プラセボの使用実態(米国研究)

 米国保健研究機構(National Institutes of Health)らの研究グループは、医療の現場でプラセボがどのように使われているかの実態調査の結果をまとめ、論文が23日、BMJ 誌のオンライン版に掲載されました。

Prescribing “placebo treatments”: results of national survey of US internists and rheumatologists(BMJ 2008;337:a1938)
  http://www.bmj.com/cgi/content/full/337/oct23_2/a1938

 この調査は、米国の内科医・リウマチ専門医(practising internists and rheumatologists)1200人を対象に行われたメールによるアンケート調査(回答679人、回答率57%)で、糖尿病ではない線維筋痛(fibromyalgia、はっきりとした検査以上を呈さない不定な関節痛・筋肉痛)を訴える患者に対して、過去1年間にプラセボ(いわゆる薬効成分が含まれていない偽薬だけではなく、他の薬効を持つものも含む)を処方したことがあるか、またプラセボを処方することに対しての認識などについて聞いています。

 その結果、370人(55%)の医師がプラセボを処方したことがあると答え、また処方することについても、62%の医師が倫理的に許されると答えたそうです。

 また、実際に処方された薬の内訳は、OTC鎮痛剤(43%、具体的な記載はないが少用量のアスピリン?)、ビタミン剤(38%)、鎮静剤(Sedatives 13%)、抗生剤(13%)などとなっていて、本当の意味でのプラセボ(Sugar pills)は2%にすぎなかったそうです。とにかく、患者が症状を訴えているので「もしかしたら効くかもしれないので何か薬でも出しておこうか」という認識なのでしょうか。(処方せんを受けた薬局はどのような服薬指導をおこなっているかも興味あるところです)

 メールによる調査であり、実態の全てを反映したものではないでしょうが、驚くべき結果です。米国医師会の関係者もプラセボの処方は認めておらず、またこのような実態はないと否定していますが、論文によれば同様の報告が複数あるとしていて、先進各国ではプラセボの処方が広く行われていると指摘しています。

 研究者らは、特に鎮静剤や抗生剤がプラセボとして処方されるリスクを指摘するとともに、インフォームドコンセントが求められる今日において、プラセボ使用についての倫理的な問題を考えるべきだとしています。

参考:50% of Doctors Prescribe Placebos(WebMED 2008.10.23)
 http://www.webmd.com/news/20081023/50percent-of-doctors-give-fake-prescriptions
Survey: Half of US doctors use placebo treatments(AP 2008.10.24)
 http://ap.google.com/article/ALeqM5jFsqiXbZ5OkHqAGzhhsFXOP8B58AD940G7GG0


2008年10月24日 12:25 投稿

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