昨年2016年4 月5 日に「薬剤耐性(AMR)アクションプラン」が策定されて以来、抗生剤の適正使用や薬剤耐性(耐性菌)の問題がようやくメディアで取り上げられるようになりましたが、これらに対する国民の関心や知識がどのような状況にあるかを調べた、おそらく初めて行われたきちんとした実態調査です。
下記、厚生労働科学研究の分担研究「国民の薬剤耐性に関する意識についての研究」としてまとめられています。(込み合っているときは、報告書を一括ダウンロードして解凍したほうがいいみたいです)
医療機関等における薬剤耐性菌の感染制御に関する研究
(H28厚生労働科学研究)
http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=201617008A
この研究は、薬剤耐性(AMR)に関する国民の知識を評価・分析し、より効率的な普及啓発を目指し、その普及啓発に伴う国民の理解・知識の推移をみることを目的に今年3月に行われています。(21093人に調査依頼し、3390人(16.%)が回答したインターネット調査。医療従事者は全体の中から排除して解析。質問は全部で24問)
調査結果からいくつか抜粋します
- 抗菌薬を飲むことになった理由を尋ねたところ、風邪(45.5%)が最も多く、その他(21.6%)、インフルエンザ(11.6%)、発熱(10.7%)の順となった。
- 自宅に抗生物質を保管していると答えたのは全体の11.7%で、このうちの75.8%が「抗生物質を自分で使ったことがある」と答え、また、このうちの26.5%が「家族や友人にあげて使ったことがある」と答えた。
- 抗菌薬の自己中断や用量用法を加減したことのある人は、全体の23.6%であった。
- 抗菌薬に関する知識・認識については、「抗生剤はウイルスをやっつける」(46.8%)、「風邪やインフルエンサに抗生物質は効果的だ」(40.8%)といった誤った認識がまだ多く、また、「抗菌薬には副作用(下痢など)がつきものだ」との認識は36.8%に留まった。
- この1 年間に「不必要に抗生物質を飲んではいけない」という情報を新たに知り得たのは16.8%で、57.5%は知る機会がなかったと答えた。
- これらの情報源としては、新聞やテレビのニュース番組が最も多く(25.7%)、医師(19.1%)、家族または友達(11.6%)で、薬剤師は5.9%に留まった。
- 一方で抗生物質に関するきちんとした情報を得ようとするとき、利用する情報源として挙げたのは、医師が最も多く(73.5%)、薬剤師(41.6%)、病院(21.4%)で、その他の健康関連のインターネットサイトは17.1%だった。
- 薬剤耐性という言葉の認知度は41.6%で、原因として、抗生物質の過剰な使用(46.5%)、抗生物質の不必要な使用(36.8%)など、一部理解がすすんでいた。
調査時期が、内閣府などからの情報発信や関連報道が多く行われた後の、今年3月だったことを考えると、国が考えるほど、一般国民のこの問題に関する認識や関心はまだまだ低いように思われます。
研究者らは、「今後、一般国民に向けた普及啓発を実施する中で一定の効果が期待される」としていますが、今のやり方のままだと、不十分だと感じました。
医療関係団体や医療機関を巻きこんだポスターや動画による啓発、専門のウェブサイトによるわかりやすい情報発信ともに、何よりも、まず処方する側の認識の変化と患者さんへのきちんとした直接の啓発が必要ではないかと思いました。
この研究について次のようなツイートをしたところ、多くのリツイートがありましたので紹介しておきます。(一般の人に啓発したいが、現実は・・という声も。個人的にもそう)
自宅に抗生物質を保管が11.7%
このうちの75.8%が自己判断で使用、26.5%が家族や友人に譲渡国民の薬剤耐性に関する意識についての研究 など
【H28厚生労働科学研究】
医療機関等における薬剤耐性菌の感染制御に関する研究https://t.co/6LfghuhFRv— 小嶋 慎二@アポネット (@kojima_aponet) 2017年6月10日
だって、医者が最初から「予備のため」って処方するケースもあるし(-。-;
今日も5日分処方された患者が「3日間だけ飲んで後は手持ちとして持っておきなさい」と口頭で指示されてました。 https://t.co/4kLop5DMyl— らぶらぶ (@ApoLoveLove) 2017年6月10日
ついこの間、某大学病院からの処方で、次回診察時までの間に「何かあったら服用」という理由でのニューキノロン系の長期処方がありました。 https://t.co/ClnBOlHJcu — Asamariko (@asamariko) 2017年6月10日
泌尿器科から毎月クラビット5日分出てるのを手帳で確認したから、どういう意図か聞いたらたまに膀胱炎になるから毎月出してもらってるって言うんだよね。1年分くらい溜まってるんだって。50錠はあるって事だよね?手帳にそう書いたけど、翌月また処方されてた。門前何やってんだ? https://t.co/BwRGqefVaO
— ぱえりあ (@paella_z) 2017年6月10日
小児科でさ、ただの軽い風邪って診断したときに出る、念のため抗生物質は何なのかな。溶連菌の時やら中耳炎の時のはわかるんだけど、風邪の時に抗生物質飲んでもお腹壊してたまに悪化するときあるし…。 https://t.co/LpDFJkfWXh — よるか (@KaworiYoruka) 2017年6月10日
膀胱炎が癖になっちゃっているんで・・・とおっしゃる患者さんの多くが自己判断で自宅になぜかあった抗菌剤を飲んでから来院。それだと「尿培養も感受性も検査できないので癖になっちゃうんだよ」と何回説明したことやら。 https://t.co/rrvvtVgmuR
— 桑満おさむ (@kuwamitsuosamu) 2017年6月10日
一般の方が抗菌薬を風邪薬と思い込んでしまっているのはばら撒いている医師の責任だ。残念ながら、しかしばら撒いている医師の方が多い様に感じる。 一般の方への啓発が必要。 https://t.co/4IpZrLlFa9 — HSW-ID (@hoakin_inf) 2017年6月10日
関連情報:TOPICS
2017.06.01 抗微生物薬適正使用の手引き 第一版(厚労省)
2016.11.13 薬剤耐性(AMR)対策推進月間だけど
2015.10.21 抗菌薬啓発週間2015(Antibiotic Awareness Week)
2014.11.24 抗菌薬適正使用のための啓発リーフレットICS
2012.11.12 Antibiotic Awareness Week 2012
2011.11.19 ANTIBIOTIC AWARENESS WEEK
2010.11.18 Antibiotic Awareness Day の輪が広がる
2009.11.19 European Antibiotic Awareness Day 2009
2008.11.08 European Antibiotic Awareness Day
(上記記事のリンク先は削除まだは更新されています)
2017年06月10日 22:04 投稿