プソイドエフェドリン、エフェドリン、メチルエフェドリンなどのエフェドリン類は、高血圧・脳卒中・心筋梗塞を引き起こす危険性があることが知られている。
また、エフェドリンは痩身目的や娯楽的使用への懸念、プソイドエフェドリンやエフェドリンの原末は覚醒剤原料に指定されており、メタンフェタミンの密造への懸念がついて回る。
現在、エフェドリンは内服薬としてはほとんど使用されておらず、海外では外用薬として使われている国もある。
日本で頻用されるメチルエフェドリンは薬効がよりマイルドで、かつ覚醒剤の密造に転換されにくい成分としたエフェドリンの誘導体であるが、海外での使用例はほとんど聞かない。
一方、エフェドリン類にはこれ以外に、鼻みず,鼻づまり等の症状の緩和を目的に、医療用一般用に広く配合されてた塩酸フェニルプロパノールアミン(PPA)(覚醒剤原料)という成分があった。この成分は欲抑制剤として濫用されることがあり、過量服用者などから出血性脳卒中が報告され、本邦でも2003年に製造中止が求められ、代替してプソイドエフェドリン(PSE)が切り替えとなった。
【医薬品・医療用具等安全性情報 No.193 2003.9】
塩酸フェニルプロパノールアミンを含有する 医薬品による脳出血に係る安全対策について
https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/calling-attention/safety-info/0124.html#gai
しかし、この代替となったプソイドエフェドリンについても心血管リスク懸念がついてまわり、フランスなどでは、健康リスクを考慮して、短期使用にとどめるなどの対策がとられている。
最近では、可逆性後頭葉白質脳症(PRES)および可逆性脳血管収縮症候群(RCVS)のリスクが支援され、各国当局は注意喚起を行っている。
本邦ではプソイドエフェドリンはこういった経緯で登場したことから、安全性を示すデータが不足しており、一般用・医療用いずれについても、こういった健康リスクについてはあまり重視されていない。
本邦でも、過量使用、長期連用に伴う健康リスクと覚醒剤密造の懸念という面で、数量規制を厳格に行う必要があると考える
以下に、プソイドエフェドリンの各国の規制状況を示したい
国名 | OTC/RX | 包装や規制等 |
---|---|---|
スペイン (1982) |
OTC | 1日最大360mg アセトアミノフェンや抗アレルギー剤等との合剤 |
英国 (1994) |
OTC | 1日最大120mg プソイドエフェドリン720mg、エフェドリン180mg超は処方箋医薬品 |
ブルガリア | OTC | アセトアミノフェンや抗アレルギー剤等との合剤 |
チェコ | OTC | アセトアミノフェンやイブプロフェンとの合剤・一人当たり1週間に最大720mgのPSEを含む1パックまで ・1人1ヶ月あたり1,800mgまで – 薬局は販売記録センター(central register)に売上を記入し、同じ週にその製品が特定の人に販売されていないことを確認しなければならない ・インターネットによる通信販売は禁止されている。 |
デンマーク | RX | |
フィンランド | RX | |
フランス | OTC | 合剤 薬剤師管理下 広告禁止
(表外追記参照) |
ドイツ | OTC | 合剤 |
ギリシャ | OTC | 合剤 |
ハンガリー | OTC | イブプロフェンとの合剤 |
イタリア | OTC | 合剤 |
リトアニア | OTC | 合剤 |
オランダ | RX | 心血管リスクから1989年にRXに |
ノルウェー | RX | |
ポルトカル | OTC | アセトアミノフェンやイブプロフェン等との合剤 |
ルーマニア | OTC | |
スロバキア | OTC | 合剤 |
スロベニア | OTC | 合剤 |
スウェーデン | 未承認 | |
スイス | RX | |
オーストリア | OTC | アセトアミノフェンやイブプロフェン等との合剤 |
ベルギー | OTC | 最大パックサイズ 360mg(60mg×6) |
クロアチア | OTC | アセトアミノフェンやDXM等との合剤 |
エストニア | OTC | |
アイルランド | OTC | 1日最大240mg アセトアミノフェンや抗アレルギー剤等との合剤 |
ポーランド | OTC | 最大パックサイズ 720mg(60mg×12) |
ルクセンブルク | OTC | 最大パックサイズ 360mg(60mg×6) |
マルタ | OTC | 合剤 |
キプロス | OTC | 合剤 |
豪州 | OTC | すべてのPSE含有製剤は、現在、スケジュール3の要薬剤師薬に分類され、販売ごとに薬剤師が関与することが義務付けられている。一箱あたり720mg以上のPSEを含むすべての製剤は処方箋のみに移行し、販売には医師の処方箋が必要となった。
患者は写真付き身分証明書を提出しなければならず、薬剤師はリアルタイムのオンライン・データベース「Project STOP」に記録することを奨励しており、短期間に複数の薬局から少量の医薬品を購入することを防ぐのに役立っている。 |
ニュージランド | OTC | 2003 年にPSEはクラス C の規制薬物 (1975 年薬物乱用法のスケジュール 3) に再分類1回投与量あたり60 mg以下(徐放性製剤の場合は240 mg)で、1800 mg以下を含むパッケージで供給されるPSE製剤は、処方箋なしで薬局で販売可
2011年、PSE と EPH は Class B1 drugs となり処方箋医薬品に再分類 フェニレフリンへの代替が進んでいたので、消費者から大きな苦情や疑問はなかった 2024年に政権の枠組み変更から要薬剤師薬に再分類 代替のフェニレフリンの有効性に疑問が出たことも原因 薬剤師による販売の可否の判断と販売記録が必要 |
米国 | OTC | FDAは2006年に以下の規制を導入・PSEはカウンターの後ろか、鍵のかかるキャビネットに保管しなければならない(薬局および薬局以外の店舗)
|
メキシコ | 販売禁止 | メタンフェタミン密造の懸念 |
コロンビア | 販売禁止 | メタンフェタミン密造の懸念 |
グアテラマ | 販売禁止 | メタンフェタミン密造の懸念 |
参考
【AESGP】
OTC Ingredients
https://otc.aesgp.eu/
【MHRA】
Safety Public Assessment Reports
https://www.gov.uk/guidance/safety-public-assessment-reports
【Mail Online 2023.02.24】
How Sudafed drug behind safety review is controlled across the world
https://www.dailymail.co.uk/health/article-11785603/How-Sudafed-drug-safety-review-controlled-world.html
●フランスにおける安全対策
2017年12月18日より広告が禁止
2011年12月に示された「使用は最大5日まで遵守する」「重症高血圧、冠動脈疾患、重度の痙攣の既往歴がある人、15歳未満には使用しない」などの適正使用に関する事項の徹底
【L’USINENOUVELLE 2018.01.24】
Dolirhume, Fervex, Actifed… Pourquoi les médicaments “anti-rhume” sont-ils privés de publicité ?
https://www.usinenouvelle.com/article/dolirhume-fervex-actifed-pourquoi-les-medicaments-anti-rhume-sont-ils-prives-de-publicite.N642903
このタイプの薬は、風邪の第一選択治療として使用すべきではないとして、風邪は治療しなくても 7 ~ 10 日で自然に治ることを注意し、血管収縮薬を服用する前に注意するよう呼びかける。
【仏ANSM 2022.12.14 Update】
Rhume, nez qui coule, nez bouché ? Attention : l’utilisation des vasoconstricteurs expose à des risques, soyez vigilants !
https://ansm.sante.fr/actualites/rhume-nez-qui-coule-nez-bouche-attention-lutilisation-des-vasoconstricteurs-expose-a-des-risques-soyez-vigilants
プソイドエフェドリンを風邪の症状、ウイルス性の良性上咽頭炎を軽減のために使用することを控えるよう勧告
【仏ANSM 2023.10.22】
En cas de rhume, évitez les médicaments vasoconstricteurs par voie orale !
https://ansm.sante.fr/actualites/en-cas-de-rhume-evitez-les-medicaments-vasoconstricteurs-par-voie-orale
2024年08月18日 15:25 投稿