新規医薬品の情報については、正式承認が行われてからすべきなのですが、これについては今後のスイッチにもかかわることなので、取り上げてみました。
薬食審第一部会 武田の抗肥満薬「セチリスタット」が通過
(RISFAX 2013.08.23)
http://www.risfax.co.jp/risfax/article.php?id=42160
第一部会 武田の抗肥満薬「オブリーン」などを了承
(日刊薬業WEB フリーサイト 2013.08.22)
http://nk.jiho.jp/servlet/nk/gyosei/article/1226574506204.html?pageKind=outline
薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会 資料
(日刊薬業 行政資料)
http://nk.jiho.jp/servlet/nk/related/pdf/1226623672703.pdf
http://nk.jiho.jp/servlet/nk/related/html/1226623515558.html
今回注目したのは、武田薬品工業が製造販売の承認申請をしていたセチリスタット(商品名:オブリーン錠120mg、開発コード:ATL-962)の承認了承(正式承認は薬事分科会での報告後になる)で、ピンときた方もあるかと思いますが、欧米などでOTC薬としても販売されているオルリスタット(XENICAL、alli)と同じ、リパーゼ阻害薬です。
肥満治療薬cetilistat(開発コード:ATL-962)の日本における製造販売承認申請について
(武田薬品工業株式会社 2012.10.30)
http://www.takeda.co.jp/news/2012/20121030_4943.html
このセチリスタットは、調べたところ海外ではたぶんまだ承認されていない成分で、同効薬のオルリスタットに先駆けて発売されることになりそうです。
オルリスタットは、日本では当初中外製薬が開発していたのですが、その後開発を断念、2009年1月に大正製薬が開発・販売権を取得(TOPICS 2009.01.14)していますが、ググってみても、その後の開発状況や販売の目途は明らかになっていません。
セチリスタットが医療用医薬品として承認されることになったことで、オルリスタットはリアップのようにダイレクトスイッチとして開発されることはまず困難となり、大正製薬の反応が注目されます。
確かにこういった領域の薬はダイエット目的で乱用される可能性もあり、当面は医師の処方の下(たぶん処方せん医薬品にも指定されると思う)で使用される必要があるとは思いますが、これで、生活習慣病関連のスイッチOTCはまた遠のくことになりました。
Weight loss, HbA1c reduction, and tolerability of cetilistat in a randomized, placebo-controlled phase 2 trial in obese diabetics: comparison with orlistat (Xenical).
(Obesity. 2010 Jan;18(1):108-15.)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19461584
http://www.medicinabiomolecular.com.br/biblioteca/pdfs/Doencas/do-1694.pdf
(英国で行われたセチリスタットとオルリスタットとの比較をした第2相試験。忍容性は良好で、プラセボ群とオルリスタット群に比べ有害事象による中止少ないことを示された)
関連文献(総説)もいくつか拾ってみました。
Anti-Obesity Drugs: A Review about Their Effects and Safety
(Diabetes Metab J. 2012 February; 36(1): 13–25.)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3283822/
AN OVERVIEW OF PHARMACOTHERAPY OF OBESITY: AN UPDATE
(Int J Pharamceutical Science Research 4(3) p881-890 2013)
http://www.ijpsr.com/V4I3/1%20Vol.%204,%20Issue%203,%20March%202013,%20IJPSR-828,%20Paper%201.pdf
Anti-obesity drugs: past, present and future
(Dis Model Mech. 2012 September; 5(5): 621–626.)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3424459/
New drug targets for the treatment of obesity
(Clin Pharmacol Ther. 2011 Jul;90(1):40-51.)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21654742
http://www.iqanda-cme.com/assets/pdf/New%20Drug%20Targets%20for%20the%20Treatment%20of%20Obesity.pdf
関連情報:TOPICS
2009.01.14 大正製薬、抗肥満薬オルリスタットの開発・販売権を取得
2013年08月25日 23:49 投稿
11月13日の中医協で、1錠47.1円の薬価(これも大きく減算されたもの)で示されましたが、「医療上の必要性」に対し支払側、医療側双方から疑問符の声があがり、収載が見送りとなったそうです。
武田の「オブリーン」、薬価了承見送りに
中医協総会 「ソブリアード」や配合吸入剤3成分など、19日収載予定
(RISFAX 2013.11.13)
http://www.risfax.co.jp/risfax/article.php?id=43011
中医協の(減算となった)説明資料でも次のように記載されています。
新医薬品一覧表(平成25年11月19日収載予定)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000029264.pdf#page=7
本剤は食事療法及び運動療法を実施しても体重減少が見られない2型糖尿病及び脂質異常症を合併する肥満症患者を対象とした第Ⅲ相試験において、プラセボに対して優越性は示されたものの体重変化率の差はわずかであったこと等を踏まえると、革新性や有効性が高いとは言えない
本剤は、単独ではなく運動療法・食事療法等他の療法の中で併用される薬剤であること、また、本薬が本来示すべき有効性のエンドポイントである心血管疾患等の重篤な疾患に至るリスクの低減は臨床試験では示されておらず、単に体重減少効果のみが示唆されただけである
同効薬のオルリスタットは海外ではOTC医薬品として広く販売されていることを考えると、こういった薬は処方薬にすべきかどうかも検討する必要があるのではばいあいと思います(もちろんOTCで乱用されることも困るけど)
ちなみにセチリスタットは処方せん医薬品です
申請資料概要
http://www.info.pmda.go.jp/shinyaku/P201300130/40025600_22500AMX01808_B100_1.pdf#page=22
審査報告書
http://www.info.pmda.go.jp/shinyaku/P201300130/40025600_22500AMX01808_A100_2.pdf
各サイトが議論の様子を伝えています。(要会員登録)
新薬1品目の薬価収載、次回に持ち越し
「薬事承認と薬価収載」、イコールか?
(m3.com 医療維新 2013.11.13)
http://www.m3.com/iryoIshin/article/184984/
【中医協】武田の1成分1品目、収載見送り
新有効成分含有成分では異例
(医療介護CBニュース 2013.11.13)
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/41360.html
記事を見ると、中医協委員からは、「効果があるのかわからない」「薬価に収載する必要があるのか」といった異例の意見が続出しているのに対し、何が何でも薬価に収載したいという厚労省のやりとり(記事の通りなどちょっと異様)をみると、改めて、この領域における保険適用の在り方を考えさせられます。
薬価が提示されて、中医協で収載が保留になるのは極めて異例(薬価がメーカーと折り合わず保留になることはよくあるが)で、次回薬価収載の審議で委員からの了承が得られるかは不透明となりました。