3日のJAMA 誌に、軽度~中等度の認知症(Alzheimer Disease)にDHAサプリメントを使用しても、進行の予防に有用でないとする論文が発表されています。
Docosahexaenoic Acid Supplementation and Cognitive Decline in Alzheimer Disease
(JAMA. 2010;304(17):1903-1911.)
http://jama.ama-assn.org/cgi/content/full/304/17/1903
この研究は米国内51施設で行われたランダム化比較試験で、軽度~中等度の認知症患者402人(平均76歳)を、DHA2g/日投与群(238人)とプラセボ群(164人)の2群に分けて18ヶ月間追跡調査したもので、結果はDHAを投与しても、認知症の認知機能の低下を遅らせるなどの進行予防の度合い( Alzheimer’s Disease Assessment Scale という評価スケールとMRIによる脳萎縮の状況で比較)は変わらなかったという結果が得られたのことです。
論文の内容は、詳しくはまとめられません(論文と参考記事参考を)が、全く有用無しというわけではなく、サブ解析の結果、APOE遺伝子変異?(APOE-4 gene variant)がない認知症のリスクの高い人にはDHAによる保護作用があったようです。
ただ、今回の研究では期間が18ヶ月と短いこと、追跡調査の途中で24%の人がドロップアウトしたことから、DHAが認知症の発症の予防そのものに有用であるかどうかの結論は出なかったようです。
今後はもう少し、若い年齢を対象とした長期間におけるRCTが行われないと、有用性の有無についての結論は出ないものと思われます。
関連情報:TOPICS
2009.12.30 イチョウ葉エキスに認知機能の低下を遅らせる効果は見出せず
参考:
No Benefit for DHA in Alzheimer’s
(Medpage TODAY 2010.11.3)
http://www.medpagetoday.com/Geriatrics/AlzheimersDisease/23105
Fish Oil Supplements May Not Slow Alzheimer’s
(Health DAY 2010.11.2)
http://consumer.healthday.com/Article.asp?AID=645310
2010年11月04日 01:02 投稿
坪野氏が論文紹介記事をアップしています。
アルツハイマー病患者へのDHA投与で、認知機能低下への効果なし。
(疫学批評 11月8日)
http://blog.livedoor.jp/ytsubono/archives/51876255.html
“APOE-4 gene variant”というのは、「アポリポタンパクEε4の対立遺伝子がない」と訳すそうです。