海外における緊急避妊薬の規制状況と日本でも求められる施策

最近全文が読めるようになった、海外における緊急避妊薬の実態を諸外国の規制状況を調査し、日本における緊急避妊のOTC化を実現するための施策を提案した論文です(論文は英語)

【レギュラトリーサイエンス学会誌 14(1) p65-80,2024】
Comparison of Emergency Contraceptive Pill Regulations in Other Highly Developed Countries and Policy Recommendations for the Deregulation in Japan
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rsmp/14/1/14_65/_article/-char/ja

以下、上記から引用してまとめました。

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カナダ
2000年に初めて承認、同年にブリティッシュ コロンビア州で BTC 医薬品として販売され、その後他の州でも販売された。2005年には、カナダ全土で年齢制限のない BTC 医薬品として分類。全ての州で補助金が支給。

フランス
1999年から全年齢向けのBTC薬として、利用可能になっている。18歳未満の女性はすべて匿名で無料で入手でき、親の同意は不要。さらに、学校や大学の看護師からも入手できる。フランスのガイドラインでは、ECPの事前提供が奨励されており、ECPのオンライン販売も可能。 2023年1月以降、健康保険証を提示すれば18歳以上の女性にも無料に。

ドイツ
OTCへの切り替えについては、2003年に時点で処方薬に関する諮問委員会が勧告をしていたが、2014年の欧州医薬品庁(EMA)による、ウリプリスタル酢酸塩(UPA)の OTC に切り替えの勧告に従い、ノレボノルゲストレルと共に、2015年にBTC 薬として利用可能に。

公式の年齢制限はないものの、ドイツ連邦薬剤師会(BAK)による ECP 薬局調剤ガイドラインに従い、14歳未満の女性への調剤を控えるよう勧められている。

イタリア
ドイツと同様に、EMAの切り替え勧告後、2015年にBTC医薬品として入手可能に。

英国
1998年に緊急避妊薬の規制緩和の議論が始まったが、保健大臣は異議申し立てをすべて却下。しかし、10代の妊娠率が高いいくつかの地域では、1999~2000年に試験的な制度が開始され、薬剤師は処方箋なしで緊急避妊薬が調剤できるようになった。

2000年OTCステータスの申請が正式に提出され、2001年1月から16歳以上の女性に許可された。2015年からは年齢制限なしで入手可能に。また、若者サービスや学校の看護師からも入手でき、オンライン薬局を通じてオンラインでの販売も許可されている。

スコットランドとウェールズの薬局では、すべてのECPが無料となっている。

米国
1999年にFDAにより処方箋が必要な医薬品として承認。2006年に18歳以上の女性を対象としたBTC薬、2013年には全年齢の女性を対象としたOTCとして販売開始。

スイス
2002年からBTC薬としてスイスの薬局で入手可能。スイスの薬局で ECP を入手するには、カウンターで申請し、スイス薬剤師協会 (pharmaSuisse)が作成したチェックリストを使用して薬剤師との秘密の面談(confidential interview)を行う必要がある。この薬は、それを希望する女性にのみ調剤され、必須ではないが、薬局で直接服用することが推奨されているが、年齢制限はない。オンライン販売は医師の処方箋がある場合のみ許可されている。

ノルウェー
1990 年代に初めて導入され、2001年から OTC医薬品として薬局で販売。2009年からは、薬局以外のスーパーマーケットなどの店舗でも販売が可能。薬局での購入に年齢制限はないが、薬局以外での販売は 18 歳以上の女性に限られている。ただし、これは薬局以外で販売される医薬品の一般的なルールであり、緊急避妊薬に限ったことではない。オンライン販売は許可されている。ノルウェー保健局の家族計画ガイドラインは、一般の人々が理解しやすいように書かれており、緊急避妊薬をいつ服用するか、どこで入手できるかに関する情報も含まれている。

アイスランド
2001 年から薬局で OTC 医薬品として販売されている。BTC ステータスを持ち、薬剤師が直接販売している。薬剤師は通常、緊急避妊薬を必要とする女性と直接話し合いますが、男性パートナーにも販売されることがある。

研究者らは、レボノルゲストレル緊急避妊薬を16歳以上の女性を対象に,薬剤師による対面販売を必要とする要指導医薬品に分類することを提案、また、この分類を維持できるような医薬品規制の変更も提案しています。

また、緊急避妊薬の価格の一部を医療保険から補填できるような政策の実施の他、一般市民や薬剤師の性教育、薬局施設の更新、近隣の産婦人科クリニックとの連携などに関する追加施策を提言しています。

厚労省でも同様の調査を行っています。

他にもこういった調査報告があります

なお海外では、日本の試験販売についてはこのように報じられました。


2025年04月20日 15:54 投稿

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