米FDAのOTCに関する新たな政策決定

トランプ政権の誕生でこの通りにスムーズにいくかどうかはわかりませんが、米FDAでは最近、OTCに関する新たな政策決定をしています。

1月にXで投稿しましたが、整理して記事としました。

この通りに進めば、近い将来、アプリやウェブサイトを通じて自己検査のプロセスを完了することにより、従来の処方箋医薬品が処方箋なしで買えるようになるということのようです。

【米FDA 2024.12.23】
FDA issues final rule to broaden types of nonprescription drugs available to consumers
https://www.fda.gov/drugs/drug-safety-and-availability/fda-issues-final-rule-broaden-types-nonprescription-drugs-available-consumers

【Wkyc 2025.01.09】
New FDA rule to boost OTC drug access, but self-screening required
https://www.wkyc.com/article/news/health/fda-expands-drug-access-self-screening-rule-acnu/95-fa7aaf26-3b4b-4348-b36a-e3bea2e51753

上記記事のよれば、この規則は1月27日から発効ずみで、重要な安全プロトコルを維持しながら、特定の医薬品をより入手しやすくすることでpublic health の改善を目指しているとのこと。

今後数か月から数年のうちに従来までは処方箋医薬品だったものが店頭に並ぶのを目にすることになるらしい。

一般向けに対しては、この政策決定については、次のように説明しています。

【米FDA 2024.12.23】
7 Things to Know About the Nonprescription Drug Product with an Additional Condition for Nonprescription Use Final Rule
https://www.fda.gov/drugs/news-events-human-drugs/7-things-know-about-nonprescription-drug-product-additional-condition-nonprescription-use-final-rule

この規則は、製薬会社が安全で効果的な処方箋なしで購入できる医薬品を開発し、販売するための選択肢を増やすことを目的としています。この規則により、医療専門家の処方箋なしで入手できる医薬品の種類が増える可能性があります。

ACNU(Additional Condition for Nonprescription Use)は、非処方用医薬品の追加条件のことです。

ACNUの付いた非処方箋薬の場合、この薬があなたにとって安全かどうかを確認するために、追加のステップを完了する必要があります。

このステップを完了せずに、この薬を服用しないでください。

追加ステップの例としては、その薬があなたに適しているかどうかを判断するためのアンケートがあります。この薬があなたに合わない場合は、他の選択肢について医師に相談する必要があります。

こちらが官報に掲載された規則

【Food and Drug Administration 2024.12.26】
Nonprescription Drug Product With an Additional Condition for Nonprescription Use
https://www.federalregister.gov/documents/2024/12/26/2024-30261/nonprescription-drug-product-with-an-additional-condition-for-nonprescription-use

米国食品医薬品局(FDA)は、非処方用医薬品の追加使用条件(ACNU)の要件を定める最終規則を発行する。

ACNU付き非処方せん医薬品とは、申請者が、法律でその薬を投与する資格を持つ医師の監督なしに、消費者が適切に自己選択するか、実際に適切に使用するか、またはその両方を確実にするための追加条件を実装すれば、処方箋なしで販売できる医薬品です。

この最終規則は、申請者が安全で効果的な処方箋なし医薬品を開発して販売するための選択肢を増やし、適切で安全で効果的な医薬品への消費者のアクセスを増やして、公衆衛生を改善することを目的としています。

規則の必要性

非処方箋医薬品は、多くの症状や病気の治療に重要です。

処方箋医薬品とは異なり、非処方箋医薬品は、法律で定められた使用目的に薬剤を投与する資格を持つ医師の監督なしに、消費者が安全かつ効果的に入手して使用することができます。

現在、非処方箋医薬品の大半は、軽度の症状を一時的に緩和したり、自然に治る症状や病気を治療したりすることを目的としています。

非処方箋医薬品は通常、薬局、スーパーマーケット、その他の小売店、およびオンライン小売業者から消費者が購入できます。

FDA は、現在は処方箋がないと入手できない、特定の慢性疾患や症状を治療する一部の医薬品など、消費者が追加の種類の非処方薬にアクセスできるようにする潜在的な利点を認識しています。

この規則により、安全かつ効果的な非処方箋医薬品を開発・販売するための申請者の選択肢を増やし、適切で安全かつ効果的な医薬品への消費者のアクセスしやすくなります。

ACNUを有する非処方せん医薬品が利用可能になることで、消費者の自己ケア能力や適切な医療へのアクセスが促進され、public health 上の利益がもたらされる可能性があります。

米国では、スタチンをこの新しい規則を用いて、処方箋なしで買えるようにするとの観測があります。

すでに学会先行研究も行われています。

米国はこれまで処方箋医薬品であったED治療薬もこの新しい規則を用いて、処方箋なしで買えるようになるという見方もあります。

一方、あるblogによればこういった指摘もあります。

【PHSL 2025.01.10】
FDA Published Final Additional Condition for Nonprescription Use Rule
https://phslrx.com/fda-published-final-additional-condition-for-nonprescription-use-rule/

これは、患者のエンパワーメントのための画期的な出来事である一方、薬剤師がそのキャリアを費やして守ってきた安全で責任ある薬物使用という堰(dam)を破ったものと見なすことができる。

メーカーは、非処方薬にACNUがあるという違いだけで、同じ製品を処方薬と非処方薬として販売できる可能性があるということである。

処方薬と非処方薬の境界線が曖昧になったことで、議論が巻き起こっている。

ここに、NCPA(National Community Pharmacists Association)を含む多くの薬剤師が提起している議論がある。

薬へのアクセスは患者にとって重要である。

もしメーカーが自社製品でACNU製品を選択すれば、一部の患者は確かにその恩恵を受けることができる。

しかし、NCPAは、ACNU製品は、患者に適切な薬物療法を提供することを第一の責務とする薬剤師を、患者のケアプロセスから切り離すものであり、その結果、患者を不必要な有害事象のリスクにさらすことになると主張する。

これはACNU製剤の潜在的な誤用に限定されません。

ACNU製剤を服用している患者は、ACNU製剤を使用していない患者と比較して、薬物相互作用に気づかないまま、より高いリスクにさらされる可能性がある。

今回の規則案に対して、NCPA(National Community Pharmacists Association)はこれまでに次のようなコメントをしています。

【NCPA 2022.11.28】
NCPA sends comments, concerns to FDA on ACNU proposed rule
https://ncpa.org/newsroom/qam/2022/11/28/ncpa-sends-comments-concerns-fda-acnu-proposed-rule

規則案によると、ACNUの下では、医薬品メーカーは患者が適切に薬剤を自己選択できることを保証しなければならない。

FDAは、この提案されている新クラスの医薬品の下では、患者はアンケートに答えたり、アセスメント付きのビデオを見たりして、薬についての理解を確認することができるとしている。

さらに、医薬品メーカーは、薬局内のキオスク、アプリ、オンラインを通じて顧客に情報を提供することもできる。

残念ながら、そのような薬剤が医療従事者の監督なしで投与されることを想定しているため、薬剤師は除外されている。

NCPAは、安全性、管理上の負担、支払いへの影響に対する懸念から、FDAが提案したACNUクラスの医薬品に反対した。

その代わりに、この規則の代わりに処方権限の拡大を支持した。

米国は、この政策決定により、スイッチにおけるBTCのいうカテゴリーの導入をなくなったと思います。

対面での権限拡大より、オンラインとかの優位性ばかりを言っている日本も、将来こうなる可能性があると考える必要があります。

日本の医療文化でこうなっていくかどうかは微妙ですが、テクノロジーがすすめば、医薬品入手に薬剤師が直接介在する機会が減っていくかもしれないと考えます。

だから今こそ、予防接種や軽度疾患への対応(零売もそう)など、地域薬局・薬剤師ができることを広げていかないと存在が不要ということになりかねません。

日本も今こそ、職能や権限拡大の声をあげないと危ういと思います。


2025年04月19日 15:10 投稿

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