各紙が伝えているので既にご存じかと思いますが、内閣府の規制改革会議は8日、2月25日の会議で最優先案件と位置づけた「一般用医薬品のインターネット等の販売」について、半年以内に全面解禁を求めるなどとした見解をまとめ、発表しています。
規制改革会議
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/meeting.html
第3回規制改革会議(内閣府 2013.03.08開催)
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/committee/130308/agenda.html
一般用医薬品のインターネット等販売規制に関する規制改革会議の見解
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/committee/130308/item6.pdf
- 一般用医薬品のインターネット等販売については、これを広く認めることにより、店頭で購入することが出来ない消費者など国民が自らの判断で選択肢を広げることのできる環境を実現し、その利便性を高めるとともに、インターネットや店頭といった販売形態の別に関わらず、安全性を確保することが重要である。
- 第3回規制改革会議(平成25 年2月25 日開催)では、厚生労働省から、本問題に対する検討状況の報告を受けたが、省内に設置された「一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会」で議論が重ねられている段階であり、現状、今後の対応の方向性は必ずしも明らかになっていない。
- 本問題に係る最高裁判決(平成25 年1月11 日)が出されて以降、様々な主体によるインターネット等販売が事実上行われている。このため、規制改革会議としては、最高裁の指摘も踏まえ、早急に、
・ インターネット等で全ての一般用医薬品の販売を可能とすること
・その際、それぞれの販売形態の特性や、業界の自主的なガイドラインも踏まえ、安全性を適切に確保する仕組みを設けること
・これら制度的枠組みを遅くとも半年以内に設けること
を政府に対して強く求めたい。 - なお、規制改革会議は、一般用医薬品のインターネット等販売規制について、特に緊急性・重要性の高い最優先案件として取り組んでいる。今後とも、厚生労働省における検討の進展状況を注意深くフォローアップしていくこととしたい。
上記見解で気になったのは、 「店頭で購入できない消費者など、国民が自らの判断で選択肢を広げることができる環境を実現し、その利便性を高める」の部分で、規制改革会議では、医薬品の販売には専門家の関与は必要ないとの見解とも見えなくもありません。
一方、当日欠席の政策研究大学院大学の大田弘子議長代理は、次のような書面発言を行っています。
大田議長代理提出資料
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/committee/130308/item7.pdf
- この件は、「対面販売は安全で、インターネット販売は危険」ということを示す実証データがなく、根拠が不明確なまま現在に至っているところに問題の発端がある。そこで、諸外国で「インターネット販売は対面より危険」という扱いがなされているかどうか、海外における政策の状況を厚生労働省にご質問した。
- これに対して、厚生労働省から別紙の資料をご提供いただいた。
この資料では、インターネット販売のルール設定は当然としても、薬局で販売されている薬についてインターネット販売を禁止している国はないと見受けられる。そこで、薬局で販売されている薬について、インターネット販売を禁止している国があれば、その国名と禁止されている薬の種類をお示しいただきたい旨、ご質問した。 - これに対して、厚生労働省から下記のご回答をいただいた。
「現在、当省として把握している海外のインターネット販売に対する規制状況については、前回お示しした資料のとおりであり、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス等についてインターネット販売が可能又は禁止されている一般用医薬品の種類も含めてインターネット販売のための諸条件等の詳細は把握していない。
なお、医療保険制度等の背景事情に加え、医薬品の分類の方法、販売の仕組み等が異なるため、日本を含めた各国の医薬品の販売制度について単純に比較することは非常に困難であることをご理解いただきたい。」 - しかし、この規制項目は、インターネット販売が対面販売より危険であるとすることの根拠を問うものであり、諸外国の政策当局がこの問題をどう判断し、どうルール化しているかを知ることは規制政策上重要なことと考える。
実際、厚生労働省においても、平成24 年度に「諸外国の規制状況等に関する調査」が実施されることになっている(「一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会」第1 回資料)。 - 上記調査を経たうえで、諸外国の政策当局においてインターネット販売は対面販売より危険であると判断された事例があるかどうか、あるとすればどういう薬の場合かについて、厚生労働省に改めてご回答をいただきたく、事務局に厚生労働省への要請をお願いする。
現時点の話なのでしょうが、「インターネット販売が可能又は禁止されている一般用医薬品の種類も含めてインターネット販売のための諸条件等の詳細は把握していない」という回答であったとすると、議論をすすめるうえで、ちょっと厚労省として準備不足ではないでしょうか。
ネットでも、いろいろな資料が入手できます(TOPICS 2013.01.19)し、ネットニュースを見るとさまざまな動きが私でも把握できます。
十分に資料が集まってから紹介しようと思っていますが、特にフランスでの動きは注目しています。推進派はこれを把握しているはずであり、現実は現実として示す必要があると思います。
一方で各紙は、自民党「医薬品のネット販売に関する議員連盟」は7日、一般薬のインターネット販売に一定の規制をかけるための薬事法改正案を議員立法で策定する方針を固めたと伝えており、今後は国会でも与野党入り乱れての議論が展開されそうです。
なお、今回の会議では、ワーキンググループにおける優先項目が決まっています。
ワーキング・グループにおける優先項目
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/committee/130308/item2.pdf
関連情報:TOPICS
2013.02.26 薬のネット販売は全面自由化を前提にすべき(規制改革会議)
2013.01.19 医薬品ネット販売に関する国内外の情報
参考:
医薬品ネット販売、半年で全面解禁の制度を-規制改革会議が厚労省に見解
(CB NEWS 2013.03.08)
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/39403.html
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130308-00000007-cbn-soci
【規制改革会議】薬ネット販売、全面解禁を‐半年以内に安全枠組み要求
(薬事日報 2013.03.11)
http://www.yakuji.co.jp/entry30378.html
http://www.qlifepro.com/news/20130311/safety-framework-requests-henceforth-internet-sales-of-drugs-within-six-months.html
【自民議連】ネット販売規制、議員立法で方針固める‐規制改革会議の動きに対抗
(薬事日報 2013.03.11)
http://www.yakuji.co.jp/entry30376.html
規制改革会議、全面解禁を提言 官邸VS厚労族対立激化へ
(産経新聞 2013.03.08)
http://sankei.jp.msn.com/life/news/130308/bdy13030821510004-n1.htm
2013年03月11日 13:28 投稿
今、市販薬のネット販売が話題になっている。医薬品という生命関連商品という特殊性から、一般商材のように簡単にネット販売で取り扱うことはできない。
利便性よりも安全性が優先されるからだ。
それにしても、昔のような人と人との対面による心温まる触れ合いが姿を消してきていることに寂しさを覚える。便利さの追求によって、人間関係はより合理的になって、無機質で殺伐とした対応が増えてきている。それによって、人間の豊かな感性もなくなり、人を思いやる気持ちも薄れてきている。すぐ切れる若者、殺人や傷害を起こしても平気でいられる人間も増えてきている。
これも、全て効率優先、利便性優先の無機質社会の行き過ぎがこのような人種を生み出してきているのだ。
昔のように戻れないとしても、少なくとも個人個人でそのような気持ちだけでも持てるように心がけたいものだ。市販薬のネット販売を勉強するにあたって、そのようなことを考えてしまう。
昔からのOTC薬の対面販売の現場は、何気ない世間話も混じえて売り手と買い手の人間的温かみを育んできた。それはOTC薬の有用性(安全性を担保した上での最大効果を引き出す)の相乗効果にも役立ってきた。
ネット販売では決してそのような人間的温かみを育むことができない。
海外でのOTC薬のネット販売実情では専門家としての薬剤師関与とリスク分類の区分けに基づいて行政許認可の厳格な徹底管理の上で、実店舗によるネット販売がされている。
これを厚労省は規制改革会議できちんと説明していない。
対面販売がネット販売よりも優れているという論拠においては、店頭現場を踏まえての具体的な説明が必要です。
医薬品たるOTC薬の販売においては絶対的に有用価値があります。
これはネット販売では限界のあるところです。
対面販売をベースにしてネット販売を補完的な意味合いからどう盛り込んでいくか。それに改正薬事法の見直しは着手しなければならない。
いきなり、規制改革会議でのネット販売の全面解禁はむちゃくちゃな話です。
厚労省はOTC薬のネット販売に対する理不尽なる自民党政権と規制改革会議メンバーに毅然とした態度で立ち向かって頂きたい。
重要なのは、薬剤師(若しくは、登録販売者)が規制を解除する権能を持った専門家として判断する事の重要性がおろそかにされ、現下の論議でも、余り大事にされていない事です。
海外でネット販売を許す国は、その前提として、実店舗が許可を受けた薬局として存在し、そこに管理者(責任者)として薬剤師が職責を果たしている事を当然としています。フランスの動きもその延長線として合理的な筈です。
日本でのネット販売には、コストを省き、利を求める動きが目立ち、それを隠すために『買い物弱者』等を持ち出しているように思えます。
議事概要がアップされました。ネット販売については24ページからです。
一般用医薬品のインターネット等販売規制に関する規制改革会議の見解について
(第4回規制改革会議 議事概要 2013.03.08)
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/committee/130308/summary0308.pdf#page=24
「ルール」という文言をめぐってやりとりがあります。
「このしようもない検討会をまずやめてもらうことが大切」といった過激な発言も。(中央大学法科大学院教授 安念潤司委員)
21日開催の第5回会議の議事概要がアップされています。ネット販売については29ページからです。
一般用医薬品のインターネット等販売の件について
(第4回規制改革会議 議事概要 2013.03.25)
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/committee/130321/summary0321.pdf#page=29