米国ファイザー社は18日、第3四半期の業績発表の中で、吸入型のインスリン製剤“Exubera”の販売を中止すると発表しました。発売2年も経たないうちに販売中止になるとは驚きです。
医療関係者向けのプレスリリースを探したのですが見つかりませんでしたので、以下は各報道をまとめてみました。なお患者向けには、EXUBERA Home Pageのトップページで販売中止の告知を行っています。
EXUBERA Home Page:http://www.exubera.com
Exuberaは、米バイオ医薬品会社のネクター社が開発したものを、当初はファイザー社とサノフィ・アベンテフィス社と販売権利を共有していましたが、ファイザー社がサノフィから権利を14億ドルで買収し、2010年には売上高が11億5000万ドルを超えると予想されるなど、夢の新薬として大きな期待を集めていました。
しかし、ふたを開けてみると、売上高のシェアは1%にも達することができず、2007年も9ヶ月間で1200万ドルの売上に留まったそうです。同社では、今後も売上のアップが見込めないとして、販売中止の決定をしたようです。また、今回の販売中止に関連する費用が28億ドルかかるとされており、業績に大きな影響を与えるとしています。
Exuberaについては専門家から一定の評価があるものの、結果として売上が伸びなかったのは、従来のインスリン注射剤と比べ、コスト高、簡便性、定期的な肺機能検査などの煩雑さなどのため、患者・医師双方とも敬遠したのが理由のようです。
近くファイザー社はExuberaの販売権利をネクター社に返す交渉を行うとしており、今後他社からの販売継続の可能性もありますが、ネクター社は今回の事態を受けて、18日のステートメントでファイザー社の販売戦略に非常に失望したと表明しています。
Nektar Therapeutics Issues Statement on Exubera
(ネクター社プレスリリース 2007.10.18)
http://www.nektar.com/wt/page/pr_269991/?ref=Media_Press_Releases
Exuberaは米国の他、ドイツ、アイルランド、イギリスなどでも発売されていますが、これらの国での販売継続については不明です。また現在、リリー社などの競合品の開発がすすめられていますが、これらにも何らかの影響を与える可能性があります。
関連情報:TOPICS
2006.04.20 吸入型インスリンは費用対効果が十分でない(英国)
2006.01.28 吸入タイプのインスリン「エクスベラ」が米国・欧州で承認
吸入インスリン「Exubera」、、、売れてません
(アメリカ 薬の仕事 2006.10.26)
http://hachikin.exblog.jp/4075951/
吸入式インスリンExubera、イマイチの評価
(ALL About 2006.11.16)
http://allabout.co.jp/health/diabetes/closeup/CU20061116A/
参考:Pfizer To Stop Selling Exubera
(Health-System Pharmacy News 2007.10.18)
http://www.ashp.org/s_ashp/article_news.asp?CID=167&DID=2024&id=22582
Weak sales prompt Pfizer to cancel diabetes drug
(International Herald Tribune 2007.10.19)
http://www.iht.com/articles/2007/10/19/business/19pfizer.php
日本経済新聞10月19日
10月19日 23:50掲載 22日11:10更新
2007年10月19日 23:50 投稿