新年あけましておめでとうございます。
昨年は多くの方に本サイトに訪問頂き、ありがとうございました。今年も訪問される方の期待に沿えるよう、私たちと関連の深い情報を中心にわかりやすく提供したいと思います。
情報等の整理、海外報道の翻訳等には十分注意を払っておりますが、もし誤り等がございましたら、ご指摘頂ければと思います。また、ご意見・ご提言等ございましたら、是非メールまたは投稿のほどよろしくお願いします。
また、地元の方におかれましては、なかなか研究会が開催できず申し訳ありません。今年も世話人知恵を絞って実践に役立つようなテーマでなるべく多くの研究会を開催できればと思っておりますが、小規模の勉強会等もできればとも思っています。是非、ご意見等ございましたらよろしくお願いいたします。
さて本年は、薬剤師やくすりをとりまく状況が大きく変わる一年となりそうです。思いついたもののいくつかを取り上げます。
1.新薬事法の施行
いよいよ、6月からは新薬事法が施行され、新しい医薬品販売制度が実施の運びになります。医薬品のネット販売の是非については今後も議論が続くと思いますが、この間論争の的となった販売時における「対面」による情報提供がきちんとが行われるかどうかがやはり注目となるでしょう。
とりわけ、第一類の販売時に薬剤師による情報提供がどのような方法で行われ、どれだけ徹底されるかが大きな鍵となるでしょう。この対応がうまくいかなければ、「OTC販売時に薬剤師は不要」との声が高まり、医薬品のネット販売の規制緩和につながっていくことでしょう。
個人的には、統一の情報提供書(メーカー主導だとどうしても、販売することに重点がおかれてしまう)を日薬などの職能団体など中心になって早急に(新スイッチ品は販売開始時までに)作成し、業界団体、日薬などが組織を挙げてこれを活用していくことが必要でしょう。
2.副作用情報をどう伝えていくか
1.との関連になりますが、処方せん医薬品についても、患者さんへの情報提供は重要です。しかしこちらもについても、統一したものがないのが現状です。とりわけ重篤な副作用について、どの程度までどのような表現で伝えるかは現場ではバラバラです。
情報の提供の差で薬局の質を競争するとの考え方もあるかもしれませんが、患者さん自身に重篤な副作用の発見をしてもらうには、わかりやすい表現で伝えて患者さんの頭の片隅にとどめてもらうことは重要です。
かつて分業先進地区で、薬剤情報提供書の内容を巡ってトラブルになったことがありますが、医師にとっては服薬行動に影響があると批判があったとしても、私たちの立場で情報をうまく伝えることは必要です。是非そろそろ現場の薬剤師が知恵を出し合って、統一したものを作ってもいいのではないかと思います。これをもとに全ての薬剤師が同じように、患者さんに情報提供を行っていると医師(会)に示せば、大きな反発はないのではないでしょうか。
一方、職能団体は、国内外の副作用情報にアンテナを貼り、収集・整理して情報として発信していく試みも行ってもよいのではないでしょうか?
海外における副作用情報やこれに伴う販売中止などの情報は、国内では数ヶ月以上のタイムラグがあるのが現状です。こういった情報を職能団体が整理し、医師会などに発信すれば有用ではないかと思います。
また1にも関わることですが、OTCについても重要な注意事項の変更については、職能団体としても、一般消費者に対してきちんと注意喚起を行うべきです。虫除けスプレー、小児用風邪薬、酸化マグネシウム含有下剤などは、今からでもおそくないと思います。日薬が行う会員への通知だけでは不十分だと思いますし、今後新たに医薬品販売業に乗り出す業者(店舗販売業)に対しては、こういった情報をどのように伝えていくのか心配に思うからです。
3.薬剤師の将来像が語られる〜薬剤師の職域が広がっていくか
医師不足問題などから、舛添厚労相が立ち上げた「安心と希望の医療確保ビジョン」では、「安心と希望の医療確保」のための3本柱として、
1.医療従事者等の数と役割
2.地域で支える医療の推進
3.医療従事者と患者・家族の協働の推進
が掲げられ、職種間の役割分担と協働に基づくチーム医療を推進することが打ち出されていることは皆さんもご存じかと思います。
日本看護協会や日本学術協会健康・生活科学委員会看護学分科会などからは、看護師による薬剤処方の有用性についての提言や意見などが示されるなど、看護師による病院薬剤師の領域に関わる分野への進出が模索されています。これに対抗したわけではないでしょうが、日病薬も病院薬剤師が関与すべき業務を提示し、その実現に向けての取り組みを開始したことは、TOPICS 2008.12.28 で紹介したとおりです。
一方地域薬局の分野でも、在宅服薬支援など地域医療への参画、メタボ健診における指導など、保健や公衆衛生分野に業務が広がる兆しが出てきました。しかしこちらはどうかというと、条件の整った一部の地域などのみで実施されているのが現状です。
もちろん、薬歴管理など今まで行ってきた業務をまず充実することも重要です。しかし、保険医療財政のパイは限られており、医療の高度化・細分化などを考えると、国全体の医療費を抑制または効率化に結びつく活動を提案し、広く現場で実施していかない限りは、おそらく私たちへの配分は減っていくことは必至ではないかと考えます。
そういったことから今年は、病院・地域薬局共に、地域住民の医療や健康のために薬剤師の職能を生かすには、どのようなことが可能かなどの将来像が語られる一年になるのではないかと思います。
そして職能団体は、さまざまな条件が整って実現化している活動(例えば、尾道市の取り組み TOPICS 2008.09.08)については、「薬剤師の社会貢献」としてもっと広くアピールするとともに、それをあらゆる地域で同じように具現化するにはどのようなことが必要かということを会員に対し提言やサポートを行うべきではないかと考えます。
4.後発医薬品の使用促進
今年は、後発医薬品の使用促進のための予算が大幅に上積みにされており、今年は国レベルでの使用促進のための広報活動が行われることでしょう。また、保険者も医療費適正化のために、組合員に使用促進のための啓発活動を行っていくので、おそらく後発医薬品への関心が去年以上に高まることが考えられます。
薬剤師の努力不足との指摘もありますが、やはり変更不可処方せんの存在、適応症の問題、医療機関へのフィードバッグの問題などが改善すれば、おそらく、変更率が上がると思います。来年の診療報酬の改定時までには改善されるとは思いますが、できるところから国も対応してもらえればと思います。
5.公認スポーツファーマシストの養成が始動
いよいよ、今年の春よりスポーツファーマシストの募集と養成のための講座が開始されます。
「新しい役割」が出てくると、必ずと言っていいほど、他の医療従事者などとの業権争いになりがちですが、スポーツファーマシストこそは薬剤師の知識が最大限生かされるものです。
ドーピングの問題や健康上好ましくない「くすり」の使用問題は、海外ではトップアスリートだけではなく、スポーツジムや低年齢層に広がっています。また、近い将来学校薬剤師にこういった分野での貢献が求められるのではないかと私は確信しています。
「くすり」が単に医療や健康のためではなく、社会とさまざまな関わりがあるということを理解する上でも、是非多くの方がこの「新しい役割」にトライして頂ければと思います。
皆さん、今年一年がんばっていきましょう。
関連情報:TOPICS
2008.12.28 第一類の販売には、販売実践ガイダンスの開発が必要
2008.07.27 政府・与党が医薬品庁設置に動き出す
2008.11.28 酸化マグネシウムのリスク分類を第2類へ引き上げ
2008.07.05 2歳未満はOTC風邪薬は使用せず受診を
2005.08.25 厚労省、ディート(虫よけ剤)に関する安全対策を公表(旧サイト)
2008.09.04 「安心と希望の医療確保ビジョン」と薬剤師
2008.09.22 看護師による薬剤の処方は有用(日本学術会議提言)
2008.12.28 「新しい業務」の展開には、まず現況調査が必要
2008.09.08 薬剤師は、多職種との協働を模索すべきである
2008.11.19 日薬、後発医薬品の使用状況調査(中間報告)を公表
2008.10.14 公認スポーツファーマシスト、来年3月より募集開始
1月1日 21:30更新
2009年01月01日 16:49 投稿
薬剤師認定制度認証機構(http://www.cpc-j.org/)の内山充代表理事は、「今年は目に見えるような実績作りによって、『薬剤師がいてよかった』あるいは『やはり薬剤師がいなければならない・・』と広くいわれるような、世の中からの認識の変化を獲得しよう」などとした呼びかけを行っています。
新年を迎えて−−自信をもって実績作りを
(薬剤師認定制度認証機構 コラム 2009.1.1)
http://www.cpc-j.org/contents/c12/20090101.pdf
薬剤師に対する認識変革を−08年回顧と09年の展望(4)
(医療介護CBニュース 2009.1.4 一定期間を過ぎるとログインが必要です)
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/19852.html
さらに内山氏は、医師が少ないから薬剤師が代行補助して業務を拡大するという見方ではなく、保健指導、学校薬剤師、在宅医療、プライマリーケアやセルフメディケーションなどに、積極的に自ら分野を広げることに期待を寄せると共に、これらを行うための「自信づくり」として、薬学の基礎知識を深めるための生涯研修が重要だとしています。