日本は高コレステロールへの対応が不十分?(WHO)

 WHOのBulletin of the World Health Organization 誌に、高コレステロール血症への国別の対応を比較したレポートが掲載されています。

High total serum cholesterol, medication coverage and therapeutic control: an analysis of national health examination survey data from eight countries
Bulletin of the World Health Organization 2011;89:92-101.)
http://www.who.int/bulletin/volumes/89/2/10-079947/en/index.html

 このレポートは、ドイツ(1998)、日本(2000)、スコットランド(2003)、タイ(2004)、アメリカ合衆国(2005~2006)、イングランド(2006)、メキシコ(2006)、ヨルダン(2007)での検診のデータ(?)を元に、検診でどのくらいの割合で高コレステロール血症(240以上)がいるかどうか、そのうち治療を受けている人(処方薬・OTCでの購入は問わない=英国)がどのくらいの割合がいるかなどを数値化して比較したものです。

 日本のデータを見ると、血清コレステロールが高い人で診断がついている人が約8割に達しているにもかかわらず、治療を受けてコントロールがされているのは全体の約2割で、全体の53%の人が未治療ということになっています。言い換えれば、日本は血液データのチェックを受けて診断が確定している人が多い一方、海外ほど積極的な薬物療法が行われていないということになるのでしょうか?(一方、英国や米国で治療を受けている人の割合が高い。安いジェネリックやOTCがあるから?)

 この研究は、先進国だけではなく新興国などでもコレステロールが高い人が少なくなく(高コレステロール血症は裕福な国の病気ではない)、スタチンによる治療の重要性を示したかったようですが、心臓血管病のリスクは人種によっても異なるといわれていますし、高コレステロール血症へのスタチンの投与についても現在論争が続いていることを考えると、個人的にはWHOらしからぬレポートのように思えてなりません。

 日本のデータも2000年と古いため、現状をそのまま反映しているとは思えませんが、このデータはメーカーの宣伝や研究者に利用されるんでしょうね。(誤解釈がありましたら、ご指摘ください。)

関連情報:TOPICS
  2011.01.20 心臓病の既往歴がない人にスタチンは必要か(コクランレビュー)

参考:World ‘failing to treat high cholesterol’(BBC NEWS 2011.2.1)
    http://www.bbc.co.uk/news/health-12333774


2011年02月02日 11:59 投稿

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