サリドマイド製剤、再承認には安全対策が重要

 27日、薬事・食品衛生審議会 薬事分科会 医薬品第二部会が開催され、藤本製薬が製剤販売承認申請をしていたサリドマイド製剤(サレドカプセル100、藤本製薬)について、薬害再発防止のための安全管理策の実施などを条件に「承認して差し支えない」との結論をまとめました。今後、上部の薬事分科会の審議が行われ、早ければ年内にも結論が出される見通しです。

 各紙によれば、薬事分科会で審議する際には「安全管理の適正な実施」「患者への文書による説明と同意取得」「全症例を対象にした使用成績調査と販売後の安全性・有効性に関するデータ収集」3点が承認条件として必要とし、また、「サリドマイドは社会的関心の極めて高い医薬品」であることを考慮し、審査報告書を公開、一般からの意見募集を9月11日まで実施することを決めています。

「サリドマイド製剤(サレドカプセル100、藤本製薬)の医薬品製造販売承認について」(案)に関する意見募集について(厚労省8月27日)
 http://www.mhlw.go.jp/public/bosyuu/iken/p0827-1.html

承認情報:サレドカプセル100 (独立行政法人 医薬品医療機器総合機構HP)

 一方これと並行して、サリドマイドの使用にあたって、悲惨な被害を再び発生させることのないよう、厳重な管理によって、その適正使用を図る必要があるとして、サリドマイドの承認申請者が、胎児がサリドマイドに曝露されることを防止するために関係各方面の意見を聞きながら策定したサリドマイドの安全管理のための方策等について検討し、必要な改善点等をとりまとめるための検討会が26日から開催されました。

第1回サリドマイド被害の再発防止のための安全管理に関する検討会(2008年8月26日開催)
  WAMNET資料(8月27日掲載) 厚労省資料(9月2日掲載) 議事録(9月24日掲載)

 上記資料には、前回紹介したパブリックコメントで示された「サリドマイド製剤安全管理基準書(案)(TERMS)」をわかりやすくまためたスライド(資料3)が掲載されていて、服薬シート(リウマトレックスと同じようなものでした)や薬剤の取り扱いの実際が示されています。

 また、資料2にはサリドマイド事件の概要が、参考資料には米国におけるサリドマイドの安全管理システムの紹介や多発性骨髄腫の患者団体やサリドマイドの被害者団体の要望書が掲載されいます。

 なおサイドマイド被害者団体の要望書は、財団法人いしずえウェブサイトにも掲載されていますので、是非訪問してみて下さい。

 財団法人いしずえ 要望書提出一覧
   http://www008.upp.so-net.ne.jp/ishizue/yobof.html

 最新の要望書によれば、TERMSについて、「胎児の被害を確実に防止できるものであるか否か」「サリドマイドによる治療を必要とする患者や医療現場の実際に即しており、患者の治療に真に役立つものであるか否か」の2点についてさらなる検討が必要と指摘すると共に、サリドマイドの個人輸入を違法に仲介する悪質な輸入代行業者の取り締まり強化、類似の構造を持つレナリドマイドの規制(サイドマイドと同様に悪質な輸入代行業者が存在)を求めています。

 サリドマイド製剤による薬害が発生してから40年以上が経過し、過去の出来事として忘れがちになっていますが、くすりの販売や調剤に関わるものたちはこのサリドマイドによる薬害の歴史や現実を知り、きちんと受け止める必要があります。現在、登録販売者を目指している方、そして薬害について在学中に学ぶ機会がほとんどなかった私たち現場の薬剤師も、上記資料を一読する必要があるでしょう。

 同団体でも、サリドマイドの危険性とサリドマイド薬害事件の歴史を広く国民に周知させるための広報を行うとともに、学校教育(小学校、中学校、高等学校、および医学・薬学・看護学・介護学等の医療・福祉系の高等専門教育)において、サリドマイドの危険性とサリドマイド薬害事件及び薬害全般の歴史についての教育が行われることや、医療従事者の免許付与(医師、歯科医師、獣医師、薬剤師、看護師等)に関する国家試験にサリドマイドの危険性およびサリドマイド薬害事件と薬害の歴史を出題すること(登録販売者試験では、試験項目として含まれ、実際に今回の試験でも出題されています)を求めています。

 被害者団体「いしずえ」の佐藤嗣道理事長は検討会で、「被害者を一例も出さないことが目標になっているが、リスクはつきまとう」と指摘するとともに、「企業の対策だけでなく、国としてサリドマイドの安全管理をどう考え、被害の再発防止に努めるのか表明して欲しい」と意見を示したそうです。

関連情報:TOPICS 2008.08.13 サリドマイド製剤安全管理基準書案が示される

日本骨髄腫患者の会 http://www.myeloma.gr.jp/index.html

参考:
47NEWS8月27日
 http://www.47news.jp/CN/200808/CN2008082701000574.html
47NEWS8月26日
 http://www.47news.jp/CN/200808/CN2008082601000703.html
朝日新聞8月27日
 http://www.asahi.com/national/update/0827/TKY200808270193.html
毎日新聞8月27日
 http://mainichi.jp/select/seiji/news/20080828k0000m040109000c.html

8月28日 10:30更新 9月24日リンク追加


2008年08月27日 22:54 投稿

コメントが2つあります

  1. アポネット 小嶋

    4日、第2回の検討会が開催され、全管理基準案について議論が行われています。下記ページに資料が掲載されています。

    第2回サリドマイド被害の再発防止のための安全管理に関する検討会(2008年9月4日開催)
      WAMNET資料(9月5日掲載)  厚労省資料(9月10日掲載)

    TERMSにおける情報提供等に用いる資料(案)(処方医師用、責任薬剤師用、患者用、特約店責任薬剤師用、安全管理基準説明用冊子、サリドマイド被害説明用冊子、DVDシナリオ、避妊方法解説書等)が資料6(PDF:4.61MB、厚労省資料)に掲載されている他、委員からの意見書、パブリックコメントに寄せられた意見などが掲載されています。

    委員からは、緊急避妊を強制するような記述は人道上問題はないか等の意見が示された他、パブリックコメント(資料5)に寄せられた意見を読むと、早期の承認を求める患者とその家族の切実な声が伝わります。

    日刊薬業ヘッドラインニュース(9月6日)によれば、検討会では、処方・調剤ごとの手続きが煩雑で簡素化を求める意見が多く出されたことから、今後手続きの一部簡素化がすすめられるようです。

    関連記事:47NEWS 9月5日
      http://www.47news.jp/CN/200809/CN2008090401000681.html

  2. アポネット 小嶋

    18日に行われた第3回検討会の資料及び第1回の議事録(元記事内にリンク)掲載されています。

    第3回サリドマイド被害の再発防止のための安全管理に関する検討会(2008年9月18日開催)
      WAMNET資料(9月22日掲載)  厚労省資料(9月24日掲載)