まだ映画館に足を運んでいないのに記事にするのはどうかと思いましたが、やっぱり知っておきたい話題なのでいろいろ調べてみました。
日本禁煙学会は12日、現在大ヒット中の宮崎アニメ「風立ちぬ」の制作担当者に対し、作品中の喫煙シーンの多さに疑問を投げかけた要望書を提出、WEB上で賛否両論の意見が噴出しています。
「風立ちぬ」に禁煙学会クレーム 喫煙場面多い
(日本経済新聞/共同通信 2013.08.14)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1403S_U3A810C1CR8000/
映画「風立ちぬ」でのタバコの扱いについて(要望)
(日本禁煙学会 2013.08.12)
http://www.nosmoke55.jp/action/1308kazetatinu.html
http://www.nosmoke55.jp/action/1308kazetatinu.pdf
全編を見ているわけではないので、具体的にどの部分ということは申し上げられませんが、ブログなどではやはり喫煙シーンは問題とする記事も散見されます。
風立ちぬ
(無煙映画を探せ 2013.07.31)
http://blog.goo.ne.jp/kaeruyama5151/e/6375888811531d76290828e701c7eb35
風立ちぬ」が証明した”喫煙シーンの害”
(タバコってなんですか? 2013.08.05)
http://blog.goo.ne.jp/tankobu_x/e/b2579266dfc71ef6c3f48256ef2c9f6b
賛否両論、タバコシーンから「風立ちぬ」を考察する
(エキレビ 2013.08.02 Update 08.12)
http://www.excite.co.jp/News/reviewmov/20130802/E1375377673396.html
一方、喫煙者にとっては、たばこを美味しそうに吸っているので吸いたくなってしまうとの声も
旨そー(゚Д゚)「風立ちぬ」が喫煙者を悶々とさせてる – NAVER まとめ
http://matome.naver.jp/odai/2137506929098995801
ヘビースモーカーの宮崎監督が思いをぶつけたという意見も(Youtubeを見ていたら、インタビューでも宮崎監督はスパスパ吸っていたからなあ)
【ネタバレあり】風立ちぬの喫煙シーンについて
http://ch.nicovideo.jp/kanenari/blomaga/ar293841 …
ネット上ではさまざまな意見が示されていますが、全体的には今回の要望書に否定的な意見が多い印象です。
「映画『風立ちぬ』に日本禁煙学会が要望書を提出…」どう思う?
(BLOGOS 2013.08.14)
http://blogos.com/discussion/2013-08-14/demand_for_kazeTachinu/
今あえて日本禁煙学会の「風立ちぬ たばこ描写批判」に賛成する
http://togetter.com/li/548625
『風立ちぬ』とその他のフィクションにおける煙草の扱いなど
http://togetter.com/li/548604
「風立ちぬ」喫煙シーンへの苦言 ~表現の自由と圧力の必要性~
http://togetter.com/li/548918
『風立ちぬ』喫煙シーンへの禁煙学会の苦言に賛否両論…観客、映画業界関係者の声は?
( ビジネスジャーナル 2013.08.15)
http://biz-journal.jp/2013/08/post_2702.html
しかし、世界では映画などでの喫煙描写は青少年の喫煙行動に影響を与えるとして、各国当局も調査などに乗り出しています。
既に、WHOでは映画などが青少年への影響をまとめたレポートをまとめ、2009年に各国に喫煙描写への制限の強制力のある政策の制定を呼びかけています。
WHO calls for enforceable policies to restrict smoking in movies
(WHO Tobacco Free Initiative 2009.06.01)
http://www.who.int/tobacco/smoke_free_movies/en/
Smoke-free movies: From evidence to action
http://whqlibdoc.who.int/publications/2009/9789241597937_eng.pdf
こういったこともあり、海外では映画での喫煙シーンの状況が調査されたり、青少年への影響などの研究が行われています。
Tobacco and tobacco branding in films most popular in the UK from 1989 to 2008
(Thorax 2010;65:417-422)
http://thorax.bmj.com/content/65/5/417.full
Depictions of Tobacco Use in 2007 Broadcast Television Programming Popular Among US Youth
(Arch Pediatr Adolesc Med. 2011;165(2):147-151.)
http://archpedi.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=384271
Smoking in Top-Grossing Movies — United States, 2010
(CDC MMWR July 15, 2011 / 60(27);909-913)
http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm6027a1.htm?s_cid=mm6027a1_w
When Movies Matter: Exposure to Smoking in Movies and Changes in Smoking Behavior
(J Health Commun. Published Online 15 Nov 2011)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3252424/
Who is most susceptible to movie smoking effects? Exploring the impacts of race and socio-economic status.
(Addiction Pubalished Online 20 Aug 2012)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22724674/
A comparison of individual versus community influences on youth smoking behaviours: a cross-sectional observational study
(BMJ Open 1 Sep 2012)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3437428/
Smoking in Top-Grossing US Movies, 2011
(Prev Chronic Dis. 27 Sep 2012)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3475526/
Tobacco imagery on prime time UK television
(Tob Control Published Online 11 Mar 2013)
http://tobaccocontrol.bmj.com/content/early/2013/02/21/tobaccocontrol-2012-050650.long
Smoking in movies and adolescent smoking initiation: longitudinal study in six European countries.
(Am J Prev Med. 2013 Apr;44(4):339-44.)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23498098/
対策で有名なのはやはり映画大国のインドで、喫煙シーンではテロップが入るとか。
ボリウッドにも禁煙の波:喫煙シーンにテロップ
(インド新聞 2012.01.31)
http://indonews.jp/2012/01/post-5496.html
また台湾では、保健省がアニメ「ワンピース」は2分に1回の喫煙シーンがあるとして去年問題視しています。
Smoking appears every 2 minutes in animation One Piece
(Bureau of Health Promotion, Department of Health 2012.09.17)
http://www.bhp.doh.gov.tw/BHPnet/English/NewsShow.aspx?No=201209170001
ツイートを見ると、現実とフィクションは混同しないとか、当時の描写なのでシーンとして必要、物語で象徴となっていて重要などとして、禁煙学会への批判ばかりが目立ちますが、海外では青少年への影響を考慮して、喫煙の描写などが露出しないように配慮されているという、最近の世界の趨勢を多くの方はご存じないようです。
無名の作品ならともかく、子どもも見るような話題作(この作品は大人向けの作品だとの声も多い)である以上、こどもをたばこから守るためには禁煙学会としては当然の行動なのです。(米国では小児科学会なども監視の目を光らせているようです)
メディアは禁煙学会がクレームなどと悠長なことを言っていますが、やはりこれまで、メディアそして厚労省がたばこ会社に配慮して世界の禁煙対策をきちんと伝えてこなかったツケに他なりません。
禁煙学会も、いきなり「「タバコ規制枠組み条約」の条約違反」ということを訴えたことは無理があったかもしれません。何しろ多くの人は「タバコ規制枠組み条約」や、日本はたばこ対策が世界から遅れているということを知らない(知らされていない)からです。
海外のこういった具体的とりくみ状況を伝えたり、R15の指定の必要性などを訴えればまだよかったのにと思います。
時間を作って、映画館に足を運べればと思います。
その他ブログ:
『風立ちぬ』の喫煙シーン、およびタバコ演出に頼らない富野由悠季の考え方
(TOMINOSUKI 2013.08.14)
http://kaito2198.blog43.fc2.com/blog-entry-1329.html
関連情報:TOPICS
2013.02.21 Tobacco Control 誌 20周年記念号
2011.07.08 世界各国のたばこ規制の取組み状況(WHO)
8月15日 10:00リンク追加
2013年08月15日 02:11 投稿
私も、やたら煙草を吸うシーンが気になり、宮崎駿監督の人となりに興味を持っていました。
ジブリが出してる小冊子『熱風』7月号特集、「憲法改正」への投稿記事から、彼のパーソナリティーと反戦平和への想いを知り、安心しました。もちろん、だからと言って喫煙シーンを免罪するものではありません。
朝日新聞アピタルが関連記事を掲載していました。
《23》 映画の喫煙シーンの影響力 – ただいまボストン留学中
(朝日新聞 アピタル 2013.06.03)
http://apital.asahi.com/article/msk/2013060300004.html
狙われる若者に「クールなメッセージ」 – ただいまボストン留学中
(朝日新聞 アピタル 2013.02.25)
http://apital.asahi.com/article/msk/2013022500006.html
日本の厚労省は、たばこ対策にこういったことは考えていないんでしょうね。
6年前まで喫煙者だった経験から、大人になってから禁煙することが難しいと思います。若年者を守るために日本の厚労省は広告規制をより徹底させるべきです。
「喫煙文化研究会」(代表すぎやまこういち氏)が15日、メディアに対し、ファックスを通じて反論の見解を述べたそうです。
「風立ちぬ」への苦言 今度は「喫煙文化研究会」が“反論”
(スポニチ 2013.08.15)
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2013/08/15/kiji/K20130815006423830.html
以下の2点を主張したとのこと。
(1)(映画の)舞台になっている昭和10年代の喫煙率については、公式のデータがないが、1950年のデータを引用すると、男性の84・5%が喫煙しており、当時の状況を再現するにあたっては極めて一般的な描写である。
(2)日本国憲法第21条で、明確に表現の自由が認められている。国際条約との優位性においては、現在「憲法優位説」が通説となっている。
表現の自由は否定していないとは思うんですけどね。
愛煙家通信
http://aienka.jp/
海外でやっている=正しい考え、という図式はどうかと思いますよ。
実際に海外では主流でも結果としては明らかな失敗となっている例はありますし。
ちなみに私も非喫煙者でマナーの悪い喫煙者には何らかの対策は必要だと考えています。
しかしかといって作品ですら喫煙シーンを制限すべきという意見にはやはり表現の自由を侵害してるとしか見えません。
作品の雰囲気を出すのに必要のあるタバコを描かせない事は作品の質を下げることになりますし、禁煙学会の言う「他の手段もあったのでは」は表現者の立場を知らない無責任な言い逃れに過ぎません。
ただの創作物に文句つける前に、表現の自由を侵害せずとも喫煙率は確実に減りつつある日本の禁煙事情の成果をしっかり見てもらいたいものです。
コメントありがとうございます。
まだ作品をみていない段階でコメントをする立場ではありませんが、多くの方のコメントをみると、このシーンについてはヘビースモーカーとも言われている宮崎監督の(たばこに対する)何らかの思い入れがあるのではないかと思いました。(もしそうであれば、ちょっと残念。この作品はこの時点で子ども向けではないと思う)
「大人向けに制作されたアニメ」というのならそれでもかまわないと思いますが、スタジオジブリの作品となるとやはり子ども足を運ぶことになるでしょう。それを考えると、やはり製作者側もそれなりの配慮は必要だったのではないかと思います。
ですから、子どもに見せる見せないは保護者の判断としても、喫煙者や喫煙経験者が映画のシーンを見て「おいしそうに吸っているので、私も吸いたくなった」という声があるように、アニメといえども大人への影響が少なくないことを見ても、R15などの指定にする配慮も必要だったのではないかと思います。
ツイートをみると、ワンピースなど、漫画・アニメなど、喫煙描写を疑問視するコメントも散見されました。
漫画・アニメでの喫煙描写はこれまで問題になっていませんでした、これを機に特に小さな子どもが見るようなものについては、たばこへの好奇心につながらないようにする大人たちの心づかいも必要かと思います。
最後の「喫煙率は確実に減りつつある日本の禁煙事情の成果をしっかり見てもらいたいものです」ですが、ご存じと思いますが、日本のたばこ対策は諸外国から比べるとまだ遅れている部分があるのが現実です。
海外では自販機を禁止したり、カーテンをするなどしてたばこの陳列が目立たなくする対策が行われている国も増えています。
また、少なくとも63の国と地域で2013年までに、たばこ包装に写真入り警告文の義務付けを決めています(TOPICS 2012.11.16)。(日本では、現時点では導入されるという話しは聞いたことがない)
受動喫煙の問題から、多くの国で公共の場や飲食店での全面禁煙が行われていますが、日本で飲食店に足を運ばなくなるとか、経済活動に影響を及ぼすとして実行されていないのが現実です。
まだまだ日本社会は、たばこに寛容なのです。
WHOのレポートを見ても、たばこ対策が遅れていることがうかがわれます。
WHO report on the global tobacco epidemic, 2013
http://www.who.int/tobacco/global_report/2013/en/index.html
Appendix Vii: Country profiles
http://www.who.int/tobacco/global_report/2013/appendix_vii.pdf
繰り返しになりますが、たばこ会社や財務省などに配慮し、こういった世界の現状を伝えてこなかった厚労省(世界禁煙デーのWHOスローガンを変えてしまうくらいだし)や、メディアの責任は大きいと思います。
2013年世界禁煙デーについて(厚労省)
http://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/kin-en/13.html
WHOのテーマ:
「Ban tobacco advertising, promotion and sponsorship」
日本の禁煙週間のテーマ
「たばこによる健康影響を正しく理解しよう」
2011年までは、WHOのテーマに準じたものだったのに
5月31日は「世界禁煙デー」
http://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/kin-en/
だからこそ、日本禁煙学会のごく当然の申し入れに多くの人が違和感を持ち、反発をしたのではないのでしょうか。
関連WEB記事:
『風立ちぬ』にクレームをいれた「日本禁煙学会」は、間違ったことはしていない
(Business Media 誠 2013.08.20)
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1308/20/news028.html
これは意見が分かれて仕方ない話だと思います。
禁煙学会も抗議文だけでなく、映画の終わりに、喫煙の問題をまとめたものを流してもらうよう協力要請したらいいんじゃないでしょうか?
それとか、TVなんかでよくあるように、昭和初期の歴史に基づき喫煙シーンがあります云々とお断りのテロップをで~んと出してから映画を始めるとか。
喫煙者って結構頑固な人が多いし、ダメだって対応だけで禁煙ってできないと思います。ゆえに禁煙学会なる団体だったら対話を重視して禁煙を理解してもらう対応しても良かったのになあ・・・・・って気が。