フランスにおける医薬品償還率

これまでも財政審などで紹介されているフランスの医薬品ごとの医薬品償還率でが、どの薬剤が該当しているかのデータをこの間探していましたが、フランスの保険会社?のサイトに製品(成分)ごとにしらべられるサイトを発見、チェックしてみました

【Mutualib】
Quelle est la prise en charge de vos médicaments ?
https://mutualib.fr/simulateur/remboursement_medicament.php

この償還率の決定にあたっては、まず高等保健機構(HAS)の透明性委員会(CT)による医薬品の効能評価(SMR)と画期性評価(ASMR)を受けることで決められます

このSMRは、有効性、副作用、対象とする疾病の重篤度、代替治療の有無、代替治療と比較した場合のメリット、公衆衛生上の利益等の観点から、顕著または顕著(majeure)、大(majeure ou important)、中(modéré)、小(faible)、不十分(insuffisant)の5段階で評価されます。

そしてこの評価を基に、医療保険金庫全国連合会(UNCAM)によって決められるのが医薬品の償還率で、100%(代替不可能で特に高価な薬)、65%(SMRが「顕著または大」の薬剤)、30%(SMRが「中」の薬剤)、15%(SMR が「小」の薬剤)の4段階に分かれ、不十分のものは償還率0で、医療保険の対象外となります。

以下上記サイトをチェックした成分ごとの償還率です

重要度
償還率
薬効・成分名/商品名
 100% 代替薬がないかまたは高額で長期の使用が必要な医薬品
(抗がん剤、抗HIV薬、成長ホルモン剤、血液製剤、緊急避妊薬など)
重要
(白ラベル)

償還率 65%

 一般的な治療薬
(降圧剤、抗生剤など)
アセトアミノフェン
イブプロフェン(内服)
ナプロキセン
ボルタレン(内服)
アシクロビル(内服、点滴)
アスピリン腸溶錠
ロコイドクリーム
中等度
(青ラベル)

償還率30%

デキストロメトルファン(液剤)
スルピリド(少用量)
メトクロプラミド
ロペラミド
アノーロエリプタ
オゼンピック
セチリジン
ロラタジン
フェキソフェナジン
ナゾネックス
タムスロシン
シロドシン
ソリフェナシン
ベシケア
デュタステリド
ジクロフェナクゲル
ボルタレン坐薬
タミフル
アダバレン(外用)
軽度
(オレンジラベル)

償還率15%

ゾピクロン
ゾルピデム
シメチジン
ファモチジン
ドンペリドン
オングリザ
デュタステリド/タムスロシン
保険償還対象外

償還率0%

 

メマンチン
ガランタミン
リバスチグミン
ドネペジル
オルメテック
ヤーズ
ボンビバ
デトルシトール
カルボシステイン
ビソルボン
ペントキシベリン
ポララミン
セレスタミン
ノルフロキサシン
アシクロビルクリーム
トコフェロール
ビサコジル
アンチスタックス
コンベルミン
イチョウ
ミノキシジル
オルリスタット
セチルピリジニウム(トローチ)

償還率65%および30%の医薬品については、自己負担額は補足的医療保険による保障の対象。また、償還率15%の医薬品および償還対象外の医薬品については、補足的医療保険の内容次第とのこと。

また、2008年に創設された「保険免責」と呼ばれる定額負担により、外来医薬品の購入の際には、1回0.5ユーロが自己負担となるとのこと。ただし、1日2ユーロ、年間50ユーロが上限で、18歳未満の子や妊娠6か月以降産後12日までの妊産婦などについては自己負担は免除になるとのこと。

こういう仕組みで、仏では抗がん剤や高価薬などの自己負担額をゼロにできているのはなぜかと改めて思いました。

一方で、日常生活への影響が少ない領域の薬については薬剤負担率が高いということになります。

また、費用対効果が乏しい薬、生活習慣病に関わるもの、よくある病気で用いられる薬については多くの自己負担や全額自己負担を求めています。

意外だったのが、アセトアミノフェンが医療上必要性があれば、他の薬剤と同じ自己負担率だったこと。やはり、最後は医師と国民の医療保険に対しての意識ということになってしまうのでしょうか?

日本のOTC類似薬の保険外しは一筋縄にはいかないと思います。そして、医療保険をどう使うかという国民のコンセンサスが必要だと思います。

やはり、選定療養費で負担の上乗せと、零売の制度化が現実的ではないか思います。

参考
薬局・薬剤師に求められる役割
(健保連・健保連海外医療保障 No.131 2023.3)
https://knp-digitalbook.libra.jpn.com/#/content/58

医療・医薬品等の医学的・経済的評価に関する調査研究
- フランスにおける取組を中心として-(健保連 2014)
https://www.kenporen.com/include/outline/pdf/chosa26_06_kaigai.pdf

関連情報:TOPICS
  2011.06.03 長期高額医療の患者負担をどう軽減するか(リンクは切れています)
  202504.19 零売をめぐるこれまでの経緯とこれからの展望と私見


2025年04月20日 14:58 投稿

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