入院患者の21%に薬剤性有害事象が発生(JADE Study)

 28~29日の各紙が取上げているので既にご存じと思いますが、京都大医学部の研究グループによる入院患者における薬による健康被害(Medication Errors:薬剤性有害事象)の発生状況についてまとめた論文が、Journal of General Internal Medicine 誌のOnline First に掲載されています。

Incidence of adverse drug events and medication errors in Japan: the JADE study.
Journal of General Internal Medicine、Online First 2010.9.25)
http://www.springerlink.com/content/k034463h4n7038v2/abstract/
 (古いプラウザだとうまく表示されないかもしれません)

 上記では、アブストラクトまでしか見れませんでしたが、京大のウェブサイトに論文の詳しい内容が掲載されています。

100人の入院患者あたり29件の薬による健康被害(薬剤性有害事象)が発生していることを多施設研究で検証しました
(京都大 2010年9月28日)
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2010/100928_1.htm

 各紙の記事を合わせてまとめると、この研究は聖路加国際病院(東京)、洛和会音羽病院(京都)、麻生飯塚病院(福岡)の3病院からランダムに選択した15診療科と3つの集中治療病棟に入院していた患者3459人(2004年1月~6月)のカルテや血液データなどを詳しく調査したもので、726人(21%)の患者に1010件の薬剤性有害事象が、また433人(13%)に514件の薬剤関連エラーが発生していたというものです。

 また、1010件の薬剤性有害事象のうち、1.6%(14人)が死亡に関連(鎮静剤による血圧の低下や、鎮痛剤による潰瘍出血など)、4.9%(46人)はアナフィラキシーショックなどの致死的なもの(命に関わる健康被害)、33%(272人)は消化管出血や意識レベルの低下などの重症なものだったそうです。

 一方、有害事象の原因の多くは薬剤による副作用だったものの、処方の指示を間違えたり、対応が遅れたりなど、人為的な原因が関係した事例が14%(141件)あり、他の診療科からの転棟、投与薬剤が多い(4種類以上)こと、外科病棟への入院時、担当医の経験が3年未満などの事例で起きやすいこともわかったそうです。

 これをもとに発生率を計算すると、薬剤性有害事象は100入院あたり29件、1000患者日あたり17件発生するということになるそうです。

 こういった研究は既に海外で行われており、今回の日本での調査結果も同様の結果となっているとのことですが、研究者らは不必要な薬剤を減らすとともに、他国より長い入院期間の短縮などがリスクを下げることにつながるとしています。

関連情報:TOPICS 2006.07.21 薬物治療での過誤を防ぐための方策(米国レポート)

参考:
産経新聞9月28日
 http://sankei.jp.msn.com/science/science/100928/scn1009282220001-n1.htm
読売新聞9月29日
 http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=31424


2010年09月29日 23:48 投稿

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