EMA(欧州医薬品庁)のCHMP(医薬品委員会)は21日、性交後120時間(5日間)効果があるとされる緊急避妊薬のellaOneについて、処方せんなしでも安全かつ有効に使用ができるとして、処方せん医薬品から非処方せん薬への分類の変更を勧告すると発表しています。
EMA recommends availability of ellaOne emergency contraceptive without prescription
(EMA Press Release 2014.11.21) →リンク
http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/Press_release/2014/11/WC500177649.pdf
ellaOne(成分名:ulipristal acetate)は、2009年末に処方せん薬としてEUで承認、2010年には米FDAからも承認を受け、現在70か国300万人以上の女性に使用されています。
発売元のHRA-Phrama 社では、ellaOne のスイッチで、新たに現時点では処方せんなしでの購入ができない、クロアチア、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、イタリア、リヒテンシュタイン、ポーランド在住の女性4,800万人を加えた欧州の1億2千万人の女性が、薬局から緊急避妊薬に直接アクセスできるようになるとしています。
Landmark recommendation from EMA paves the way for access without prescription to the ellaOne® morning-after pill across Europe in 2015.
(HRA-Pharma 2014.11.21) →リンク
ellaOne(HRA-Phrama)
http://www.hra-pharma.com/index.php/en/our_products/womens_health/emergency_contraception/ellaone
ellaOne 30 mg
http://www.medicines.org.uk/EMC/medicine/22280/SPC/ellaOne+30+mg/
Public Assessment Report(EMA)→リンク
今回の勧告は今後EC(欧州委員会)に送付され、法的拘束力のある決定として採択される手順がとられ、早ければ2015年2月頃には処方せんなしでの販売が可能になるとしています。
Pharma Times によれば、英国のリプロダクティブ·ヘルスの専門家(といってもこの製薬会社のCEO?)は、「ellaOneは、この5年間使われてきた非常に効果的な緊急避妊薬で、薬局からよりアクセスしやすく、迅速に利用できるようにすることは必然かつ賢明なことだ」と指摘しているそうです。
EMA advisors back AbbVie, Celgene, Sanofi and BI drugs
(Pharma Times 2014.11.22)
http://www.pharmatimes.com/Article/14-11-22/EMA_advisors_back_AbbVie_Celgene_Sanofi_and_BI_drugs.aspx
緊急避妊薬というと、性交(失敗)後72時間以内までに使用する Norlevo(ノルレボ)など、レボノルゲストレルを含有する製品が知られていますが、レボノルゲストレルは米国やカナダ、オランダ、ノルウェー、デンマークなど17か国で直接購入が可能、また英国やフランス、中国やタイ、豪州など各56か国では、薬剤師を通じての処方せんなしの購入が可能となっています。
Countries with non-prescription access to EC
(International Consortium for Emergency)
http://www.cecinfo.org/country-by-country- information/status-availability-database/countries-with-non-prescription-access-to-ec/
日本はどうかというと、ご存じのように上記には含まれず、アクセスと価格の問題が大きな課題となっていることは以前紹介しました(現状はあまり変わらない様子 TOPICS 2011.09.17)。
緊急避妊薬の入手に処方せんが必要なイタリアやドイツでも、今回の勧告を機に、処方せんなしでの購入を可能にするよう声が出ています。(非処方せん薬にするかどうかの最終決定はそれぞれの国の判断。バチカンがあるイタリアの対応はわからないでもないが)
Pillola dei 5 giorni dopo: ok dell’Ema, senza ricetta in Europa
http://www.vitadidonna.org/salute/11352-ema-dal-2015-nessuna-ricetta-per-la-pillola-dei-5-giorni-dopo-forse-anche-in-italia.html
Pillola “5 giorni dopo” senza ricetta.
(Radio Vaticana 2014.11.22)
http://it.radiovaticana.va/news/2014/11/22/scienza_e_vita_pillola_5_giorni_dopo_%C3%A8_un_abortivo/1112048
„Pille danach“: Gröhe schwenkt um
„Apothekerberatung der richtige Weg“
(DAZ.Online 2014.11.22)
http://www.deutsche-apotheker-zeitung.de/politik/news/2014/11/21/apothekerberatung-der-richtige-weg/14396.html
多くの海外の方の来日が予想される、東京オリンピックが開催される2020年に向けて、緊急避妊薬のアクセスについても検討する必要があるかもしれません。
関連情報:TOPICS
2011.09.17 ノルレボ錠、認知の課題は価格とアクセス+啓蒙
2011.04.03 薬局で緊急避妊薬を無料提供(英ウェールズ)
2011.02.23 緊急避妊薬・ノルレボ錠が正式承認、パブコメ結果も公表
2011.02.22 海外におけるスイッチOTCの状況(Update)
2010.11.10 緊急避妊薬・ノルレボ錠承認に向けパブコメ開始
2010.05.26 若者の緊急避妊薬へのアクセスを容易にすべき(英国)
2008.05.16 緊急避妊薬の分類が変更へ(カナダ)
2008.04.23 緊急避妊薬は薬局で簡単に購入できるようにすべき(カナダ)
2006.08.25 FDAが緊急避妊薬のOTC化を条件付で承認
2005.11.03 OTCとして供給される緊急避妊薬(英国)
関連記事:
Emergency contraceptive gets pharmacy access clearance
(Pulse Today 2014.11.21)
http://www.pulsetoday.co.uk/clinical/emergency-contraceptive-gets-pharmacy-access-clearance/20008538.article
11月22日 10:55更新
2014年11月22日 02:18 投稿
勧告後1年を経ての各国当局の政策(償還の可否)や販売状況(供給方法)についての調査結果が報告されています。
Status of Emergency Contraceptives in Europe One Year after the European Medicines Agency’s Recommendation to Switch Ulipristal Acetate to Non-Prescription Status.
(Public Health Genomics. Published Online 30 Mar 2016)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27022731
http://www.karger.com/Article/FullText/444686
http://www.karger.com/Article/Pdf/444686
各国で薬剤師のためのチェックリストが作成される一方、信条を理由とした販売拒否も散見されるそうです。