タミフルと肝障害(WHOレポート)

 今年もインフルエンザシーズンが近づいていますが、10月10日に発表された“WHO Pharmaceuticals Newsletter No.3, 2008”で、オセルタミビル(タミフル)による肝障害・皮膚障害についてのレビューが掲載されています。

Review of Oseltamivir Reports in Vigibase is reassuring but vigilance for hepatic and skin disorders recommended
〜Report from the WHO Collaborating Centre for International Drug Monitoring, Sweden.
 (WHO Pharmaceuticals Newsletter No.3, 2008)
  http://www.who.int/medicines/publications/newsletter/2008news3.pdf

日本語訳が、医薬品安全性情報Vol.6 No.25に掲載されています
  http://www.nihs.go.jp/dig/sireport/weekly6/25081211.pdf

 このレビューは、2007年のWHO Global Individual Case Safety Report Database(Vigibase)のデータをウプサラモニタリングセンターがまとめたもので、下記のようなことが明らかになっています。(誤訳がある場合がありますので、原文をご確認下さい)

  • Vigibaseのオセルタミビルに関する770症例をレビューした
  • うち、肝不全・肝細胞壊死を含む肝障害の重複しない症例が46例あった
  • 症例の男女比はほぼ同じで、年齢は生後12ヶ月の2例を除いて、18歳〜88歳だった
  • 25症例で、服用期間と発症までの日数について明らかになっている
  • 17症例で、服用期間は1〜5日間で、もっとも多いもので8〜19日だった
  • 16症例で、服用終了後1週間後に肝臓症状が出現した
  • 5症例の肝細胞障害・肝不全の報告があったが、服用期間が不明な場合やで他剤による可能性があり、最終的には肝不全2症例(うち1症例は腎不全があり、常用最大量が投与)、重篤な肝細胞障害1例がオセルタミビルとの関連性が疑われる
  • 重篤な肝障害の症状がインフルエンザとの症状と類似していることや、肝障害を起こす可能性があるアセトアミノフェンや抗生剤が投与されている場合があり、(肝障害の症例の多くは)オセルタミビルが原因であるかどうかの鑑別は難しい

 今回のレビューを受けて、下記のような勧告を行っています。

  • 処方の際に、肝障害や重篤な皮膚障害の可能性について他の副作用と同様に患者に警告する
  • 回復が遅い場合は肝機能のチェックを行う(インフルエンザ症状の再燃とオセルタミビルが原因の肝障害との鑑別のため)
  • 重篤な皮膚障害が発現したら投与を中止する

  日本の添付文書では重篤な副作用の欄にこれらの副作用が記載されていますが、調剤の際に薬情にこれらの副作用を明記するとともに、患者さんへの注意喚起が必要のようです。 

12月12日 リンク追加


2008年10月20日 01:25 投稿

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