle de Diane 35 en France ?
http://ansm.sante.fr/Dossiers-thematiques/Reevaluation-de-Diane-35-et-ses-generiques/Quelle-est-la-situation-actuelle-de-Diane-35-en-France/(offset)/0

 シプロテロンの血栓リスクの高さは以前から指摘されており、避妊薬としての使用をいわば放置してきた当局にも批判が集まっているようです。

Cyproterone acetate と血管血栓塞栓症
(医薬品安全性情報 Vol.1 No.30 (2003. 10. 31))
http://www.nihs.go.jp/dig/sireport/weekly/30031031.pdf#page=4

Diane-35 (cyproterone acetate): safety concerns
(CMAJ 168(4), p455-456,2003)
http://www.canadianmedicaljournal.ca/content/168/4/455.full

 ホルモン剤の血栓リスクは私たちにとってはいわば常識でありますが、この記事をあえて書いたのは、ググるとと、「アジア人の為に作られた安全な低用量避妊ピル」とか、「にきび・ムダ毛にも効果があります」など、個人輸入を誘うサイトの非常に多いことに驚かされることです。

 医療機関が個人輸入をして慎重に使われているケースもあるようですが、口コミで気軽に自己判断で使い、脳こうそくなどの血栓症にあっている人がいないかどうか心配です。

関連情報:TOPICS
 2013.01.06 第3、4世代ピルの使用制限(フランス)

関連記事・ブログ:
ピルとして使用される薬 Diane 35 の危険性
(フランスのニュース最新版 2013.01.30)
http://franceactu.seesaa.net/article/316928490.html
French Regulators Pull Bayer Acne Drug Over Deaths
(Pharmalot 2013.01.30)
http://www.pharmalot.com/2013/01/french-regulators-pull-bayer-acne-drug-over-deaths/
France confirms Diane-35 drug deaths
(The Guardian 2013.01.27)
http://www.guardian.co.uk/world/2013/jan/27/france-diane-acne-drug-deaths

1月31日 0:15 タイトル変更


2013年01月30日 23:10 投稿

コメントが2つあります

  1. アポネット 小嶋

    フランス・バイエル社は、ファーマコビジランスのルールに従い当局にモニター報告にしており、ベネフィットがリスクを上回っているとして、今回の決定に驚きのコメントを発表しています。(ANSMではにきび治療としてもベネフィットがリスクを下回ると判断している)

    Bayer Santé prend acte avec surprise de la décision de l’ANSM
    (Bayer France 2013.01.30)
    http://www.bayer.fr/node/100

    またEMA(欧州医薬品庁)でも、PRACでのレビューを行っていることを明らかにしています。

    European Medicines Agency update on Diane 35 and generics used in the treatment of acne
    (EMA 2013.01.30)
    http://www.emea.europa.eu/ema/index.jsp?curl=pages/news_and_events/news/2013/01/news_detail_001703.jsp&mid=WC0b01ac058004d5c1

  2. アポネット 小嶋

    ヘルスカナダでも、現在レビュー中であることを明らかにしています。

    Health Canada to review safety of drug Diane-35
    (Health Canada Advisories and Warnings 2013.01.31)
    http://www.hc-sc.gc.ca/ahc-asc/media/advisories-avis/_2013/2013_17-eng.php

    なおヘルスカナダでは、10年以上前から避妊薬としての使用をしないように注意喚起を行っています。

    Important safety concerns on the use of Diane-35
    (Health Canada 2002.12.19)
    http://www.hc-sc.gc.ca/dhp-mps/medeff/advisories-avis/prof/_2002/diane-35_hpc-cps-eng.php

    リンク頂いたブログです。

    避妊を目的としたDiane35の処方は許されません。
    (LOCの離れ~低用量ピル普及推進委員会~ 2013.02.01)
    http://youmamaqueen.sblo.jp/article/61926389.html

    一方、現地の方の紹介ブログです

    Diane35、ピル騒動の中の抗にきび薬スキャンダル
    (ぴらぴらパリの紙切れたち 2013.02.02)
    http://pirapira-actu.blogspot.jp/2013/02/diane35.html
    日本では発売されていないということもあり、日本語での記事はほとんどないですね。

    個人輸入は自己責任とだとしても、厚労省などが注意喚起することはできないのでしょうか?