起こるべきして起きていたOTCネット販売による健康被害

 薬害オンブズパースン会議は17日、インターネットによる一般用医薬品の販売で不適切販売により健康被害を生じた事例を公表するとともに、地方自治体に対し、不適切販売事例や指導事例等の報告や販売実態の調査を求める要望書を提出しています。

一般用医薬品のインターネットによる不適切販売事例等の調査を求める要望書提出
 (薬害オンブズパースン会議 12月17日)
  http://www.yakugai.gr.jp/topics/topic.php?id=628

 同会議が公表した事例というのは、2006年に当時19歳だった埼玉県の少年に、自殺目的に乱用される可能性があるとして、1人1箱に限ることや18歳未満への販売禁止などが求められていた鎮静薬(おそらくブロムワレリル尿素配合のもの、指定第二類)を、楽天市場に出店していた福岡市の薬局が24箱(1箱12錠入り)を一度に大量の販売送付し、少年は他2店店頭からの購入分6箱をあわせて服用して自殺を図ったというもので、少年は一命は取り留めたものの、両足関節機能全廃の後遺障害により身体障害者等級2級の認定を受けているということです。

 2chなどの掲示板などの掲示板を覗けば、それこそ気晴らしや自殺目的など、OTCを治療や症状軽減の目的以外への使用を誘う書き込みが数多く存在します。少年はこういった情報を基にこの鎮静薬を大量服用したのでしょう。

 OTCの販売にあたっては、このような悪用や濫用があるということを常に留意する必要があるのですが、今回のリスク分類では、通常に使われた場合によるケースしか配慮されていないのが現状です。 そして、ネット販売では相手がわからないということも相まって、こういった危険性はさらに増します。

 メタンフェタミンの密造の際の原料として使われ、各国で厳しい販売規制が行われているプソイドエフェドリンや、米国や中国で青少年の濫用が問題となっているデキストロメトルファンなどは本来であれば、日本では店舗での販売も含め厳しい規制が必要なのですが、日本ではほとんど問題視されていないのは大いに問題です。

 ネット販売業者の中には、こういったことを知りつつも利益目的でブロン錠などを販売するサイトが多く存在します。ネット販売を認めるのであれば、こういった業者が排除されるよう、認証機関の設置などの監視・指導する仕組みが必要です。

 同会議では、楽天に対し、「対面販売でないことを起因とする健康被害の実例は一件も確認されていません」と記載して、インターネット上で、一般用医薬品のインターネット販売禁止に反対する署名を集めているが、本件のような実例が存在することからすると、同社において、医薬品販売サイトの問題事例の調査・集積が十分に行われているのか、はなはだ疑問である。少なくとも本件事例について報告を受けながら上記のような手法で署名を集めていたとすれば、医薬品を扱う者としての基本的姿勢として問題があると言わざるを得ないと厳しく指摘しています。

 楽天のコメントが注目されます。

関連情報:TOPICS
 2008.10.09 指定第二類医薬品の指定は再検討すべき(省令案パブリックコメント)
 2007.05.09 一般用医薬品リスク分類のパブコメ結果が公表

参考:福岡の薬局、ネットで鎮静剤販売 服用の少年が自殺未遂
    (47NEWS 12月17日 共同通信配信)
  http://www.47news.jp/CN/200812/CN2008121701000867.html


2008年12月17日 23:19 投稿

コメントが1つあります

  1. アポネット 小嶋

    楽天は26日、薬害オンブズパースン会議から12月22日に出された質問書に対する回答を行っています。

    薬害被害者団体等からの質問等に対して回答
    (楽天株式会社12月26日)
       http://www.rakuten.co.jp/info/release/2008/1226a.html