PSA(Pharmaceutical Society of Australia)は、このほど2030年に向けて、生活者や患者の地域薬局や薬剤師のニーズを探るべく調査を行い、報告書を公表した。(2024.12.18に投稿したものを記事化しました)
PHARMACISTS IN 2030:
STRENGTHENINGCONSUMER VOICES(2024.12)
https://www.psa.org.au/wp-content/uploads/2024/12/6165-Consumer-insights-project-v3.pdf
この調査は、PSAの委託を受け、現在の薬局業務、業務範囲、薬剤師ケアの将来に関する消費者のニ-ズを把握するため、2024年3月下旬から7月中旬にかけてインタビュー形式で行われたもので、慢性疾患を持つ人々、高齢者団体、精神疾患の経験を持つ人々、文化的・言語的に多様な(CALD)背景を持つ消費者、女性団体、保護者団体、若者、介護者、LGBTIQ+コミュニティなど、14の消費者フォーカスグループから幅広い見識を集められた。
各グループには、オーストラリアの地方、農村、遠隔地に住む人々や先住民族も含まれていて、予定されたグループの時間に間に合わなかった消費者1名とは、1対1のインタビューが行われた。
各フォーカス・グループへのインタビューはオンラインで90分間行われ、平均6~8人が参加している。
レポートには以下のようなことが書かれていた。
消費者は業務範囲の拡大を支持
消費者は、薬剤師が医療分野で果たすことのできる、そして果たすべき役割の幅が広がっていることを認識している。
これには、一部の医薬品を処方する権限や、多分野にわたる医療チームへの参加が含まれる。
処方について
糖尿病、血圧、喘息、尿路感染症、皮膚疾患など、一般的で複雑でない症状に対して薬剤師が薬を処方できないことに、消費者は不満を抱いている。
一部の地域では、処方に関する試験的な取り組みが行われており、女性参加者の中には、ホルモン避妊薬や尿路感染症に対する処方を歓迎する意見もあった。
消費者は、以下のような活動を含む、医薬品の処方範囲の拡大を全般的に支持していた:
- 慢性疾患に対する処方箋の更新(例:継続的な調剤の継続)
- 急性の一般的な病気に対する処方
- 安全性に問題があると判断された場合の医薬品の用量調整や代替
- 決められた診療分野での共同処方
このフィードバックは、消費者健康フォーラムが実施した消費者調査と一致している。
共同チーム
薬剤師は、医療を提供するためにもっと活用されるべき貴重な資源であると考えられている。
消費者は、薬剤師が関与する多分野にわたるチームベースのケアに好意的である。
これには、地域薬局内での薬剤師、看護師、その他のチームだけでなく、例えばGP診療所や高齢者住宅など、地域薬局以外の場所で働く薬剤師も含まれる。
消費者は、薬剤師の役割の拡大において、透明性と専門家としての説明責任が確保されることを求めている。
業務範囲の拡大に対するサポートは、トレーニングと能力に関する透明性を前提としており、ケアチーム内の他のスタッフとの連携が標準となることを期待されている。
一般的な急性疾患に加えて、慢性疾患の管理、予防ケアやウェルビーイングの提供における薬剤師の役割の拡大を消費者は支持している。
薬剤師が様々な実践の場で働くことによって、このようなことが起こることが支持されている。
これ以外にも
- 薬剤師との対話の時間確保
- 相談できるプライバシースペースの確保
などの提言がまとめられている
PSAはプレスリリースで、消費者は、薬剤師に対する高い信頼性を再確認し、処方や集学的チームへの参加など、薬剤師の業務範囲を拡大することへの幅広い支持が表明されたとした。
【PSA 2024.12.18】
Consumer voices strengthen PSA’s roadmap to 2030
https://www.psa.org.au/consumer-voices-strengthen-psas-roadmap-to-2030/
報告書の一部として、PSAではオーストラリアの薬剤師が患者により良いサービスを提供できるよう、一連の取り組みを行っている。
PSAでは以下の約束をしたい
- PSA の政策と提唱、実践ガイドラインやその他の実践支援資料の開発など、私たちの活動に関する情報提供と協力を行う消費者ネットワークを維持する。
- PSAの全国会議を含む薬剤師教育に消費者の実体験を活用する。
- プロジェクトやコンサルティングへの参加に対して消費者に報酬を支払う。
PSA会長は、「Pharmacists in 2030」における消費者との協議は、医療分野の政策がいかに患者の意見によって強化されるかを示す力強い証言であるとするとともに、患者と消費者は薬剤師として私たちが行うすべてのことの中心であり、彼らに奉仕することを目的としたシステムの政策が策定される際には、彼らの意見を反映させるべきだとした。
またPSAは、”Pharmacists in 2030 project”を通じて、薬剤師と消費者のフォーカスグループの両方に耳を傾け、その結果、将来のためのより強力なビジョンが生まれた。
PSAは、こうした消費者の洞察を発表することで、私たちが行うすべてのことにおいて消費者の声を増幅するという数多くの約束も果たしている。
業務基準やガイドライン、教育や政策に至るまで、PSAが行う活動において、消費者は今後も重要な役割を担っていく。
これまで場当たり的だったパートナーシップは、今では私たちの通常の業務となる。
消費者や消費者擁護団体と直接協力することで、私たちがサービスを提供するコミュニティは薬剤師によるケアの提供方法についてより大きな発言権を持ち、すべてのオーストラリア国民のケアを改善することを意味する。
なお、この報告書は2024年8月に公表された”Pharmacists in 2030 vision”の補足資料でもある
日本もこういう枠組みでビジョンを策定して欲しい
PSAは、連邦保健相とともに、豪州の薬局実務の未来に向けた基本ビジョンである「Pharmacists in 2030」を発表した
【PSA 2024.08.02】
Vision for Pharmacists in 2030 launched at PSA24https://t.co/YFcK8fNgcfPharmacists in…
— 小嶋 慎二@community pharmacist (@kojima_aponet) August 2, 2024
2025年04月23日 14:50 投稿