18日、カナダの当局 Health Canada は、6歳未満の子どもにはOTC風邪薬や咳止めを使用しないよう勧告を行うともに、OTCメーカーに対して2009年秋までに、ラベルに「6歳未満の子どもは使用しないで下さい」などの文言を加えることを求めました。
Health Canada Releases Decision on the Labelling of Cough and Cold Products for Children(Health Canada2008.12.18)
http://www.hc-sc.gc.ca/ahc-asc/media/advisories-avis/_2008/2008_184-eng.php
Notice: To Market Authorization Holders: Health Canada’s Decision on Labelling of Certain Paediatric (0 to under 12 years) Nonprescription Cough and Cold Products in Canada(Health Canada2008.12.18)
http://www.hc-sc.gc.ca/dhp-mps/prodpharma/activit/announce-annonce/
notice_avis_decision_pedlscc_pednecr-eng.php
日本語概要が、 医薬品安全性情報Vol.7 No.3に掲載されています。http://www.nihs.go.jp/dig/sireport/weekly7/03090205.pdf
Health Canadaでは、2007年10月に2歳未満の子どもに、OTC風邪薬・咳止め薬は与えるべきではないとした勧告を行っていますが、改めて12歳未満の子どもへの使用についての有効性を再検討し、今回の決定に至ったようです。
対象となるのは、以下の成分を含むものです。
薬効群 | 成分名 |
---|---|
第一世代の抗ヒスタミン薬 | ・brompheniramine ・クロルフェニラミンマレイン酸塩 ・クレマスチンフマル酸水素塩 ・dexbrompheniramine maleate ・ジフェンヒドラミン塩酸塩 ・ジフェニルピラミン塩酸塩 ・doxylamine succinate ・フェニラミンマレイン酸塩 ・phenyltoloxamine citrate ・プロメタジン塩酸塩 ・pyrilamine maleate ・triprolidine hydrochloride |
鎮咳薬 | ・デキストロメトルファン ・デキストロメトルファン塩酸塩 ・ジフェンヒドラミン塩酸塩 |
去痰薬 | ・グアイフェネシン |
充血緩和薬 | ・エフェドリン塩酸塩/硫酸塩 ・フェニレフリン塩酸塩/硫酸塩 ・プソイドエフェドリン塩酸塩/硫酸塩 |
各紙によれば、Health Canadaには、1995年から2008年までの13年間に12才未満で164例(うち重篤なものが105例)、6歳未満で124例(うち重篤なものが80例)の報告があり、関連性ははっきりしないが5例(2歳未満)の死亡例があったそうです。症状としては、痙攣、心拍数の増加、意識レベルの低下、不整脈、幻覚などで、誤用や過量服用による事例もあるようです、また、こういった症状は6歳未満の子どもは自分で訴えることができません。さらに、有効性についてのエビデンスが限定されるなどとしており、こういったことなどが、今回制限年齢を2歳未満から6歳未満に引き上げの理由となったようです。
隣国の米国では、FDAでの助言を受けて、OTCメーカーが4歳未満は使用しないよう自主的にラベルの変更を開始していますが、カナダの当局の今回の決定を受けて、米国の他、他国の当局も追随する可能性があります。
日本では、2歳未満の用法を有する一般用かぜ薬・小児用(内用)、鎮咳去痰薬(内用)、鼻炎用内服薬について、[用法及び用量に関連する注意]の項に「2歳未満の乳幼児には、医師の診療を受けさせることを優先し、止むを得ない場合にのみ服用させること。」を追記するよう、日本製薬団体連合会を通じて製薬企業に対し使用上の注意の改訂指示が行われています(TOPICS2008.7.5)が、海外のように「服用させないこと」との表現とはしなかったこと、使用上の注意の改訂指示に留まったこともあり、現場ではまだ周知さえ十分行われていないのが現状です。
一方、Health Canadaではどうかというと、WEB上に今回の注意喚起についての周知ビデオ[HTML]を掲載した他、ポスター[PDF:1.41MB]や成分名を記したリーフレット[PDF:232KB]を作成し、OTC風邪薬を購入時に上記成分が含まれていないどうか確認するよう親や保護者らに呼びかけるとともに、購入や使用に当たっては薬剤師などに相談するよう呼びかけています。日本との対応とは大きな違いですね。
Cough and Cold Medicine for Children(Health Canada)
http://www.hc-sc.gc.ca/dhp-mps/medeff/res/cough-toux-eng.php
日本ではOTC風邪薬による有害事象はないとのことで、海外のような対応にまで至らないのかもしれませんが、どうも日本では、OTCメーカー・厚労省ですら「OTCは安全」との認識が強いのではないかと感じてしまいます。
そしてこの認識は、現場の薬剤師などの専門家のOTCへの無関心さも手伝って、国民の間に、「OTCは安全、ネット販売は利便性があるので規制すべきではない」との声を大きくしてしまったのではないいかと思います。
今回の問題も日本で同様の報告例がないかどうか調査するなど、海外に準じた適切な対応が必要です。
関連資料:
To Market Authorization Holders: Health Canada’s Decision on Labelling of Certain Paediatric (0 to under 12 years) Nonprescription Cough and Cold Products in Canada(Health Canada 2008.3.20)
http://www.hc-sc.gc.ca/dhp-mps/prodpharma/activit/sci-consult/
pediat/sapnpccm_gcsmvltr_rop_crd_2008-03-20-eng.php
関連情報:TOPICS
2008.10.08 小児用OTC風邪薬は4歳未満に与えてはいけない(米国)
2008.07.05 2歳未満はOTC風邪薬は使用せず受診を
参考:
Health Canada says children under 6 shouldn’t get cough and cold medication
(Charlottetown,The Guardia 2008.12.18 THE CANADIAN PRESS 配信)
http://www.theguardian.pe.ca/index.cfm?sid=202548&sc=117
Health Canada: Don’t give kids under 6 cold meds
(CTV.Ca 2008.12.18)
http://www.ctv.ca/servlet/ArticleNews/story/CTVNews/
20081218/cough_medicine_081218/20081218?hub=Health
Kids under six shouldn’t get cold medicine: Health Canada
(TheStar.com 2008.12.18 THE CANADIAN PRESS 配信)
http://www.thestar.com/News/Canada/article/555896
12月19日 16:40更新 22:50更新 20日 9:30更新 2月9日リンク追加
2008年12月19日 14:15 投稿
カナダ薬剤師会(http://www.pharmacists.ca/)は早速ニュースリリースを発表し、親や保護者に対して、子どもに風邪薬や咳止めを使うときは薬剤師に相談するよう呼びかけています。
Parents and Caregivers: Talk to your Pharmacist about Cough and Cold Medications in Children[HTML]
また、同時に薬剤師向けの情報も掲載しています。
Cough and Cold Medications - Update on Use in Children[HTML]
Q&As for Pharmacists〜Use of Cough and Cold Medications in Children[PDF]
(上記の有害事象のデータが掲載されています)
Management of Cough and Cold in Children[PDF]
日本とカナダの当局、薬剤師会の対応の違いを痛感させられます。