After corona で、地域薬局の業務も新たな展開となりそうですが、久しぶりに薬局業務関連で論文をチェックしていたら、Pharmacy Practice 誌(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/journals/2167/)が、 Integration of community pharmacy in primary health care をテーマとした International Series の掲載を開始しています。
プライマリ・ヘルス・ケアといえば、2019年10月、FIPの欧州地域の会合がトルコで開催され、Primary Health Care (PHC) や、同じく去年岡山で開催された、G20保健大臣会合の宣言にも盛り込まれたUniversal Health Coverage (UHC)に対し、地域薬剤師がどうかかわるかということが話し合われています。
Pharmacy leaders from across the European Region commit to delivering primary health care for all
(FIP 2019.10.25)
https://www.fip.org/news?news=newsitem&newsitem=302
今回の特集連載は、こういった背景から始まったもので、こちらのEditorialで、連載の意義や目的が記されています。
An international series on the integration of community pharmacy in primary health care
(Pharm Pract 2020 Mar 13)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7092709/
(連載の目的)
- プライマリ・ヘルス・ケア政策の戦略と個々の国での展開、および想定される主な変化について説明
- これらの展開や変化が community pharmacy や community pharmacist にどのように及ぶのか、またその役割について説明
- community pharmacy 団体組織の戦略的計画、ビジョン、ミッションステートメントについて説明及び分析
- community pharmacy/pharmacist が直面する課題と機会について議論
2020年5月の時点で、England、スゥェーデン、豪州の取り組みが紹介されています。
新たな報告がアップされ次第、この記事も更新できればと思っています。
紹介日 | 論文・報告タイトル (紹介記事・ブログ、関連論文) |
概要・コメント |
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08.14 | Primary health care policy and vision for community pharmacy and pharmacists in Indonesia (Pharm Pract 2020 Jul 22) |
インドネシアでは、universal health coverage (UHC)への参画が課題になっている様子 |
08.14 | Primary health care policy and vision for community pharmacy and pharmacists in Portugal (Pharm Pract 2020 Jul 17) |
ポルトガルでは2007年に開設者に薬剤師の要件が撤廃されたが開設者の要件の他、開設に当たっては必要な住民数や距離制限などの規制がある。 薬局の開設は4つまでで、薬剤師は2人配置することを求めている他、テクニカルディレクターの任命(日本の管理薬剤師?)や、取り扱う品目を定めている。政令で、薬局が提供できる医薬品サービスを定義している。
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06.29 | Primary health care policy and vision for community pharmacy and pharmacists in Lebanon (Pharm Pract 2020 Jun 3) |
2016年にレバノン薬剤師協会(OPL)がまとめた使命、ビジョン、目的を基に、薬学専門職を発展させ、患者の安全をサポートするための戦略的計画の一環として、WHOとFIPのガイドラインに触発されたいくつかのプログラムを提案してきた。さらに、プライマリーヘルスセンターに薬局を統合し、専門職の公衆衛生的側面を促進し、重要な健康問題やレバノンの人口動態や疫学的変遷の変化を考慮に入れた戦略的計画を実施することを提言している。 |
06.29 | Primary health care policy and vision for community pharmacy and pharmacists in Spain (Pharm Pract 2020 Jun 1) |
約750人のプライマリーケア薬剤師(primary care pharmacists)を含む他職種で構成される「プライマリーヘルスケアチーム」を通じて、基本的な一次医療が提供されている。地域薬局の業務は、調剤と生活者の軽度疾患への非処方薬での対応を基本だが、新しい臨床サービスの概念的および実用的な開発に関する広範な哲学的な議論により、全国的に合意された分類、定義、プロトコル化されたサービスが生まれている。→関連ツイート |
06.01 | Primary health care policy and vision for community pharmacy and pharmacists in England (Pharm Pract 2020 Mar 13) |
新薬サービス(NMS:The New Medicines service)、構造化薬物レビュー(Structured medication reviews)、インフルエンザ予防接種サービス(Flu vaccination service)、追加予防サービス(Further prevention services)、地域薬剤師相談サービス(Community Pharmacist Consultation Service)などが紹介されています。(以下は、2020.01.08 のツイートから)この記事でも触れていますが、これまで脚光を浴びていた、MUR(medicine use review)は、2021年4月までに段階的に廃止することが決定ずみで、フィーに見合う価値を提供していないことが理由の他、GPや施設に配置される薬剤師が役割を担うということらしい。一方でNMS(COPD、2型糖尿病、抗血栓薬治療患者、および、高血圧の患者を対象として、新しい処方薬剤による副作用の発現状況等をモニタリングするサービス)は充実が図られ、抗うつ剤も対象にする方向になっているという。 |
06.01 | Community pharmacy and primary health care in Sweden – at a crossroads (Pharm Pract 2020 May 2) |
スウェーデンといえば、2009年までは国営だった薬局が民営化され、今は5つのチェーンに集約されているという。様々な有望なプライマリーケアサービスが提供されているが、限定的。処方箋の販売と迅速な調剤が優先され、カウンセリングを最小限に抑えていることが多いとのこと。地域薬局は岐路に立たされているが、より地域に密着した digi-physical care と変貌を遂げているプライマリ・ヘルスケアとの連携のルートを選択する絶好の機会にある。主な課題は、プライマリヘルスケアでの議論や戦略計画、国の政策文書に、パートナーとしての地域薬局が含まれていないことである。個別の取り組みとしてはスキンケアについてのものが目を引いた。 |
06.01 | Primary health care policy and vision for community pharmacy and pharmacists in Australia (Pharm Pract 2020 May 15) |
当局との契約に基づき行われているフィーのつく事業(Medication adherence programs、Medication management programs、Pharmacy Trial Programs)と、無報酬または、患者が料金を支払うサービス(予防接種、慢性疾患管理サポート、スクリーニング、健康増進、緊急避妊など)などさまざまな取り組みについての紹介があり、興味深い。 |
2020.06.29、08.14更新
2020年06月01日 16:09 投稿