米国CDC(疾病管理予防センター)の研究チームはこのほど、病院のED(emergency department、緊急治療室)に薬の有害事象のために訪れた通院患者(outpatient)についてのデータのうち、抗生剤関連の事例の分析結果をまとめ、Clinical Infectious Diseases 誌に発表しています。
Emergency department visits for antibiotic-associated adverse events
(Clinical Infectious Diseases 2008; DOI: 10.1086/591126.)
http://www.journals.uchicago.edu/doi/full/10.1086/591126
このレポートは、2004年から2006年の3年間に米国の63の代表的な病院に訪れた124,505人の事例のうち、抗生剤関連の有害事象6614例を詳しく分析したもので、今回のように薬剤の種類に着目し、さらに詳しく分析したのは初めてのようです。
レポートによれば、もっとも多かったのかアレルギー反応で全体の78.7%を占め、下痢やめまい感、頭痛などの副作用は19.2%に留まったそうです。
また、薬剤種類毎に調べると最も多かったのがペニシリン系(36.9%)で、次いでレボフロキサシンなどのニューキノロン系(13.5%)、セファレキシンなどのセフェム系(12.2%)、ST合剤(11.8%)と続いています。
一方、薬剤毎に通院患者(ED visits per 10,000 outpatient prescription)10,000人あたりの有害事象発生率を算出したところ、最も数値が大きくなったのがバンコマイシンの21.7で、次いでモキシフロキサシンの20.7、さらにST合剤のSulfamethoxazole-trimethoprimで18.7、クリンダマイシンを含むLincosamidesで18.5、セフロキシムで11.9、エリロマイシン10.0と続いています。
また10,000人あたりの抗生剤全体の有害事象発生率は10.5で、ワルファリンおやインスリン、ジゴキシンなどのハイリスクの薬剤による発生率20.6よりは小さいものの、抗凝血薬やアスピリン・クロピドレルなどの血小板薬、メトフォルミンなどの経口糖尿病治療薬、治療域の狭い薬剤(フェニトイン・リチウム)などによる発生率3.3と比べると3倍も多い(下記文献のデータと比較)としています。
Medication Use Leading to Emergency Department Visits for Adverse Drug Events in Older Adults
(Ann Intern Med 2007; 147:755–65.)
http://www.annals.org/cgi/content/full/147/11/755
さらに症状別では、 中等度以上のアレルギー反応はST合剤で最も高く、精神神経系副作用はニューキノロン系で、消化器症状はクリンダマイシンなどのLincosamidesで多いとしています。
研究者らは、抗生剤関連の有害事象発生率は他剤と比べ低くないとして、リスクとベネフィットを考慮し、不必要な抗生剤の処方は行わないようにすれば、これらの有害事象の発生リスクは低くなるだろうとしています。
関連情報:
Antibiotics for treatment of acute respiratory tract infections: decreasing benefit, increasing risk, and the irrelevance of antimicrobial resistance
(Clinical Infectious Diseases 2008; DOI: 10.1086/591149.)
http://www.journals.uchicago.edu/doi/full/10.1086/591149
TOPICS 2008.07.23 気道感染症における抗生剤の適正使用を求める(英国)
参考:Antibiotic Reactions Send Thousands to Emergency Rooms
(Medpage TODAY 2008.8.13)
http://www.medpagetoday.com/ProductAlert/Prescriptions/tb/10549
Antibiotic reactions send thousands of Americans to ERs:(CBC Ca. 2008.8.14)
http://www.cbc.ca/health/story/2008/08/14/antibiotics-emergency.html
2008年08月17日 22:18 投稿