一般用医薬品の店舗販売における見直しを求める要望書

 いよいよ今日から、ネット販売のルールづくりの検討が始まりました。一方で、リアル店舗での一般用医薬品のあり方についてもこの間さまざまな疑問や問題点が指摘され、ネット販売を求める声にもつながっているといえます。

 そんな中、これらの問題点をまとめ、国に対応策を求める要望書が11日、新薬学研究者技術者集団(http://pha.jp/shin-yakugaku/)より厚労大臣あてに提出されています。(コピペさせて頂きます)

厚生労働大臣に「一般用医薬品販売に関する薬事法改正趣旨の徹底のため、一般用医薬品の店舗販売のあり方につき下記の見直しを要望します」を提出しました。
(新薬学研究者技術者集団 2013.02.14)
http://pha.jp/shin-yakugaku/proposal/03_09.html

厚生労働大臣 田村憲久様

一般用医薬品販売に関する薬事法改正趣旨の徹底のため、 一般用医薬品の店舗販売のあり方につき下記の見直しを要望します。

2013年2月11日
新薬学研究者技術者集団
代表 早川浩司

 薬局を含む一般用医薬品の店舗販売に関しては、2009年6月、医薬品のリスクに応じた情報提供・相談応需・販売を専門家が行うことで、 専門家の関与する安全なセルフメディケーションの推進を図るために、改正薬事法が施行されました。それから3年余が経ちましたが、実際の現場では「薬局ならびに店舗販売業(以下、店舗と略す)での第l類医薬品の販売ルールが守られていない」 「リスク分類別の展示が守られていない」 など、改正薬事法の趣旨が徹底されていない実態が浮き彫りとなっています。 また、 登録販売者試験での多数の不正が明らかになるなど、 販売制度を揺るがす問題も起こっています。
 私たちは、改正薬事法の趣旨がさらに徹底されるため、次のように一般用医薬品の店舗販売のあり方を見直すよう要望します。

  1. 店舗管理者
    1) 薬局のみならず店舗販売業においても管理者は薬剤師とし、 店舗の管理責任を厳しく課す。ただし店舗販売業の管理者資格条件については、 旧薬種商から移行した登録販売者は経過措置として一代限りにおいて除く。 また、すでに登録販売者として3年間以上業務に従事し登録管理者が店舗管理者となっている店舗については経過措置期間を保証する。
    (趣旨) 薬剤師は医薬品の供給他をつかさどることにより公衆衛生の向上増進に寄与する任務がある国家免許の職種である。 種々の違反が問題となっているなどの是正をはかり、 あるべき店舗の姿を実現するには、 管理者としての薬剤師の責任と権限の強化を通じて行うのがあるべき姿である。
    2) 店舗管理者が保健衛生上必要な注意をしなければならないこと、 店舗販売業者は店舗管理者の意見を尊重しなければならないことはすでに薬事法第29条、 第29条の2に記載があるが、徹底させる。
  2. 一般用医薬品の販売者責任
    一般用医薬品について、許認可する行政、製造する企業、使用者の責任とともに、店舗販売業者と店舗管理者の販売者責任を明確化する。
  3. 登録販売者
    1)登録販売者については、薬事法での記載はあるが、薬剤師法のような身分規定がない。身分規定を定め、 登録販売者の占める地位とそれに伴う責務をより明確化する。
    2) 登録販売者受験資格を偽造証明した薬剤師、 店舗販売業者に対する制裁を強化し、 薬事法に罰則規定を盛り込む。
  4. 一般用医薬品の販売担当者
    改正薬事法の目的は、医薬品のリスクに応じた情報提供・相談応需・販売を専門家が行うことで、 専門家の関与する安全なセルフメディケーションの推進を図ることにある。 しかるに、薬事法施行規則第159条の14では、第一類医薬品においても薬剤師の管理・指導のもとで登録販売者もしくは一般従事者が販売することを認めている。 しかし、「管理・指導のもとで」 という言葉は非常にあいあいで、 医療用医薬品において開業医などで依然として無資格者の調剤が行われているのと同様、 第一類医薬品などを無資格者が取り扱う危険性がある。
    第一類医薬品は薬剤師が直接、 第二類医薬品 ・ 第三類医薬品は薬剤師あるいは登録販売者が直接、 販売または授与するよう法や省政令を改めるべきである。
  5. 店頭での薬事法及び省令の違反行為
    店頭での薬事法及び省令の違反行為には厳しく臨み、 医薬品販売・管理の徹底を期すべきである。
  6. 指定第二類医薬品
    リスクの高い指定第二類医薬品は、分類を第二類医薬品から独立させるとともに、現行では情報提供が努力義務となっているが、 情報提供を義務づける。
  7. 店舗販売における一般用医薬品の供給体制の充実化
    近年、 第一類医薬品を扱わない店舗販売業が増加している。 薬局は、 調剤に特化し一般用医薬品はほとんど扱つてぃなぃところも目立つ。 このことは、 生活者の一般用医薬品の購入要望に応えられていず、 セルフメディケーションの環境づくりに反している。 店舗販売業についてはこの要望書の冒頭に管理者を薬剤師とするよう要望しているが、 薬剤師の常駐により第一類医薬品を販売するようにすべきである。 薬局については、 取り扱うことを必要とする一般用医薬品の種類などを薬局の開設時の必要要件として明記するなどのほか、 薬局が一般用医薬品の取り扱いを通じ地域での生活者の健康保持に貢献できるよう施策を強めるべきである。
  8. 生活者に対する各分類医薬品販売時間の明示
    店舗においては、 「薬剤師がいないので第一類医薬品の取り扱いができない」 などを含め、 各分類医薬品の販売可能時間を店頭などに明示することを義務づける。
  9. 来店困難者に対する配達
    処方せんに基づく調剤においては、 来店困難地域や来店困難者に対し、 薬剤師が患家に直接出向き薬剤管理や服薬指導などを行うことを認めている。 一般用医薬品においても専門家(第一類: 薬剤師、 第二類または第三類: 薬剤師または登録販売者)が必要な場合に直接出向いて情報伝達・販売をできるようすべきである。

以上

 別記事のコメントとツイートで紹介しましたが、ケンコーコム社長の後藤玄利氏は、東洋経済誌のインタビューで、「もちろん要件を増やしてどんどんハードルを上げていくことはできますが、同じハードルを対面販売の店舗もクリアしなければなりません。そうすると店頭も含め、医薬品販売そのものができるのか怪しくなってくる。そこまでのルールを、国として事業者に要求する意味はあるのでしょうか。」と述べているように、ネット販売のルールを厳格化するのであれば、リアル店舗での販売のルールの見直しも不可欠だと思います。

医薬品ネット販売、「解禁」の先
ケンコーコム後藤社長に聞く
(東洋経済オンライン 2013.02.08)
http://toyokeizai.net/articles/-/12841

 今日の検討会(TOPICS 2013.02.14)でも、、「対面販売でも、ネット販売でも、どう安全性を担保するかを議論するべき」という意見が出されたように、いわば販売する側の論理で作られ、解釈されている感もある改正薬事法と関連省令について、私もこの際、きちんと検証して見直す時期に来ていると考えます。

 (前記事のコメントと重複します)
 一方、今日の一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会の構成員である慶応義塾大学総合政策学部 学部長・教授 國領 二郎 氏は、検討会で次のような意見書を提出し、拙速に販売の手法や範囲をめぐる議論を始めると、不毛な綱引きになったり、整合性の取れない議論になったりする可能性が大きいとして、次のような事項についての合意形成を提案しています。

  • 一般医薬品服用には副作用リスクがあり、販売にあたって適切な管理が必要であること
  • 一般医薬品服用を取り巻くリスク管理にあたっては、リスクの存在及びその内容を、薬剤師から服用者(服用者に判断能力がない場合には保護者あるいは後見人)に、適切に伝達する「リスクコミュニケーション」を行うこと。
  • 適切なリスクコミュニケーションを前提に、自らの判断で服薬を行う「セルフメディケーション」を行うこと
  • 一般医薬品のリスク情報の服薬者への伝達は(直接の伝達者が登録販売者であったり、ネットのページであったり、服薬者の代理で購入した関係者であったとしても)、薬剤師の管理と責任のもとに行われるべきであること (TV電話での対応もOKということにつながりかねないけど)

一般医薬品インターネット販売検討会
(國領二郎の「ここでは本音で...」 2013.02.14)
http://blog.jkokuryo.com/blog/2013/02/post-ec74.html
http://blog.jkokuryo.com/blog/files/25214v2.pdf

 この提案はまさしく、店舗販売のあり方についてもいえることで、この機会に一般用医薬品の販売のあり方や「リスクコミュニケーション」のあり方についての共通認識が形成されることを願うものです。

関連情報:TOPICS
  2013.02.14 一般用医薬品のインターネット販売に関するルールの検討が始まる
  2012.12.28 スイッチOTCについてオープンな議論を求める要望書


2013年02月14日 22:27 投稿

コメントが2つあります

  1. アポネット 小嶋

    ネットなどでの声としては既出の話ですが、こういったことが記事になると、ネット販売の妥当性を勢いづかせます。(リンクすみません)

    医薬品の対面販売は本当に安全か
    買って分かった情報提供の疑問
    (日経ビジネス 2月15日)
    http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130213/243677/

    注目は2ページ目です。(全文がログインなしで読めるのは今日だけです)

    記者が実際にガスター10を店舗で医薬品を購入しようとした時に現状があからさまになっています。

    A店では応対した店員に「申し訳ございませんが、夕方以降でないと販売できません」と言われた。
    (一応、店員は薬剤師の勤務スケジュールが書かれたビラはもらえた)

    B店では、薬剤師から「胃がどのように痛むのか」といった症状や、いま服用している薬の種類を聞かれることはなく、唯一聞かれたことは、「ポイントカードはお持ちですか」だった。

    そして、記事では、次のようにも指摘しています。

    「いまやドラッグストアは医薬品以外に日用雑貨も扱っている。筆者は昼休みの時間帯に来店したため、レジには精算待ちの行列ができていた。現実問題として、混雑している店内で、薬剤師が細かく説明する時間をとるのは難しいだろう。」

    新薬学研究者技術者集団が指摘したことが現実として少なくないことが示され、店舗販売での不満や不信につながりかねない状況にあるといえます。

    そして、店舗販売における薬剤師は何のために存在するのかというのを考えさせられます。(結局はくすりを売りたいとする経営者のため?)

  2. ネット販売検討会の第一回目にまつわる様々な情報やコメントを読ませて頂いて、いろいろと考えさせられました。

    OTC薬は処方薬と違って、ひ弱な身体と心を持ったままで、世間に放り出された。
    それを、取り巻く連中(守銭奴も含めて)にむちゃくちゃに扱われてしまっている・・・・。

    そんな印象を、私は常に持っています・・・・。

    薬事法改正前はネット販売でリアップやガスターなどが日用雑品のごとく、バンバン売られていた。
    それを改正後、厚労省の省令で販売を突然(?)に規制した。
    (改正薬事法の条文にネット販売の規制を盛り込んでいない落ち度を持ったままで・・・・。)
    生命関連商品としての医薬品たるOTC薬の扱いとしては当然のことなのに・・・・。
    でも、改正前、そして改正後のOTC薬の扱いそのものが、不健全、不完全極まりない姿だったのだ・・・・。

    (上記コメントの)記者が二店目のドラックストアにガスターを買い求めに行った時・・・・。
    薬剤師はなんの病状も聞かず、書面も用いず、ただ、ポイント説明をしただけで販売してくれたと語っている。

    OTC薬だけではなく、日用雑貨品多く抱えるドラックストアで、昼時のレジに客が列をなして立ち並んでいる光景を眺めながらのことであったと・・・。
    この薬剤師には第一類薬を資格専門家という自覚、認識のもとで、この記者に対応してもらいたかった。

    この薬剤師の姿は・・・・・・・。
    経営者の生業のために、薬剤師資格が使われているだけだと。

    また、現場の日々の雑事に追われる多忙さと、薬事法の改正後もOTC薬を軽んじた慣習の中で培われた違和感のない行為だったのかもしれません・・・・。いや、その時はたまたまそのような対応をしてしまったのかもしれません。それでは通用しませんが。

    過去の古いものですが、松木規夫先生が薬事法の改正前に、下記のようなコメントをされています。

    今回の一連の報道を見ていると、利便性、規制緩和、利権争いや商売形態の変化といった観点しか見受けられません。
    育薬により「日本人に有効で優れた医薬品を利用できるようにする」ということは日本国民の財産であり、継続していかなければならない点です。遅ればせながら、日本薬学会は育薬の重要性や学会の貢献をHPやポスターで宣伝していきます。
     
    また、薬剤師に対して厳しい言い方をすれば、医薬品販売において薬剤師が目立たず、「薬剤師に相談して良かった」と実感している国民が少ないことが露呈したとも言えます。
    6月以降は一般国民が薬局で、薬剤師とそうでない店員の違いを意識するようになります。その時に、薬剤師が積極的に自分の業務を遂行して社会的責任を果たし、「薬剤師に相談して良かった」と国民に思ってもらえなければ、国民の支持は得られないでしょう。

    ネット販売業者が一類までも販売できるようにしたいと主張しています。そして、次は処方薬だと・・・・・。
    本当に嘆かわしいことです。このように言われるようになってしまっていることを。

    厚労省の威信は最高裁で省令を否定させてから、木っ端微塵に潰えてしまいました。

    かつての改正薬事法という法律を作る国会議員の怠慢さやいい加減さも、今回のネット販売検討会が開かれることによって、再度、思わされるところでした。
    最高裁での判決をケンコーコムの後藤社長は金科玉条のごとく扱い、日本国憲法の職業(営業)選択の自由に鑑みて、憲法学者の見解もこのネット販売検討会でして欲しいと主張していたようです。
    どうも、医薬品たるOTC薬の販売のあり方を論じる場で、このような発想を持ち込もうとしているところに無理、いや、無茶があると思っています。営業選択の自由は尊重しなければならないかもしれませんが、医薬品というOTC薬を扱う場合は自由の尊重の前に、その特殊性を鑑みた適正適切さの尊重を優先しなければなりません。その点を故意に履き違えて、ネット販売有利な論調に持っていこうとしています。

    そして、注目された医師会副会長の中川氏はエパデールの猛烈抵抗行為からは程遠い、冷めた目でこの検討会に臨んでいたのではないでしょうか。確か、あの時の医師ですよね。中川氏という名前は・・・・。

    ネット販売検討会が処方薬を除いたOTC薬だけのことに絞って検討するという道筋がついた事で、もう、中川氏にとっては対岸の火事とでも思ったのでしょうか。同じ医薬品を扱う医療人として、この検討会での彼自身が披瀝する医薬品哲学たるものはなかったのでしょうか。いや、ありはするが、OTC薬は処方薬と違って、医薬品として認めていないところがあるのかもしれません。
    情けない可哀想なOTC薬よ・・・、また、君は守銭奴を抱えた連中によって、また、もみくちゃにされてしまうのか・・・・。