ネット販売がなくなると困るという薬局の声は本当に一つもないのか?

 11月26日、民主党の「適正な医薬品販売を検討する議員懇談会」は、日薬や厚労省、規制改革会議などネット販売に関係する人を招いてヒアリングを行っています。

民主党議員懇、ネット販売でヒアリング(薬事日報HEADLINE NEWS 12月1日)
    http://www.yakuji.co.jp/entry8621.html

 あくまでも記事なので、実際どのように発言したかはわかりませんが、下記のやりとりがどうしても気になります。

議員:今回のネット販売規制で地方の薬局が困るという声を聞いたが、どうか
日薬:会員薬局からはそのような意見は1件も来ていない

 しかし、共立薬科大学(現:慶応大学薬学部)の社会薬学講座の研究グループが2005年11月に行った調査によれば、HPを開設している薬局・薬店等のサイト3468件のうち、156のサイトで医薬品の販売を行っているとした結果が示されています。

 このうちのいくつかは日薬会員の薬局・薬店であることは間違いなく、一部の薬局がインターネットショッピングモール事業者と連名でネット販売を求める要望書を出しているという事実を考えれば、規制改革会議が8月14日に行ったヒアリング(規制改革会議 医療タスクフォース 議事録:PDF)に続いて、今回もまた「地方の薬局からもネット販売がなくなると困るという意見は一つもない」と断言して果たしてよいのでしょうか? 

インターネット「薬局」の24%が1類薬扱う‐共立薬大が実情を調査
  (薬事日報 HEADLINE NEWS 2006年4月19日)
  http://www.yakuji.co.jp/entry43.html

The sale of over-the-counter (OTC) drugs over the internet in Japan
  (共立薬科大学雑誌. Vol.3, (2007. 10) ,p.19- 23 )
  http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=jkup2007_3_019

医薬品のネット販売制限に対して100社連名で厚生労働大臣宛の意見書を提出  
  (楽天株式会社プレスリリース8月7日)
  http://www.rakuten.co.jp/info/release/2008/0807.html

 日薬はおそらく、「代議員会ではそういう声が出ていない」として、こういったことを言ったのでしょうが、現状をきちんと把握せず、また会員の意見も十分把握しないで、こういったことを平気で発言し続けることに憤りすら覚えます。

 これでは、いくら薬剤師会がネット販売に反対を唱えても、ネット販売に賛成している人たちに対して説得力はありません。ネット販売を行っている会員を除名するというのなら話は別ですが、このままではいつか世間から厳しい批判にさらされてしまうのではないかという危惧を感じるとともに、日薬への求心力をますます失いかねないことを懸念します。

関連記事:TOPICS
  2008.11.25 日薬、医薬品のネット販売についての見解を発表
  2008.10.09 ネット販売、規制改革会議の疑問にどう答えるか?


2008年12月02日 13:28 投稿

コメントが2つあります

  1. 永井達夫 ながい たつお

     知らない人は幸せです。

     ネット販売の議論を『対面販売』に結びつけたため、厚生労働省の頭の良い官僚の落とし穴に、多くの薬局が巻き込まれていることに気が付いている開局薬剤師はごく少数派です。

     カタログ販売、ネット販売が『郵便等販売』に替ったことの意味を見落としているのです。

     日本薬剤師会も『郵便等販売』になれば、普通の店舗のお客様が、引越しや病気のため、来店出来ずに、電話で注文し、送付して貰った場合、違法となる可能性が高いことに気が付いています。

     論理的に、対面でないことは明らかだからです。しかし、厚労省に確認することは『藪蛇』になると考え、そっと触れないでおく心算のようです。

     しかし、このことは、何れ厚労省が薬剤師会を締め付ける道具に使うでしょう。
     ネット、ネットと言っている間に、もっと大きなシバリが掛けられて身動きが出来なくなるのに、知らん顔をしてやり過ごそうとしている付けは、やがて大きな代償になることでしょう。

     薬剤師会がこの件に気付いているかどうかは、日本薬剤師会の本部に確認すればスグに分かりますから。・・・

     細則が出てからでは手遅れです。官僚は上手な言い訳をしながら、国民を騙すのが仕事ですから。

  2. アポネット 小嶋

    >永井様

    私も思うのですが、漢方の電話相談を受けて、証にあった漢方薬を発送するということを、この『郵便等販売』に含めるべきかどうかは疑問があります。

    漢方薬をHPに並べて自分で自由に選ばせて購入できる仕組みであるのなら、やはり今回の法の網にかける必要があるとは思いますが、いわゆる漢方専門薬局が電話で購入者の症状等を聞いて相談販売するのは、「ネット販売」とは異なるものではないかと思うからです。

    また、同じ漢方薬でも一般用医薬品のものもあれば、薬局製剤(薬局医薬品)という二つのカテゴリーが出てきます。省令案ではいずれも『郵便等の販売』は不可ですが、仮に一般用医薬品(第ニ類)の販売が可能となった場合、同じ内容なのに、薬局製剤は販売できないのかという矛盾も生じます。

    また、ネット販売といっても、インターネットショッピングモール事業者を介さずに個々の薬局薬店が開設したサイトでの販売もあるわけで、日薬は結果を恐れずにまずそういった実態をきちんと把握することも必要ではないでしょうか。

    そして、単に「第一類と第二類はネット販売反対」というのではなく、インターネットショッピングモール事業者が唱える利便性に対して、どのようにすれば安全にネットで販売が可能であるか提案することも必要ではないかと思います。(個人的には薬剤師会による認証性の導入が必要だと思います。無理だとは思いますが)

    やはり、店舗・配置による販売以外を全て『郵便等の販売』にしてしまったことに大きな問題があったと思います。このままだと、来年6月には拡大解釈による違反の摘発や、法を無視した販売の継続などといった混乱が生じることは目に見えています。