TOPICS 2020.07.02 で、規制改革推進会議がスイッチOTCを拡大のための提言を盛り込んだ答申をまとめたことを紹介しましたが、10月28日に開催された、医療用から要指導・一般用へのこの答申への対応案が示され、これまで可否の判断で前回一致を原則とするなどの弊害が指摘されていた運営方法の見直しが決まったそうです。
スイッチOTC化の要望のあった成分について、「評価検討会議」は、今後は可否判断をしないことを決めました。課題や論点の整理にとどめ、スイッチ化するかどうかの判断は薬事・食品衛生審議会に委ねます。これまでの運営方針から大きく転換します。また、メンバーに消費者代表ら追加も https://t.co/1SZ9643QTu
— 折口慎一郎(じほうPNB記者) (@PNB_origuchi) October 28, 2020
第12回 医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議
(厚労省 2020.10.28 開催)
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000198111_00009.html
規制改革実施計画等を踏まえた評価検討会議の運営等について
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000688622.pdf
- 評価検討会議では、 要望成分のスイッチOTC化を行う上での課題・論点等を整理し、評価検討会議としての意見をまとめ、薬事・食品衛生審議会に意見として提示することとし、可否の決定は行わないこととする。
- 多様な意見があり集約が図れない場合は、それらの意見を整理して提示することとする。
- 評価検討会議の開催要領に、「課題・論点等を整理し、評価検討会議としての意見をまとめる」「多様な意見が出された場合には、それらの意見を整理する」等を記載し明確化する。
- より多様な主体からの参加を求めることとし、消費者代表をはじめ、産業界や流通・販売の関係者などから複数名の委員の追加を行う。
- 選択肢の1つとして、評価検討会議に要望を提出することなく、製造販売承認申請を行うことを可能とする。
- 直接承認申請された際は、原則、評価検討会議でも議論することとする。ただし、直接承認申請された医薬品の効能又は効果が、既に承認されている要指導・一般用医薬品と類似のものであり、スイッチ化における論点・課題を改めて議論・整理する必要がないと考えられるものを除くこととする。
- 直接承認申請された場合の、情報の公開のあり方、評価検討会議の関与の具体的方法等については別途検討する。
また、運営については次のようなの改善・変更事項が示され了承されたそうです。
- 各成分情報資料の充実を図る。例えば、健康食品等の国内外の情報(有効成 分の含有量等の情報も含む)を追加するなど。
- 希望に応じて、要望者等からの要望内容に関する説明の機会を設ける。 希望に応じて、1度目の検討の後、2度目の検討の際に、要望者等からの意 見等を記載した文書の提出を可能とする。
(2)進捗状況の管理
- 評価検討会議で挙げられた課題について、課題解決に向けた対策の検討状況、 実施状況を定期的に報告
これまで、いろいろと注文をつけていた医師委員からは、この案について特に異論は示されなかったそうです。 規制改革推進会議の意向には逆らえなかったのかもしれません。
今まで、「適否の判断は全会一致」と繰り返し言っていたのにね。 — 小嶋 慎二@アポネット (@kojima_aponet) October 28, 2020
一方、今回の検討会議では日医、日薬、OTC医薬品協会などがそれぞれの立場でプレゼンを行い、次のような考え方が示されています。
各団体の考え方 | |
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日本OTC医薬品協会(未定稿) | 1. 自覚症状により自ら、服薬の開始・中止等の判断が可能な症状に対応する医薬品 ① 既存のOTC医薬品と効能効果が同等であり、かつ作用機序、使用方法が同等である医薬品 ② 既存のOTC医薬品と効能効果が同等であるが、作用機序や使用方法が新規の医薬品 ③ 効能効果が新規であり、作用機序や使用方法が既存のOTC医薬品と同等、もしくは新規の医薬品 2. 再発を繰り返す症状であって、初発時の自己判断は比較的難しいが、再発時においては自ら、症状の把 握、服薬開始・中止等の判断が可能なものに対する医薬品 3. 医師の管理下で状態が安定しており、対処方法が確定していて自己管理が可能な症状に対する医薬品 4. 疾病の発症抑制、健康づくりへの寄与が期待できる医薬品5. 無侵襲または低侵襲の簡易迅速自己検査薬 6.社会的要請に応えるとともに、グローバル化に伴う国際的視野から必要とされ、医療における国民の 選択肢拡大や利便性の向上に寄与する医薬品 |
日本医師会 | • 一般用医薬品のあるべき姿 – 比較的短期間で – 自覚症状により使用・使用中止の判断が自分で行える – 安全に使用できる • 本来推進すべきはセルフケア •適正使用も含めた安全確保 |
日本薬剤師会 | • セルフメディケーションは、国民が自身の健康寿命の延伸のために、主体的に自己の健康管理を行うものであり、そのための環境整備は必要。
• 医薬品へのアクセスは、医師の診断によるものと、自身の選択で購入で きるものがある。それぞれに意義があり、共存することが重要。国民が 主体的に自己の健康管理を行う際に、医薬品アクセスに選択肢がないも のについては、改善が必要と考える(例:抗菌薬配合点眼薬、非麻薬性 鎮咳薬等)。 • 同じ成分の医薬品であっても、消炎鎮痛外用貼付薬のように使用者の年 齢や生活環境の違い等によって使用する場面が異なるため、成分だけで はなく総合的な視点で検討すべき。 • 転用にあたっては、上記の要点を勘案したうえで、長年、医療用医薬品 として使用実績があり、薬剤師にとっても知識や経験があるものを基本 とすべき。 • 医薬品の適正使用に資する、より良い提供体制を構築する上で、医 療用医薬品と同様に使用者の状態等の必要な情報収集と正確な医薬 品情報の提供に努めることが重要である。 • OTC医薬品についても、薬剤師によるかかりつけ機能を発揮し、 お薬手帳や調剤録、薬剤服用歴管理記録の活用により、医療用医薬品とOTC医薬品の情報を一元的・継続的に把握し、医師との連携を図る等、使用者がスイッチOTC医薬品を安全に安心して使用で きる環境を整える。 |
国民生活センター | 1.ある程度長期間あるいは定期的に通院してきた疾病で、同じ症状が出た際に処方される薬はOTCで対応してみてもよいのではないか 。但し、症状が改善しなければ医師に。また、症状が改善しても半年に1度は通院。
2.安全性に大きな問題がないものは、薬剤師の関与を強化しOTC化 してもよいのではないか。薬剤師に研修を行う、販売できる薬局を拠点化することも必要 3.医師が診断し薬の選択をしたものを一定期間OTCでまかなうということも。 但し、半年に1度は通院(半年間の期間がわかるのものを医師が発行) |
日医は相変わらず、副作用の問題など、相変わらず、重箱のすみをつつくようなプレゼンになりそう。
あと市販薬の濫用を持ち出しているが、販売側の対応だけで解決できるものではない
(長島構成員(日本医師会 常務理事)発表資料)
スイッチOTCの開発促進に向けた課題https://t.co/1tUWUCfgJo— 小嶋 慎二@アポネット (@kojima_aponet) October 27, 2020
あとは最後のスライドの『OTC医薬品の薬学的管理の充実・医師との連携』という部分。 確かにそうなんだろうけど、「医師との連携」といったことを前面にすると、自らかえってハードルを上げているような気がしてならない。 — 小嶋 慎二@アポネット (@kojima_aponet) October 27, 2020
あと気になるのが、今回未定稿として示された、中間とりまとめ(骨子)の内容の一文です。
これまでの議論を踏まえ、スイッチOTC の満たすべき基本的要件を以下の3点に整理したらどうか。
- 使用者の状態に応じた医師による用量調整や薬剤選択などの服薬管理(他剤との併用も含む)を必要としない薬剤であること。
- 使用する際に消費者自身が症状を判断することが可能であり、消費者自身の判断で適正に使用することが可能な医薬品であること。また、症状の原因疾患以外の疾患の症状もマスクする可能性がある場合、生じるリスクについて、講じる対策により許容可能なリスクにできること
- スイッチ OTC 化した際に懸念される公衆衛生上のリスク(医薬品の濫用等)について、講じる対策により許容可能なリスクにできること。
基本的要件がこの案でまとまると、またこれを盾に転用の反対の理由にされないとも限らず、今議論になっている緊急避妊薬のOTC化の問題や、既存の総合感冒薬の濫用問題への対応についても影響が出てくるものと思われます。
前回9月24日の検討会議はYouTubeで中継が行われましたが、今回は行われませんでしたので、構成員がそれぞれの立場でどのような発言をされたかは、現時点では業界紙の情報に限られています。議事録のすみやかな公開を望むところです。
2020年10月29日 11:57 投稿